今年の4月、某有名大学で「分数の特別授業」というのがSNSで話題になっていました。
本来は大学入試前にクリアしていなければならない基礎的内容ですが、ある一定数できない学生がいて授業の進行に影響があるための処置らしいです。
当時に見た該当ツィートは既に削除されていたり各ニュース記事からのリンクも切れてますので、本当かどうかは分かりません。
が、専門学校も加えると23年間も教育の現場に足首くらいまでは常に浸かっていると
大いにあり得るモ〜
という感想でした。
数については専門家ではありません。が、授業の中でそれなりに数字を使わないといけないので、そのことについて書きます。
学生も見ていると思うので、念のために書いておきます。
今、出来ない事は何も問題もありませんので、そんな感じで読んでいただければ幸いです。
「計算力」と「数学力」
数を扱う力と言っても、大きく2つの能力に分類できると思います。
言い方は適切じゃないかもですが、
- 計算する力
- 計算方法を考える力
と僕は分けています。
僕の授業では積極的に、
PC使え、スマホ使え、電卓使え、使えるものは何でも使えモ〜
と言ってます。
機械に任せた方が良いものは、どんどん機械に任せましょうと。
もちろんコレは大学での1人1台はPCがあり、スマホも持ち込み自由の授業で「数学」の授業ではないからで、基礎教育なら話は変わります。
授業の中では、色々な「仕組み」を理解することがテーマですので、計算ができることではなく「計算方法を自分自身で見つけられるか」というタスクを与えています。
例えば、
定価¥3,000のコンサートチケットが、100枚売れたら売上はいくらモー?
流石に簡単すぎ。
- ¥3,000 x 100枚
なので全員できます。
「整数でない数」の登場で、ガクンと正答率が落ちる
整数を扱う事項について問題ないのですが、面白いのは、「分数」「パーセント」「小数点」といった「整数でない数」が登場すると、式を作れない人が突然に増えます。
慶応の場合は「分数」限定のようですが、僕の授業では「整数でない数」というのがひとつのキーポイントで、以降のことが理解できる人できない人の分岐点になっています。
なので、とても興味深く感じていて、いつも授業を進行させながら大まかなデータを取るようにしています。
日常で最も使う「整数でない数」、消費税
日常で多く人が触れる機会があるのは消費税だと思います。
8%の8は整数じゃん!
って突っ込まれそうですが、数学的な話は置いておいて、計算するときは「0.08」が軸となるので、学生の頭の中は「整数ではない数」になります。
A-1. 税抜きの金額から消費税を求める
例えばこんな質問を出します。
税抜き¥3,000のCDがあったとして、消費税込みの金額はいくらモ〜?
これは、ほとんどの人はできます。
稀に出来ない学生がいても、理解してもらうのにそれほど難しさを感じません。
A-2. 販売価格から税抜きの金額を求める
次に、
税込みで¥3,000のCDがあったとして、消費税抜きの金額はいくらモ〜?
さっきのとは逆の質問です。
税込の金額から消費税を除いた商品の価格を求める。
ここでグンと正答率が落ちてしまいます。
その時のメンバーにはよりますが、大体40%〜50%程度の正答率です。
中学校で「加算の反対は減算」「乗算の反対は除算」というのは誰しもが習うことで、皆さん問題なく出来ていたはずです。
が、実際には「回答の求め方」にたどり着ける人は、いつも全体の半分程度の人数です。
数学ではできていても、日常にある数字とは結びつけて考える機会がなかったのだと思います。
僕の授業ではPC、エクセル、スマホ、電卓、なんでも使えますので「答えがあっているか」ではなく計算方法を導き出せれば正解となります。
あとは、計算機なりエクサルなりが自動でやってくれますので。
多くの人は、
【税込価格】 ÷ 【1,08】=【税抜価格】
という式を考えると思いますが、そうでなく例えば、108で割って1%の金額を求めてから100かけてもOKです。
数学の授業ではないので、数量のイメージが頭の中にできていればOKといった感じでしょうか。
少し難易度アップした計算
次に、少し難易度をあげます。
B. 損益分岐点の計算
「損益分岐点」の計算です。
学生では普段あまり使う機会はないかもしれないが、例えば自分たちでイベントやライブをしたり、作品を売ったりすると必要になります。
こんな感じの質問です。
販売管理費が80万円、仕入原価が80%(粗利益20%)の時の損益分岐点となる売上金額は?
