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人手不足?金が無いのでは?【とある件で試算してみた】

ビジネスの学び
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こんにちは、岩崎将史です。

先ほど知り合いが、下の記事をシェアしていました。

2030年頃に強烈な人手不足になるという話です。

最近は「人いなくて困っている?誰かいない?」という問い合わせががよく回ってきます。

人手不足は既に深刻みたいな感じですが、条件を聞くと、

人手不足じゃなくてお金不足では?

という案件が多いです。

もしうちがその件に協力したらどうなるのか?
面白そうなのでシミュレートしてみます

とある出向依頼の話

ビジネスデスク

いくつかありますが何の件かはボヤかします
現場担当者はみなさん必死で、その人たちを悪く言いたいわけではないので。

純粋にどういう数字になるか興味が湧いたのでシミュレートしてみたいです。

フルタイムで音響技術者を出向

ミキサー

フルタイム勤務の音響技術者を出向させて欲しいとのこと。
今の人員の一部が技術不足でクレームになっているそうです。

値段は固定で、

1日 1.5万円 x 23日勤務 の売上 (月額34.5万円)

との事。

ちょっと僕が他の企業案件で話す人月水準と大きく離れているので、耳を疑いましたが、

  • この条件で音響会社内で処理してほしい。
  • どの会社も同じ条件でやってもらっている。

との事でした。

直接非正規の募集をかければ良いと思うのですが、できない組織とのこと。
必ず民間の音響会社を挟む必要があって、

  • 現場経験3年以上

との事です。

担当者も厳しいのは分かってはいますが、決まっていることなので変更はできないと。

ただし、幸いにも残業や休日出勤は一切ないとのことです。
この条件でシミューレートしてみましょう。

売上から様々な経費を引いてみる

1日1.5万円で1ヶ月23日とのことですので、月の売上は34.5万円になります。

ここからまずは管理費10%を引きます。
本当は20%と言いたい所ですが…

10%の管理費でやらなければいけないこと

毎月3万4,500円の管理費で何をしなければいけないのか?

社内では給与計算振込作業と手数料定期の手配など事務員人件費の一部に。
外注費として労務士税理士などへの報酬が発生しそれに付随する通信費、消耗品費なども発生します。

残った金額が会社の営業利益になりますが果たしてどれくらい残るのか。

後述しますが体調不良などで現場に穴が空いた時の補充人員の処理も考えると、大変な割に利益がない状態です。

人件費枠から交通費を引く

事務経理作業

残りを全て人件費枠にすると仮定します。

社員の自宅と会社と出向先を移動できる定期代が必要です。
計算したところ、1ヶ月3.5万円でした。

名古屋は地下鉄も東京に比べて高いですが、それ以上に私鉄が高いです…。

この時点で人件費枠は、

【人件費枠 31.05万円】 – 【定期代 3.5万円】 = 【残り 27.55万円

となります。

人件費枠から厚生年金(会社負担分)を引く

厚生年金会社負担分というのがあります。
本人負担と同額になります。

売り上げは出向だけですので、会社負担分もそこから捻出しなければなりません。

仮に給与を20万円とすると、会社負担分は1.83万円となります。

【人件費枠 27.55万円】 – 【厚生年金会社負担分 1.83万円】 = 【残り 25.72万円

となります。

なお給与が20万円というのは、時給1,085円になります。

20万円を1日8時間 x 23日の184時間で割りました。

人件費枠から健康保険(会社負担分)を引く

健康保険会社負担分があります。

給与20万円の場合、0.99万円です。

【人件費枠 25.72万円】 – 【厚生年金会社負担分 0.99万円】 = 【残り 24.73万円

となります。

人件費枠から雇用保険(会社負担分)を引く

0.6%となりますので、給与20万円の場合は0.12万円(1,200円)となります。

雇用保険会社負担分があります。

【人件費枠 24.73万円】 – 【雇用保険会社負担分 0.12万円】 = 【残り 24.61万円】

となります。

人件費枠の内訳まとめ

以上で義務とされる福利厚生関連は計上しました。

ここから給与を引いた額をまとめると…

項目金額
売上¥345,000
給与△¥200,000
厚生年金 (会社負担分)△¥18,300
健康保険 (会社負担分) △¥9,900
雇用保険 (会社負担分)△¥1,200
定期代△¥35,000
会社管理費△¥34,500
残金 (予備資金)¥46,100

