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ベートーヴェン『月光』をジャズアレンジでスタジオセッションの録音&動画制作|オカリナ西村麻衣子&ピアノ柳原由佳

スタジオ・レコーディングの仕事
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こんにちは、岩崎将史まさふみです。

今回は僕が録音&動画制作を手掛けた作品について解説です。

以前にも取り上げたオカリナ奏者の西村麻衣子さん。

1stアルバムのレコーディング記事

2022年のこの春に2ndアルバムのレコーディングを行いました。

オカリナ奏者・西村麻衣子さんの2ndアルバム『煌-Kirameki」

そのアルバムのレコーディング中に、

岩崎
岩崎

別にスタジオセッションの動画を
作ろうモ〜

と持ちかけさせて頂きました。

とても格好良い演奏と映像ができました。

今回はその録音と撮影、動画制作についても簡単に解説します。

演奏動画を作る人は増えていると思いますので、何かしら参考になれば嬉しいです。

名曲『 月光 』を ラテン・ジャズ で

上がその動画です。

クラシックの名曲『月光』がラテン・ジャズにアレンジされています。

『月光』の正式なタイトルはピアノソナタ第14番嬰ハ短調 作品27-2 『幻想曲風ソナタ』(”Sonata quasi una Fantasia”)です。
ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェンが1801年に作曲。
『月光ソナタ』という通称とともに広く知られているピアノ・ソナタです。

アレンジやこの動画でピアノを演奏されている柳原由佳さん。

今回、僕は初めてお会いしましたが素晴らしいピアニストでした。

それではこの動画をどの様に制作したのか、を簡単に解説していきます。

録音の方法

先ずは録音の方法について。

2つの部屋に別れで同時に録音

アルバムのレコーディング中に収録させてもらったので、アルバム録音と全く同じセッティングのままです。

スタジオ『フルハウス』は合計3つの録音ブースがあります。

オカリナとピアノでそれぞれ別のブースに分かれて同時に録音しました。

スタジオ・フルハウス (名古屋)にて2ndアルバム『煌き』をレコーディング中のオカリナ奏者・西村麻衣子さん

オカリナの西村麻衣子さんはメインブースにて。

スタジオ・フルハウス (名古屋)にて2ndアルバム『煌き』をレコーディング中のジャズピアニスト・柳原由佳さん

ピアノの柳原由佳さんはライブルームにて演奏してもらいました。

ガラスを通してお二人がアイコンタクトができる位置にセッティングしています。

こうして別々の部屋に分かれて録音する方法は過去記事でも解説しています。

今回の曲はクラシックではないけど同じ考え方です

この方法によって、オカリナとピアノの音像を調整するためのマイキングの自由度が増します。

マイクとマイキング

マイクは僕のブログでは同じみのマイク達ばかりです。

オカリナ録音のマイクセッティング。Royer R-121とB&K4006をステレオペアでミックス。

先ずはオカリナのマイク。

中央にROYER LABロイヤーラボのリボンマイク『R-121』。

外側にB&K(現DPA)の『4006』。

この2つのマイクをそれぞれステレオペアで使い50%づつくらいでミックスしています。

写真では伝わらないかも知れませんが、距離を割と離しています。

ピアノ録音のマイクセッティング。Royer R-121とB&K4006をステレオペアでミックス。

そしてピアノのマイキング。

こちらもオカリナと同じ組み合わせになっています。

こちらも写真でかならいピアノから離れているのが分かるかと思います。

アコースティック楽器の生演奏というのは、ホールでお客さんが聴いた時に適切な音量や音色の変化になるようにできています。

距離を離して録音するというのは大事なポイント。

こうすることでミキシング時にほぼ何もしなくても、自然な音像とバランスを作ることができます。

録音スタジオではない普通の部屋で距離を録ってしまうと、芯のないボヤボヤした音になってしまいます。
録音スタジオや音楽ホールは建築音響を考えた設計になっています。

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プリアンプ

マイク信号を増幅するプリアンプ。

今回は全て Millenniaミレニア の HV-3D-8 で統一しました。

Millennia HV-3D-8についての過去記事

足し引きのないそのままの音色がクリアに得られるマイク・プリアンプです。

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ADコンバーター / オーディオI/O

プリアンプで増幅されたアナログ信号をデジタルに変換するA/Dコンバーター。

これにはAPOGEEのSymphony I/O mkIIを使用。

Apogee Symophony I/O mkII については記事書いてませんでした。YouTubeがコチラ。

サンプリングレートは192Khに、ビット深度が24Bitにてレコーディングしました。

ProToolsでの収録なので収録ファイルは32Bit、内部ミックスバスは64Bitとなります。

ミキシングはボリュームとリバーブのみ

録音後に少しだけミキシングで音を整えます。

といっても各マイクの音量バランスとリバーブ(残響)のバランスを整えるだけ。

電気的に大きく音色を変えてしまうような事はしません。

アコースティック楽器に寄る生演奏ですからね。

稀にアコースティック楽器なのに電気音響側で大きな音色変化を求める音楽家がいます。
特殊な効果を狙うのであれば面白いと思います。
そうだはなく普段の演奏で実際に鳴っていると音と、自身が脳内でイメージされている音が大きく乖離している場合もあります。
その場合は、録音後に音色を電気的に変化させるのではなく、先ずは出音である楽器の音色、演奏方法などを見直してください。
その方が録音の音質は向上します。

