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スタジオレコーディングのヘッドフォンの聴こえ方【やりにいのはダメ】

音楽の学び
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岩崎将史まさふみです。

とあるクラシック出身のミュージシャンからメッセージを頂きました。

とある演奏家
とある演奏家

今日はレコーディングの依頼で〇〇というスタジオに呼ばれたのですが…

普段のご自身の作品はフルハウスにて対応させて頂いています。
今回は演奏の依頼を請けて、市外の某スタジオに呼ばれたとの事。

そこでのレコーディングで、ヘッドホンの音が非常にやりづらく当惑したとのことです。
ヘッドフォンで聴こえてくる音が自分が何をやっているのだか分からない、と。

今回が初めてではなく、頻繁に聞く話なのです。
少しでも多くの人の改善につながればと、ヘッドホンモニターの考え方について書いてみます。

演奏者がやりやすい音を作ることに全力を注ぐ

プロのレコーディングエンジニアはヘッドフォンがやりにくいという状態でレコーディングを進めることはまずありません。

今回の演奏家も、

とある演奏家
とある演奏家

フルハウスでやるときは、生よりもやりやすい位なのに

とメッセージを頂きました。

演奏者がやりやすい音を作るというのが、まず最も重要です。
レコーディングのサウンドの良さは優先順位としては2番目です。

音楽は表現でありアート

レコーディングで記録をする対象は音楽です。
サウンドではありません。
音楽がぎこちない、表現者のやりたい表現が実現できる環境でなければ、いくら良い音でもアートとしてはダメです。

音の良さが第一優先にしてしまうというのは、

  • 映画の面白さはストーリーでも演技もなく画質の綺麗さ
  • 漫画の面白さはストーリーやキャラクターではなく画力

などと言っているようなものです。

アーティストや作品によっては、テーマ内容的に例外はあります。

基本に忠実に行えば、おかしな事にはならない

正しいマイクポジションと正しいモニターミキシングが行われていたら、よほど特殊な環境のスタジオやホールでない限り、演奏がしにくいという状況は発生しません。

ヘッドホンモニターには特に何か特別な仕掛けが必要ではありません。
音楽理論や音響理論、人間の聴覚に対する基本的な知識を持っていて、それに順当な経験を持っていれば誰でも対応できます。

ですので、ヘッドフォンが良く分からない状態でレコーディングセッションを進行してしまうという状態が僕にはイメージできません。

岩崎
岩崎

どうやったらそんな事になってしまうも〜?

という感じです。

例えば、

  • 特定の音域にいくと聴こえ方が変わる。
  • ピアニッシモとフォルテッシモの差が普段の聴こえとかなり違う

などということがあるとすれば、これはマイキングなどの収録音声の問題です。

すごく特殊などうしよもないヘッドホンとかであればその限りではないですが、今回はフルハウスと同じヘッドホンだったようです。

アンサンブルの中での聴こえ方が悪いということであれば、モニターミックスの作り方に問題が有るのかも知れません。
数十人のクワイアに対して個々の音となれば話は別ですが、小編成のアンサンブルの場合、適切なモニターミックスが作れていれば不具合を感じることはないはずです。

こうした部分をレコーディング本番前に、しっかりと詰めていく必要があります。

演奏家の慣れも少しだけ必要

とは言いつつ、レコーディングが未経験で生音での演奏しか経験がないという演奏家の場合には、少し慣れる作業が必要な場合もあります。

僕の経験にベースで言うと、10人中2人くらいは少し慣らしの録音をします。
直ぐに慣れて思ったように演奏できるようになります。
年齢なども関係ないです。

とある声楽家でのコンサートホール vs スタジオ

ひとつ具体例を書きます。

以前レコーディングしたベテラン声楽家は、最初はコンサートホールでレコーディングをするかスタジオでレコーディングをするかを迷っておられました。

  1. コンサートホールで普段のコンサート通りにヘッドフォン無しで録音する
  2. スタジオでアイソレートしてヘッドフォンモニターで録音する

前者のクラシカルスタイルか後者のモダンスタイルのどちらでレコーディングするかを迷っておられました。

モダンスタイルの方が自由度は高いのですが、ヘッドフォンで音を聴きながら歌ったことがないので不安とのこと。
幸いにも予算がある案件でしたので、コンサートとスタジオの両方でのレコーディングを行う事になりました。

結果はアルバムにはスタジオ録音のテイクが全曲採用されました。
心配されていたヘッドフォンでの歌唱も、

とある声楽家
とある声楽家

全く違和感ないです。よく分かります

とのことで1stテイクから全力で歌っておられました。

初めての人でも2テイク聴けば慣れる

初めての人がヘッドホンに慣れるために何をするかというと、2テイクを録音して聴くだけです。

1テイク録音したら、かならずスピーカーで再生した音を聴いていただいてます。
ヘッドホンの音の聴こえ方とスピーカーとの聴こえ方の差を知ってもらうためです。
難しいことは何もなくて聴くだけです。

それを踏まえてテイク2を録音して聴いていただきます。

皆さんこれだけで感覚は掴めますので、あとは演奏に集中できます。

既にレコーディングに慣れている人で、僕がボーカルディレクションをする場合には、1~2テイクは聴かせずに録音することが多いです。普段のその人の先入観の無い演奏や歌唱を録音したいからです。聴くことによって計算が入ってしまうと良い場合もありますが、そうでないテイクをまず先に録音します。

プリプロの勧め

音楽家や作品の内容によってはプリプロを進める場合もあります。

プリプロとはプリプロダクションの略です。
本番録音の前にアレンジや楽器、演奏などの詳細を詰めるために事前の仮録音をして一度作品を形にしてみることです。

一見、遠回りに感じますが、良い作品を制作するには実は最も最短距離で確実な古典的な制作進行です。

なぜ、ヘッドホンモニターが聴きとり難くなってしまうのか?

基本を踏まえてさえいれば、それほど難しいことではないヘッドホンモニターの音作り。
なのになぜ、

とある音楽家
とある音楽家

死ぬほどやりづらかったです

となってしまうのか?
その場に居たわけではないので断定はできません。
が、音の様子を伺う限り技術的な検討は付きます。

これはこれでまたブログが数記事書けるくらいの技術的な話になりそうですので、別の機会にしていきたいと思います。

レコーディングの前にしっかりとモニター作りを

クラシックなどアコースティックな音楽は特にですが、ステージ上の音を如何に再現するかです。
中々言いにくことですが、元の音楽に対しての造詣がないと出来ないのかもしれませんが、それほど難しいことではないのです。

やりにくいといのうは何かが間違っている場合が多いのです。
放置せずリクエストを出し、演奏に集中できる状況を、まずは皆で協力して作りをしましょう。

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