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【名フィル】オーケストラ・コンサートのレコーディング【愛知県芸術劇場】

ライブレコーディングの仕事
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こんにちは、岩崎将史です。

今週は愛知県芸術劇場でオーケストラ・コンサートのレコーディングでした。

名古屋フィルハーモニー交響楽団の定期演奏会のレコーディング

僕は10年数年、名古屋フィルハーモニー交響楽団、通称名フィルのコンサートでのレコーディングを時々お手伝いさせてもらってます。

きっかけはクラシックレコーディング専門の業界大先輩の録音家。
残念ながら既に故人となられていますが、東京フィルハーモニー交響楽団の録音をレギューラーで務めていて、ベルリンフィルハーモニーなど海外オーケストラのレコーディングなどもされていた方です。

彼との仕事では実に学ぶことが多く、僕にとってはオーケストラレコーディングのメンター的存在でした。

彼のレコーディングカンパニーの仕事を、今でも定期的にお手伝いさせて頂いてます。
今回はどうしても都合がつかず久々にオール・フルハウスチームでのレコーディングとなりました。

愛知県芸術劇場コンサートホール

愛知県芸術文化センター -ウィキペディアより-

愛知県芸術劇場、通称「芸文」は多目的大ホールやリハーサル室などがある複合的な芸術施設で、愛知芸術文化センターのビル内にあります。
愛知芸術文化センターは、最近では愛知トリエンナーレの会場としてもニュースになりました。

ここのコンサートホールはパイプオルガンも設置されている伝統的なクラシック音楽のコンサートホールです。

改修工事が行われさらに使いホールになった

僕が大学生の途中で今の建物にリニューアルされて素晴らしいビルとホールになりました。
以前は今のような階層ある立派な建物ではなく、大きな小屋という印象が残っています。
大学の演奏会で訪れた記憶が残っていますが、古すぎて曖昧です…。

1992年に今のビルにリニューアルされ、何回かの回収工事を経てどんどん使いやすくなっています。

4つのメインマイク回線

コンサートホールのメインマイク回線は4つあります。
2回線のホールが多い中、これはとても助かります。

改修工事でMilleniaのマイクプリアンプが設置

昨年、改修工事が入りさらに使いやすくなりました。
特筆するポイントは、音響室にMilleniaのマイクプリが入ったことです。

HV-3Rという、僕が普段使っているHV-3Dを同じ回路のリモート版です。
Milleniaの魅力については、【マイクプリアンプ】 Millennia HV-3Dの魅力【新規追加】で書いています。

マイクプリがホールの音響室に導入されたことは、コンサートのレコーディングに大きなメリットがあります。

オーケストラコンサートでの録音用メインマイクは「釣りマイク」と言って天井から吊るされます。この音声回線は一度、ホールの音響室を通ってからステージ袖にやってきます。その距離は数百メートル〜キロメートルになる場合もあり、音響室でマイクレベル→ラインレベルにすることによって対ノイズレベルが有利になります。

デジタル回線でノイズが低下

音響室で持ち上げられたマイク音声はYAMAHAのRIOを使ったDANTEシステムでステージ袖に立ち上がります

これは対ノイズ比率で有利になりますが、レコーディングだけの観点でいうと少し残念な部分も。

僕は普段96KHz以上のサンプリングレートで録音しますが、メインマイク回線だけはDANTEシステムで48KのAD/DAされた音をさらにADして録音するという事になってしまいます。

ホール運用上はDANTEの方が良いのはやむなしです。
ルーティングをコントロールするのに総合的なシステム環境が充実していると思いますので。

レコーディングだけでいうならMADIが良かったかもです。
Millennnia HV-3RにはMADIオプションがあるので、MADIで袖まで伝送できれば96K24Bitで受け取ることができます
MADIならそのままMADI I/Oに接続できますので、再度DA/ADをする必要もありません

公演に合わせて音響室からの送りだけ切り替え、もうしくは並送できるようになったら最高ですね。

ただし総じてメリットの方が多い改修が行われました。

この日のレコーディングシステム

僕がいつもオーケストラのレコーディングするスタンダードなシステムで対応しました。
常に少しづつ新たなトライや変更は加えてはいますが、軽く解説します。

オーケストラ録音で使いマイクたち

オーケストラコンサートのレコーディングでは、メインマイクとアンビエンスマイクに加え、いくつかのスポットマイクを仕込みます。

まずはメインマイクから。

メインマイクは双指向性リボンと無指向性コンデンサーの組み合わせる

愛知県芸術劇場の場合、メインマイクは4つの回線(2つのステレオ回線)があります。
そのためリボンマイクとコンデンサーマイクの組合わせを選択しました。
OMNIとFigurer 8で、響と明瞭さの両方を収録します。