この回答を導き出せる人は、税抜きを求められた人と、それほど変わらないことが多いです。
少しは減りますが40%以上はキープしています。
ビジネスをしている人なら誰でも計算できるとは思いますが、最もスマートな式を作ると一次関数になるので、消費税よりはちょいレベルアップと言えると思います。
と言っても中学二年生で義務教育のレベルなので、もう少しできる人がいても良いだろうとは思いますが。
もうちょい高度な計算
さらに少しハードルを上げて、ロスを加えた損益分岐点の計算をしてもらいます。
ロス計算
例えば本屋さんなどのショップでは、良くないことですが万引きがあったりすると思います。
そう言ったロスをある一定の確率で見積もった場合、損益分岐点も変わりますので求められるかという趣旨です。
商品単価を¥1,000と仮定して、5%のロスが発生した場合に損益分岐点はいくらかなモ〜?
もう少し具体的なシチュエーションで例えると、
- 本屋さんを運営していて1冊¥1,000の本を販売している。
- 5%の盗難率、つまり19冊の本を販売すると必ず1冊は万引きされている。
- それ以外は、Bと同条件(販管費80万円。粗利益20%)
となります。
ロスありの正答率は30%
損益分岐点よりも少しだけ脱落者が出て30%程度。
なお、この問題は正解は一つだけにはしてません。
仕入れ価格を損害として考えても良いし、機会損失も考えて販売価格を損害として計上しても良いし、解釈は他にもあるかもしれません。
式を覚えさせたら、ほぼ皆んなできる
こう言った内容を盛り込むようになってまだ4年ですが、今のところ正答率はほぼ同じ感じです。
全国の一般的な平均などと言いたい訳ではなく、僕がどのレベルで授業を進行させるのが妥当かというのを探るために行なっています。
使う式は何も難しい物ではなく、四則演算のみ。
足し算、引き算、掛け算、割り算のみという事です。
サインコサインタンジェントだとかいう数学嫌いの人が「あ”〜〜」ってなるような、難しい関数は一切ありません。
知ってしまえば簡単な式ですので、そこをケアできれば授業の進行がスムーズになりますし、どれくらい「数量」を皆んなが頭の中にイメージできているかを掴みやすくなります。
「整数でない数」の重要さ
面白いのは、
税抜き価格が求めらる人は、ほぼそれ以降も考えられるモ〜
という点です。
50%程度から最終的には30%まで下がっているといえど、正答者は基本的に同じです。
逆にいうと、
整数でない数が扱える人とそうでない人で、あらゆる部分で理解度がスッパリ別れてしまうモ〜
とも言えます。
ここで言う「あらゆる部分」と言うのは数量に関係する話ですが、残念ながら人間の社会はほぼあらゆる所で「数字」と言うものが付いて回ります。
得意か不得意かで、色々変わってくることが多いと考えています。
小数点の小数点
他にも例えば、
¥3,000のCDのうち著作権使用料は6%だモー。それをJASRACに払うモ〜
消費税の計算できる人には簡単問題です。
そして次に、
JASRACはそこから6%手数料とって出版社や作家に支払うモ〜。JASRACの手数料は¥3,000の何パーセントだモ〜?
って聞くと、ロスあり損益計算と同じような正答率にいっきに落ちます。
正答者も同じメンバーになります。
「6%の求め方」を仕組みを理解せずに丸暗記してしまっているので、
6%の6%?? つまり、、え?!
みたいな、外から見ている分にはとても面白い光景がみれます。
もちろんちゃんと分かるようにしていきますが。
出来ない訳じゃなく、使っていないだけ
計算自体は難しくなくても、普段から使っていないと中々作れないものです。
苦手な学生と話をすると、「数学は実生活で必要ない」と思ってしまっていた人が多いようです。
確かに使わない高度なレベルの内容もあるとは思いますが、例えば、
学園祭で焼きそば作って売るぜ〜
って機会があればかなり使うと思います。
材料など、FLコストは計算しないといけないですし、道具、宣伝経費もみないといけません。
使わないと出来なくなるし、使ってれば出来るようになる
「英語の授業で喋れない」「国語の授業あっても人前で喋れない」みたいなのと共通要素として「数学の授業もやってきたのに使えない」みたいな感じかもしれません。
結して今の先生たちを批判する意図ではないです。
困難な状況のなか頑張ってますし、詰め込み要素も必要です。
そんな中、ちょっとこの辺を補強して上げたいな、みたいな部分をお手伝いさせてもらっている、という感じでしょうか。
0から100まで説明するのではなく、可能な限り「自分で調べて、情報を整理してドキュメントにして、人前で発表する」というのを出来るだけ取り入れるようにしています。
その分、めっちゃ進行は遅くなっちゃうんですけどね。
今回はこの辺で。
では、また。