岩崎将史です。
悲しい出来事が起こってしまいました。
スタジオ「フルハウス」のメインである「D-command」がレコーディング中に突然に電源が落ちて永眠されました。
これがないとレコーディングの進行と効率が著しく悪くなります。
すぐさまメンテ会社にも連絡を取るも、どうも重症のようで修理できるかは未定。
と言うか可能性は低く、修理が出来たにしてもかなり高額になる可能性大。
残念ですが、10分で修理は諦めました。
電源が入らなくなったのはサーフェース側ですので、X-monitorと呼ばれるモニターセクション部分は健在です。
が、リレー方式でコントロールをD-commandで行いますので、モニターコントールが一切できなくなってしまいました。
フェーダーやノブなどのオペレーションはマウスで対応できるとしてもモニターコントローラーがないと、レコーディングスタジオとしては不味いので、直ぐに対応を迫られます。
マジで悲しい…。
そして業務進行、大混乱…。
モニターコントローラーは必要ない??
フルハウスが僕が仕事をするだけのスタジオなら、モニターコントローラーは導入しない選択肢もあります。
デジタルアンプの性能がドンドン良くなっているので、直接AESでオーディオ用のデジタルアンプに突っ込んで再生させます。
その方が余分な回路を通らないので音が良いです。
実際に2001年〜2005年頃はモニターコントローラーを使っていませんでした。
商用スタジオとしてモニターコントローラーが必要
スタジオ設立当初は作業をするのは僕だけでしたので、モニターコントローラーはなくても問題はありませんでした。
やがて外部エンジニアから「スタジオを使わせて欲しい」というオーダーが増えてくるとモニターコントローラーが必要になりました。
他の商用スタジオと同じ様なシステムで「手早く複数のスピーカーをボタン一つで切り替えたい」というオーダーが出てきます。
Avidのモニターシステム「X-monitor」
そこで、トータルの運用を考えてAvidのD-commandを当時は選択しました。
X-MON (X-Monitor)と呼ばれてモニターコントロールシステムはとても良くできてい、今でもベストチョイスだったと考えています。
次のモニターコントローラーを何にするか?
とはいえ、運用面を総合的に考えるとモニターコントローラーは必須。
しかも、年末と年始もビッシリと仕事が入っていますので、早急に選定して決断する必要があります。
僕はD-commandの修理を諦め「1時間以内に決断して発注する」と決めました。
修理断念までに15分ほど時間を使ったので、トータル1時間15分。
年末年始を挟みますので、1日の発注のズレが大きく影響するリスクも避けたいと考えました。
モニターコントローラーを選定するにあたって条件は次の4つが重要です。
- 音質と値段
- アナログであること
- スピーカーセレクターは3系統
- TBシステムを内蔵していること
- 汎用性の高いもの
音質と値段
音質と値段は基本的には比例します。
安いに越したことはないですが、実用レベルに達していないと「少し不便でも無い方が良いよね」となってしまいます。
ですので「サウンドがある一定基準以上であること」のなかで高価過ぎない物を選択する必要があります。
次の商品は数万円代と安価ですが音質面で選択肢から外しました。
PRESONUS ( プレソナス ) / Central Station + CSR-1 MACKIE ( マッキー ) / Big Knob Studio+ SPL ( エスピーエル ) / SMC安価な商品はボリュームアッテネートなどのパーツ精度を考えても無理があります。
- ノブの位置に寄って左右でコンマ1~2dB差が出ることも
- SNが良くない
- 音の立ち上がりや鈍くなる
一般の音楽制作ユーザーが使用するには十分な物かも知れませんが、業務用途としてはかなり厳しいです。
安価に済ませたいのですが、流石に数十万円代は出さないとまともな物は手に入りません。
アナログであること
次に回路がアナログである事が条件です。
GRACE DESIGNのモニターコントローラー m905は人気ですが、僕の選択肢からは最初から外れています。
GRACE DESIGN ( グレースデザイン ) / m905理由としては、DAコンバーターが内蔵タイプだから。
PCMデジタルのため音質ロスが少ないというのが売りですが、これがとてもネックなのです。
なぜPCMデジタル方式のモニターコントローラーはダメなのでしょうか?