ステレオ1回線のみというホールが多いなか、これができるのはとても大きいです。

メインマイクの王道。B&K 4006
フルハウス所有のB&K4006
B&K4006と元箱

OMNI(無指向性)コンデンサーマイク。
このマイクの魅力については下の過去記事で書いています。

もうひとつのメインマイク。ROYER R-121
ROYER R-121
舞台の上で開けてROYER R-121

リボンマイクは双指向性(Figure 8)のR-121にしました。
オーケストラ録音のメインマイクとしてはDPAやSHOPSに比べてメジャーではありません
が、北米の公演ではちょいちょい見かけます。
良い感じに録れます。

2チャンネルしかメインマイク回線がない会場では、DPAかSHOPSを選択しますが、4チャンネル以上の時は、コンデンサーマイクとの相性がすごく良いのでチョイスしています。

いくつかのスポットマイクで補強

木管楽器用の補助マイク
いくつかのSpot Microphoneを用意

メインマイクだけでもとても良い感じに収録できますが、いくつかのスポットマイクを立てました。
DPAやSHOPSのCardioid Microphoneをいつも使っています。

何にどう立てるかは曲もや編成によって変わってきますが、

  • 協奏曲でフォーカスが当たるべきソロ楽器
  • オーケストラの中で埋もれやすい楽器や芯の必要な楽器

このあたりを中心に組み立てていきます。

バックアップレコーダーはマイク・スプリッターを使ってアナログ段で完全分岐

いつも通りにバックアップシステムも用意しました。
マイクスプリッターを用意してアナログ段で2つに分岐
完全に2つのレコーディングシステムでパラレルでレコーディングしました。

もし1つのシステムに何か不慮の事態が途中で起こっても、もう1台が動いいていれば安心です。

レコーダーは2つのDAWを用意。
メインのProToolsとバックアップのLOGIC Pro Xを、それぞれMacBookで動かしました。

完全にタイムテーブル通りに、順調に進行

完全に予定どうりに進行しました。
コンサートの録音は、1.5日程度の仕事になります。

前日に本番と全く同じシステムを組んで機器をチェック

前日に本番と同じシステムを組みます。
実際に2時間ほど無音でレコーディングしてテスト。
問題がないかを確認します。

本番当日に不具合が判明では仕事になりませんので…。

早朝に車両へ積み込み

本番日は朝9からホールに入れるということで、1時間30分前の7時半にスタジオに全員集合。
積み込み開始。

ホール施設開門の30分前に到着して開くのを待ちます。
少し早く来すぎた感もありましたが、9時前の栄は渋滞しますので。

リハーサル前に仕込み

レコーディング機器を搬入していきます。
オーケストラは楽器が多くトラックが付きますので、僕らは脇から手運び。

なお僕は撮影者のため写っておりませんが、ちゃんと運んでます。
運ばせてる方が多いけど…(笑)

回線もつなぎ混んでいきます。
今回は12回線のため、バックアップを含めて24回線をパッチしていきます。

リハーサルと本番をレコーディング

2台のPCでオーケストラコンサートのレコーディング
2台のDAWでリハーサルと本番をレコーディング

2台のDAWシステムでリハーサルと本番をレコーディングしました。
リハーサルの最初の5分でレコーディングレベルを決めるのが、最も重要な仕事かも知れません。

メインマイクはホールのリモートプリアンプで調性するので、dB単位でアップダウンのオーダーを出していきます。
各マイクのゲインレベルが確定したら、あとはDAWが止まらないように念を送りながら(笑)見つめます。

ゲストマイクの上げ下げ

途中、ソロバイオリンのゲストプレイヤーが参加する楽曲がありました。
そのためソロバイオリン用のSpotマイクは曲の前に舞台に出して、終わったら履けます。
クラシックのコンサートなのでこの時だけはスーツに着替えます。(着替えさせます)

終演後は撤収作業

終演後は撤収作業と搬出です。
本番中は1名でも対応できますが、この時だけは2名以上が必要。

昼間公演でしたのでまだ夕方ですが、既に外は薄暗く、しかも雨。

機器を車両に積み込んだらスタジオへ戻ります。

無事にスタジオに到着して積み下ろしました。
今日もお疲れ様でした。

オーケストラのサウンドは最高。レコーディングも楽しい。

と、こんな感じでオーケストラコンサートのレコーディングは行われております。
良いオーケストラ、良いホール、良いコンサートの魅力を少しでも良い形で記録できるように、お役に立てるように日々準備をしております。

では、また。

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