こんにちは、岩崎将史です。
2022年の1月のとある日、長くマスタリング用として使用してきたWindows PCが起動しなくなってしまいました。
PCの買い替えと合わせてオーディオインターフェースも買い換えることになりました。
そこで新しいオーディオ・インターフェースとして、RMEの『ADI-2 Pro FS R Black Edition』を導入しました。
ブログではこの事については一度も取り上げていませんでした。
導入から早くも10ヶ月ほど経過してしまいましたが、レビューしてみます。
RME「ADI-2 Pro FS R Black Edition」を導入することになったキッカケ
少し説明が長くなるのですが、僕のスタジオ『フルハウス』では、マスタリング業務をWindows PCとマスタリング用DAWソフトウェア「Sequoia」で行っていました。
Windows PCが起動しなくなったためPCを新規で買い換えることに。
現在手持ちの「Sequoia」をインストールできない
ところが調べてみると…。
最新のWindows 11には、僕が所有している「Sequoia」のバージョンはインストールできない可能性を強く感じました。
日本語表記のサイトが1つもなかったので間違っていたかもですが、英語サイトを読む限り最新の「Sequoia 16」にしなければならなさそう。
ざっと見る限り特にアップデートのプランもなさそうで、新規購入しなければならない様でした。
そうなると次の2点が問題となります。
- アップデート費用が約30万円以上と高額になる。
- 国内代理店が契約終了しており本国(ドイツ)サイトに直接オーダー。
費用が30万円ほどというのも痛いですが、国内代理店が無いのが最大の問題。
決済やトラブル時の問題など、海外と直接というのはリスクが大きいです。
30万円を送金した後で、万が一使えないという状況が発生するとリカバリーが大変。
そこで早々に「Sequoia」の使用を諦めました。
安価かつDDP作成可能な「Studio One」を導入
そこで以前から気になっていた「Studio One」にコレを機会に変更する決断をしました。
「Studio One」はWindowsだけでなく、Mac OS環境でも使えます。
幸いフルハウスでMac Book Pro がコンサート現場の録音用に複数台余らせていました。
その内の1台をマスタリング用にしてオーディオインターフェースのみを買いかえる事にしました。
Lynx Studio Technology「AES16」からの乗り換え
オーディオインターフェースはLynx Studio Technologyの「AES16」を使っていました。
このインターフェースはPCIスロット様なのでMacBookなどでは使えません。
MacBookでの使用を想定して、
- Thunderbolt 3 以上
- USB-C (3.0以上)
などに対応したインタフェースを探すことにしました。
マスタリング用オーディオインターフェースとして最高なREM「ADI-2 Pro FS R Black Edition」
2022年の1月にRME「ADI-2 Pro FS R Black Edition」を購入し、はや10ヶ月が経過。
結論から言うと、RME「ADI-2 Pro FS R Black Edition」をマスタリング用のオーディオインターフェースとして購入したのは大正解でした。
マスタリング用としてのオーディオインターフェースは、もちろん他にもいくつもの選択肢があるかと思います。
全てを比較検討してから導入してはいませんが、僕自身はRME「ADI-2 Pro FS R Black Edition」
を導入して良かったので、その理由を詳しく解説します。
『RME ADI-2 Pro Black Edition』を選んだ4つの主な理由
RME「ADI-2 Pro FS R Black Edition」を選んだ最大の理由は次の4点です。
- 安定性
- 入出力の規格
- DSD対応
- モニタリングツールの充実
それぞれについて詳しくみていきましょう。
動作の安定性
RMEのオーディオインターフェースは安定性には昔から定評があります。
僕自身がRME製品を購入して使用するのは20年振り。
OSアップデートへの対応も早めということで、RME製品を使っている仲間からは何回か勧められていました。
入出力の規格