こうなります。

不確定な出費がまだまだあるのが経営

「4.6万円」も利益でるって思った人は経営者失格です。

色々な不確定な出費が経営では数多く発生します。

風邪、病気などによる休み

まず年間でそれなりの数あるだろうと思うのが「体調不良による休み」です。

1日休みがあったから出向先に「行けません」だけでは通用しません。
代わりの社員を行かさなければいけません。

普通は契約社員が病欠の場合、出向先の会社の中でやりくりすると思います。
今回は現場の音響技術の業務委託で代わりの人材を送る事が求められています。

これには2つの大きなリスクが考えられます。

代わりの社員やフリーランスを派遣する

風邪のような突発的な事態に協力してくれる外注フリーランスがいるでしょうか?
突然頼んで代打で打てるような人材は、頼めたとしてもそれなりの費用をお支払いするべきです。

仮に安く2万円で頼めたとしても2日で予備資金はなくなります。

インフルエンザにでもなられたら大赤字です。

風邪で休んだら基本給を引いてよい?

どこかの誰か
どこかの誰か

代打で行ってもらうんだからら、休んだ人のお金を回せばよくない?

おめでとうございます。
これであなたも立派なブラック企業の経営者です。

仮にこんな募集要項があったとします。

■募集要項
契約社員
■給与
基本給 20万円 + 交通費 (定期代 3.5万円まで支給) + 福利厚生社保完備
ただし、欠勤は1日に付き2万円を基本給から引く(病欠忌引きも含む)
条件
3年以上の現場経験とそれにともなった技術を有すること

こんな条件で応募します?
許されない内容です。

退職金の積立や賞与ボーナス

今は契約社員としてシミュレートしていますの。
ですので退職金は設定しなくても良いです。

ただし…。

契約社員にも賞与の設定が必要になる?

賃金格差が問題になるなかで2020年より同一労働同一賃金が施工されます。
これによって設定のない契約社員の募集はさらに難しくなると予想されます。

同一賃金同一労働(パートタイム・有期雇用労働法)

契約形態に関わらず同じ業務をしていれば同じ給与を支給する事になります。
大手20%の企業は、契約社員にもこれまで正社員にしかなかった賞与や退職金の設定をすると発表しています。

ということで、設定することにしましょう。

毎月の手残りが4.6万円あったとして(多分ないけど)、そのうち月1万円の積み立てができたとします。
1年間で12万円。
40年勤めて頂ければ480万円ほどです。

老後2,000万円足りない問題って、退職金が1,000万円〜2,000万円をもらえた上でって話だったような…。
そのためには毎月3万円の積立が必要です。

ボーナスをどうする?

何のトラブルもなく手残りから損金が出なかったとして、毎月1万円は積立できます。

会社に損金発生させなかったら、年に1度12万円の賞与

なんとも後ろ向きな規程…。

トラブルの対応

どれだけ気を使っていたとしてもトラブルは付きものです。
経営者はトラブルを避ける手段を全力で取りつつも、必ずあらゆるリスクを想定しなければなりません。

うちみたいな零細でもプリ事件が色々あります。
この前のドア破壊事件もありましたし、こちらに瑕疵がなくても揉め事を避けるため弁護士に依頼して対応いただくこともあります。

トラブルにはならないまでも、契約書の確認や作成、法務的な処理も定期的に発生します。
会社に粗利の残らない仕事は、やるだけマイナスになります。

昇給は?