ネックその1|トレンドの変化に対応できない
デジタルというのは数年おきにトレンドが変わっていきます。
1990年代は48Kzのサンプルレートが標準でした。
2000年代に96Khzになり、2010年以降は192Khzを最も多用しています。
そして近い将来、384KhzやDSDの頻度が増えてくることは間違いないです。
アナログであれば、モニターコントローラーはデジタル規格が変化しても使い続けることができます。
壊れさえしなければ一生使えます。
ネックその2|DAコンバーターのクォリティとキャラが固定
DAコンバーター内蔵型だと、再生音が全てそのコンバーターの音になってしまいます。
マスタリング用に用意した高級DAコンバーターも意味をなさなくなりますし、オーディオIOなどを入れ替えても音の出口は一緒になってしまいます。
的確に機器の選定に影響を与えます。
ネックその4|複数のサンプルレートを同時に使えない
マスタリングでは複数のサンプルレートを使い分けます。
そしてそれを同じDAコンバーターで聴き比べ「元のミックスからどれくらい変化しているか」を確認する必要があります。
多くのデジタル式モニターコントローラーは「SRC内蔵で自動で複数のSRソースを聴き比べ可能」と謳っています。
が、多くのオーディオエンジニア、DAWユーザーならサンプリングレートコンバートがサウンドにもたらす悪影響は嫌というほど体験していると思います。
マスタリングレベルでは「サウンド変化がない」と言えるSRCに出会ったことは、未だにありません。
それぞれのソースに合わせてデジタル・クロックが追随してくることが大事です。
ですので、マスタリングのリターンには僕はオーディオ用のDAコンバーターを使用しています。
一般のオーディオリスナーと同じ環境でリファレンスしてこそ、最終パッケージとして意味のある作業です。
折角、良いDAコンバーターを使ってもモニターコントローラーでそのコンバーターの音になってしまっては「豚の耳に念仏」「猫に小判」です。
スピーカーセレクターが3系統以上あること
「次の要件としてはスピーカーセレクターが3系統以上あること」です。
ボク個人としては2系統もあれば十分です。
が、スタジオは様々な人が出入りします。
それぞれ好みのスピーカーサイズが変わりますので、無駄な時間を掛けることなく出力先のスピーカーを選択できることは重要です。
業務用スタジオでは、
- ラージモニター
- ニアフィールドモニター
- スモールモニター
の3つを聴き比べながら作業を進めることが多いです。
それぞれのスピーカーで聴きたいポイントが変わってきます。
Talk Back システムを内蔵していること
業務用スタジオで最後に大切なのがTalk Backと呼ばれる通話機能です。
プロデューサーやエンジニアがスムーズにミュージシャンたちと会話をする機能です。
トークバックスイッチを押している間だけ会話ができるようになり、スピーカーの再生をなどをその時だけ下げるディマー機能などが求められます。
また、スタジオサイドにどのソースを流すか。
録音回線とは別に会話用のマイク回線を常設できるかなどのリッスンバック機能も重要です。
2つの選択肢
これらの条件を当てはめた時点で選択肢は限りなく絞られまました。
DangerousのST-2か、カスタムメイドのモニターコントローラーです。
納期の都合でカスタムメイドの選択肢は無し
実はどこかのタイミングで、僕が理想とするモニターコントローラー作成してもらおうと、とあるテックと話を進めていました。
本当はそれをオーダー出来ると良かったのですが、おそらく設計してパーツの手配してなどから始まるので早くても数ヶ月は掛かります。
今回はあまりに突発的過ぎて、直ぐな対応は無理。
スタジオでの作業スケジュールはぎっしり詰まっています。
カスタムメイドは諦めることにしました。
Dangerous ST-2に決定
機能性能的に条件を満たした手頃な値段となると、Dangerous ST-2した選択肢はありませんでした。
USAからの輸送になるので、納期が最大1ヶ月。
もしかしたら年内納品可能になるかもですが、年末年始を挟むと1月中頃にとのこと。
まあ致し方ないです。
僕が出来ることは、
とにかく早く来るように祈るも〜
です。
あとは、その間の乗り込みエンジニアさんに事情説明して了解頂くこと。
そしてDangerous ST-2が到着するまでの間の代替え環境を構築しなければ。
この年末の糞忙しい時に、、トホホです。