僕のスタジオ「フルハウス」のマスタリング・システムにに必須なのはAES/EBUの入出力です。
AES/EBUはプロ用オーディオ機器で一般的に運用されているデジタル伝送規格です。
業務マスタリング用のA/Dコンバーターなどはアナログ信号をデジタル信号に変換しAES/EBUで吐き出します。
AES/EBU信号をPCに適切に取り込んでくれるオーディオ・インターフェースということで、今回のRME「ADI-2 Pro FS R Black Edition」をチョイスしました。
30万円前後くらいまでの価格帯だと、AES/EBUを備えているオーディオインターフェースって何故か少ないです。
代わりにSPDI/Fというのが多いです。
DSD対応
更にDSD対応のA/D入力とD/A出力を持っているので色々遊べそう、というのもプラスの要素でした。
DSDについては今すぐに使う仕事があるわけではないですし、今後一生無い気もしますが…。
個人的にはPCMとのサウンドの差は圧倒的なので普及して欲しいですけどね。
モニタリングツールの充実
RME「ADI-2 Pro FS R Black Edition」にして一番良かったと思えた点が「モニタリングツールの充実」です。
実は購入するまでここまで充実しているとは知りませんでした。
次のモニタニングツール(監視ツール)が専用ドライバーソフトウェア「Digi Check」に入っています。
- スペクトラム・アナライザー
- レベルメーター
- ラウドネスレベルメーター
- オシロスコープ
これまで仕様していたマスタリング・ツール「Sequoia」はモニタリングツールがとても充実していました。
「Studio One」に変更し心配していましたが全て解決。
「Digi Check」表示用に別のモニターを1台用意。
とても見やすくマスタリングだけでなく、ミキシング時にも効果を発揮しています。
10ヶ月仕様時点でのマトメ
RME「ADI-2 Pro FS R Black Edition」をほぼ毎日、使い倒して10ヶ月目。
「導入してよかった」というのが今の印象です。
トラブルもなくサウンドも最強
特にトラブルもなく、不満はありません。
以前のシステムである「Windows 7 + SEQUOIA + AES16」でトラックダウンしたソースを、今回の新しいシステム「MacOS + Studio ONE + ADI-2 Pro」でトラックダウンし直して聴き比べてみました。
新システムの方が明らかに定位感、奥行き、音の明瞭感が増しています。
AD・DAはハイエンド機には劣るが…
A/D入力の音質が Lavry Engineering「AD122-96 MK3」と同等なら最高でしたが、流石にそれを求めるのは販売価格からいって酷でしょう。
「AD122mkIII」は150万円ほどするA/D専用コンバーターですからね。
まあそれ以前にマスタリング用途におけるアナログ入力利用には致命的な問題がありました。
- 入力調整用のトリムが無い
- Lavry Engineering「AD122-96 MK3」のようなシーリング設定ができない
マスタリング用のADコンバーターは厳密にレベル調整をするためにLR各チャンネルの入力トリムを調整できます。
その機能が本機には有りませんでした。
アナログ入力は業務マスタリングには全く向かない
またマスタリング時にはデジタルクリップのシーリングを-0.1dBや-0.5dBなどに設定します。
これもできずオーバーレベル時にはきっちりと0dBまで触れてしまいます。
CDや配信様にシーリング設定をするにはレーベルをデジタルで下げるか、リミッターを入れなければなりません。
そうするとサウンドがAD入力時と変化してしまいます。
これらはスムーズなマスタリング作業フローにおいて著しくネガティブです。
そのため本格的なマスタリング用途に本機のアナログ入力を使用したいと考えている人にはオススメできません。
こんな人にオススメ
RME「ADI-2 Pro FS R Black Edition」はマスタリング用だけでなく、次のような人に合っていると思います。
- 入力は2ch入力あれば十分。
- マイクプリは別で良いものを持っている。
- DSDにも興味がある。
これらに当てはまる人は導入して損はしないと思います。
今回の開封から使用しての感想などYouTubeにもアップしています。
ということで、今回はこの辺で。
ではまた。