こんにちは、岩崎将史です。
先日、20年近く愛用してきたメインのスピーカーが壊れてしまいました。
あまりにも痛い故障でショックだったのですが、どのように対応したのか?をブログに記しておきます。
GENELEC 1033A とは?
今回壊れたスピーカーはGENELEC社の『1033A』というスピーカーです。
レコーディングスタジオ定番のラージモニタースピーカーで、1990年代から2000年代に建設されたスタジオではかなりの確率でお目にかかる事ができました。
僕も色々なスタジオでこの音を聴いていたので、当時、いつかは導入したいと思っていたスピーカーでした。
特に僕にとって参考になったのは、JVCビクターのマスタリングセンターで聴いいた『1033A』。
1990年代から2000年台初頭まで、JVCビクターのマスタリングセンターは横浜のビクター工場内にあり、いくつかのルームで『1033A』を使用していました。
僕がミックスした作品などを、何度も同マスタリングセンターに持ち込んでマスタリングをしてもらっていたので、最終系のイメージが体感的に掴めているというのが大きかったです。
中古で購入し、20年近くほぼ毎日使用。
丁度その様な中で、中古の質の良いGENELEC『1033』があるという話を頂いたので、購入させて頂きました。
導入時期は2004~5年頃だったように記憶しています。
製造年は1997年。
初期オーナーから含めると25年間使ってきましたので、故障しても仕方がない年数。
先日のある日、突如として右チャンネルから「ボッボッボッ」というノイズが発生しました。
メーカー修理はできるのか?
早速、修理できる可能性を探るべく販売業者に連絡。
代理店が昔はオタリテックでしたが、ジェネレックジャパンへ変更になったとのことでした。
オタリテックはスタジオ機材などを専門に扱う代理店で、修理なども純正品がなくても代替えパーツを持ってスタジオまで出向していただき、対応が良かったイメージがあります。
販売業者担当者も同じ印象で『ジェネレックジャパン』に移管してからは、なかなかに無理は取りにくくなったそうです。
これは『ジェネレックジャパン』の対応が悪いという話ではなく、今の時代のビジネスにはきちんとした線引をしないと存続が難しくなります。
それは仕方の無いことです。
とにかく一旦代理店へ症状を伝えて返事を待つことにしました。
さあどうでしょうか?
やはり修理不可という解答でした。
販売が完了してから10数年経過しています。
これは仕方がない事です。
信頼できる技術者での修理を試みる
それならばと知り合いの技術者で修理できないか?
連絡を取ってみました。
症状から推察するにコンデンサーの経年による不良のように感じるので、修理できる可能性はあるかと
数値化は難しい可と思いますが、どれくらいの確率かイメージしたいモ〜
う〜ん、50%!!
をを〜それならばトライする価値は十分にあるかモ〜
修理の前にやってみて欲しいことがあります。
アンプ基盤がスロット式になっていて差し直したりするとトラブルが解消された例もあるので、
をを〜やって見るモ〜
基盤のクリーニングで一瞬改善
早速試してみました。
久しぶりにアンプ部の基盤を外すとそれはそれは恐ろしい量のホコリが。
もしかしたら原因はこれかもしれない、ということで清掃。
すると…
症状がでない。
良かった…
その日は安心して眠ることができました。
ところが翌日、
レコーディング中に今度は「キュイ〜〜〜ン」というこれまでとは異なるノイズが同じ右チャンネルから発生しだしました。
慌てて電源を切り、しばらく放置。
改めて電源を入れてみると、右チャンネルのツィーターが鳴らない。
再び技術者に電話。
アンプの不良かスピーカーユニット不良か調べたいので、テスターで計測してみましょう
ツィーターが飛んでいれば、導通は無いはず
ドライバーユニットを外してのチェック
検証すべく、ユニットを外してみます。
テスターで計測したところ5Ωを検出。
ツィーター自体は無事。
所がここで新たな2つの問題が発生。
ツィーターを外す際にスコーカーの接続線を外さなければならず、再び完全に戻すのはかなり難易度の高い不思議な設計仕様になっていました。
さらに、改めて見てみるとスコーカーのスピーカーエッジが経年劣化でボロボロ。
張替えが必要です。
どちらも一つづつじっくりと取り組めば対抗できるでしょうが、中々の工数が必要そうです。
今のフルハウスには数日張り付いて修理対応に当たるようなスケジュールの余裕はありません。
固定費だけで毎月200万円近い経費が必要なのがスタジオ経営。
人員やスタジオが修理に時間を捕られ営業できない期間は、丸っと損失になってしまいます。
問題が1つであれば、その対処で解決するので良いのですが、複数となると…。
接続線とスピーカーエッジの2つの問題を対応をしクリアしたとして、最後にラスボスであるアンプ部の修理が待っています。
そこまで時間とお金を掛けたのに、解決する可能性は100%ではないのです。
修理に必要な工数とそれに伴うリソース減による機会損失を考えて、経営者としてシビアにその場で「廃棄」を決断しました。
入れ替え工事
GENELEC『1033A』は廃棄するとして、変わりになるスピーカーをどうするのか?