技術者派遣の売上が1ヶ月34.5万円で固定です。
そこからどれくらい給与を支払えるかを考えながら書いています。

昇給は無理そうです。
何もトラブルや欠勤がなければ、手残り4万円の中から退職金やボーナルを諦めてもらえるなら、その中での昇給は可能です。

ただし給与を20万円から22万円に増やすと、厚生年金なども増えます。

項目金額
売上¥345,000
給与△¥220,000
厚生年金 (会社負担分)△¥20,130
健康保険 (会社負担分) △¥10,890
雇用保険 (会社負担分)△¥1,320
定期代△¥35,000
会社管理費△¥34,500
残金 (予備資金)手残り¥23,160

このあたりが損益的にはギリギリな気がします。
会社としてやる意味があるのかは別にして…。

これで固定費以外の費用を捻出したり積立やボーナスはもう無理ですね。

教育費は?

もし新入社員を雇ったとしてら3年間手塩にかけて育てた人材を送り込むことになります。
これで会社への見返りはほぼなし。
運が良ければ月数千円〜1万円は残るかも?
育てるのに3年間、給与を払い続けて何百万も使ってますよ…。

業界のさまざまな有料セミナーに参加させたり交通費の支給も必要です。

役員報酬は?

これだけ配慮してリスクを背負ってもメリットはなさそうです。

何のトラブルもなく、病欠もせず、昇給無し退職金なしなど諸々の理由を許容してくれれば、少しは役員報酬に還元できるかも?

まあ無理でしょう。

株主への配当は?

フルハウスは株式会社ですので、少しでも利益を出して数パーセントでも株主に還元するという使命があります。
零細ながら一応は1,000万円分の株主がいるわけです。
その人たちに少しでもリターンを…。

これも無理でしょうね…。

契約社員は4年ごと

契約社員なのは客先との契約が年度毎で来年はあるか不明だからです。
4年までなのは5年雇用したら正社員にしなければいけないからです。
一度、正社員にすると客先との契約が切れても首にする事はできませんので。

とある法人は、4年経ったら一度契約解除して1年のブランクを経て再び4年間雇用するという事を始めています。

法律の趣旨からするとどうかと思いますが、現場としてはそれしか対応方法がないのでしょう。

最終的な募集条件はこんな感じ

と、以上を踏まえて募集要項を作成してみましょう。

■募集要項
契約社員

■契約期間
1年毎の更新。最大4年間。

募集条件
業界にて3年以上の現場経験があり、必要な技能を一通り身につけている事。

■給与
基本給 20万円 + 交通費 (定期代 3.5万円まで支給) + 福利厚生社保完備

■手当
通勤定期代の実費。ただし最大1ヶ月3.5万円まで。
それ以外の手当は一切無し。
退職金も無し。

ペナルティー
欠勤の際は自己の責任にて代行の人員を確保する事。
さらにその人員報酬分は基本給から天引き。
病欠忌引きなど理由は問わず行う事。

■賞与
特に何のトラブルもなく社内コストを使う事がなければ、年間20万円程度支給可能(かも)。

どうでしょう。
相当鬼のように感じます。
ペナルティーの部分はがっつり違法のままですし。

なお一応書くまでもないですが手取りは20万円じゃないですよ。

161,300円

です。

会社負担分と同額の年金保険を天引きしなければいけません。
そして源泉所得税も

そもそもやらない方が良くない?

もしこんな条件でも興味があるという人がいたら連絡ください。
繋ぎますよ(苦笑)

担当者曰く「どの会社も同じ条件なので…」。

でも、人いないんですよね?困ってるんですよね?

冒頭の記事でも人手不足が深刻になると書いてあります。
サービス業が中心になるとされています。

書かないですが誰でもしっているような組織でこんな感じですので、ニュースみても

本当に人手不足??お金不足なのでは?

としか思えないんですよね。

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