同性能のスピーカーを新規に購入しようとすると、約300万円ほどの費用が必要です。
昨今の音楽やスタジオ業界の実情を考えるとスピーカーへの300万円の新規投資は現実的ではありません。
ラージスピーカーが無いと最終的なマスタリングのクオリティは担保できないのですが、幸いにもフルハウスのマスタリングは別室でWilson Audioのスピーカーを使っています。
最終的な仕上がりはこのスピーカーが僕的には最強。
その為に調整室は録音や編集、ミックスの基本処理がきっちりと行えるスピーカーであれば十分という判断をしました。
もちろん将来的には、より良いスピーカーを導入した方が楽しいし、初めて訪れるお客様への説得力も増します。
それはまた追々ということで、今は現実のスピードを質を落とさず止めない道を選択しました。
新たに設置予定のニアフィールドモニターは、カスタムハンドメイドで制作されたスピーカー。
一時期オーディオに凝っていた友人が、置く場所が無くてというので引き取っていたものです。
フルハウスではあまり登場機会がなく、スタジオの隅っこで長い期間眠っていました。
このスピーカーを設置するためには現在居座っているGENELEC『1033A』をどけなければなりません。
厄介な事にGENELEC『1033A』はスタジオ内装の造作物と一体になっています。
そのために解体工事として作業する必要があります。
ということで工事。
解体の様子はVLOGにしてますので、良かった見てみてください。
僕とスタッフの山田だけでは足りないので、義弟である若松といつもカメラマンをお願いしている岩瀬さんが手伝いに来てくれました。
義弟の仕事は現在は舞台音響がメイン。
それ以前は舞台大道具をやっていたので造作物系は得意。
強力な戦力です。
そしてGENELEC『1033A』は机の足になりました。
こちらが岩瀬さんからの報告映像がこちらです。
音響調整
解体が無事に終わったので、次は天井造作物の構築です。
フルハウスの調整室は狭いのでスピーカーの上、天井までの空間を有効に活用しサウンドを調整する必要があります。
特に低域を回り込みを効率的に吸収する方向に。
そのために天井から吊り下げる方式で櫓を作成しました。
これであれば、後日スピーカーの入れ替えが発生しても、内装建築的な部分は触らずに対応できます。
櫓には吸音材を載せて調整してきます。
複数の材質を組み合わせて櫓の上に設置。
コーナーでの音処理もしていきます。
一通り基本作業が終わったところで、スピーカーを設置。
実際に音を聴きながらさらなる調整を内装で行っていきます。
より明瞭感を出すために吸音拡散ボードを作成し斜めに設置。
このあたりの処理をおえたところで、 ひとまずミックス仕事ができる状態にまで整えることができました。
見た目は悪いですが、僕が仕事をする上では十分なサウンドが得られるようになりました。
今後の野望。Amphion Two 18が欲しい。
見た目については、今後DIYにて少しづつ整えていく予定です。
本当はバーンと予算組んで材料を仕入れ、ガツンと工期を取って工事しちゃう方が、見た目は綺麗に造作できます。
ただし…
お金を掛けてしまうとどうしてもスタジオ代に繁栄させなければ経営的には整いません。
フルハウスはメジャー作品が作られるプロセスと全く同じクォリティを、できるだけリーズナブルにこの地域に提供したいという手指で運営してます。
そのために投下費用は少しでも押さえつつ、でも音のクォリティはキープするという最大効率を狙う必要があります。
そうすると内装関連は自ずとDIY一択に。
スピーカーは取り急ぎ現状のニアフィールドですが、予算的に購入ができれば今ならamphionのtwo 18が良いなぁと。
ムジークRL904も大学のスタジオで使っており音は凄く良いのです。
がお値段がね…。
購入できるように頑張らないと。
ということで、楽曲作りや録音、映像、配信などなど。
皆さんお仕事お待ちしております。
お仕事のご相談・ご依頼は当サイトのお問い合わせか、僕の会社『株式会社フルハウス』のお問い合わせフォームからご連絡ください。