撮影の方法

次に撮影の方法について。

5台のミラーレスカメラを使用

今回は1名に2台のカメラ、合計4台のカメラを用意しました。

このブログでも過去に取り上げてきたカメラ、SONYのα7SIIIです。

α7SIIIの過去記事

動画に最適なミラーレスカメラですね。

設定は4K30fps、色域はHLG (BT2020)のHDRで収録しています。

レンズはSONY純正のGMレンズ達を使用しました。

そしてVLOGCAM ZV-E10も使っています。

最近はこのZV-E10にハマっていて、結構使いこなせて来た気がするので、また記事書きたいと思います。

照明が大切

写真や動画は光が大切。

光がほぼ全てということで、照明はとても大切です。

キーライトにはGodoxのML90とソフトボックスの組み合わせ。

Godox ML60の過去記事

とても安価なのにかなり使えるビデオライトです。

フィルライトやバックライトにはNeewerのライトを使いました。

更に激安なんですよね…。

とりあえず予算ないけど照明が何か必要という人におすすめです。

僕の周りの個人映像クリエイター、多分全員持ってる(笑)

ホワイトバランスを調整できるので全部統一するのが重要です。

今回は全て5600ケルビンで統一しています。

収録はとにかくリラックスと集中

これらの機材をセッティングしたら後は収録。

僕ら技術チームはRECボタンを押すだけ。

後は演奏者が全てです。

僕らが常に気をつけていることは、とにかく演奏者が常にリラックスして音楽に集中できる環境を作る事。

僕自身が演奏家でもあるので、その辺りを最優先に考えてスタジオワークを進めています。

収録後の動画編集

収録を終えたら音声と映像を組み合わせて仕上げていきます。

音楽ミキシング

音楽のミキシングは先にも書いたとおり、ほぼ何もしません。

リバーブ(残響)の量感を調節したら、後はマイクの音量バランスを調整するだけです。

適切な距離を取ったマイキングと言えど、どうしてもフォルテシモが大きすぎたりピアニシモが小さすぎたりする部分は発生します。

気になるところだけちょこちょこと音量を調整していきます。

マスターだけはいつもアナログ通しています。

マスタリングEQとコンプレッサー
フルハウスのManley Massive Passive EQ & SLAM Mastering Version

Manleyのマスタリング専用機材達で調整し192Khのサンプリングレートを動画に最適な48Khzに自然に下げていきます。

MANLEY ( マンレイ ) / SLAM! Mastering Version
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一度アナログに戻るのでADとDAコンバーターも重要です。

LAVRY ENGINEERING ( ラベリーエンジニアリング ) / AD-24-200 Savitr
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動画編集(映像編集)

動画編集は4つのカメラ映像を並べて適宜切り替えていくだけ。

僕はFinalCut Proという動画編集ツールを使っています。

大したことはしてないですが、今回はHDR撮影をし、HDRでYouTubeにアップロードしたかったので、色域をワイドガンマのBT2020HLGに設定しています。

BT2020PQでないのはSONYのHDRがHLGだからです。

カラーコレクションで少し整えますが、カラーグレーディングまでの凝ったことはしません。

時間かかるので。

音声はミキシング済みのファイルをそのまま映像のタイミングに合わせて貼り付けるだけ。

一切手を加えません。コレ大事。

YouTubeへのアップ

完成した動画をYouTubeへアップします。

HDRなのでCODECをHEVECの10Bitで行うことで、YouTubeではHDR動画になります。

この辺りはリクエストがあればまた詳しい記事書きますが、動画系は既に多くの両記事がありますよね。

ちなみにYouTubeはMacのChromダークモードで見るとHDRは色域がバグるんですよね。

完全に白飛びしちゃうのでそういう場合はライトモードにして見てください。

簡単にサクッと演奏動画を作成

こんな感じで駆け足で制作方法について書いてきてしまいました。

収録から編集完了までの所要時間は3時間ほど

今回の動画制作に掛けた時間は収録で1時間ほど、ミックスや動画編集で2時間ほどといった感じです。

最近はブログからの質問もよく頂いています。
頂ければ加筆したり新記事を書いたりしてますので、遠慮なくお問い合わせください。
コメント欄か問合せフォームから受け付けています。

今は音楽家ご自身でも簡単に演奏動画が作れる時代。

とはいえ設備もいるし何もかも音楽家自らやるのは、音楽に向かうエネルギーを吸い取られてしまいますよね。

そんな場合は、録音や動画のご依頼も受け付けています。

このブログのお問い合わせフォームからでも、僕の会社「フルハウス」のお問い合わせフォームからでも構いません。

遠慮なくご連絡ください。

西村麻衣子さんの2ndアルバムとライブ情報

今回ご紹介した西村麻衣子さんのアルバムやライブの情報はオフィシャルサイトでご覧いただけます。

2ndアルバムは既にリリースされているので、ブログ記事書いてなかったですね。

書けてない案件ばかりではありますが…。

また近日中になんとか。

ということで、今回はこの辺で。
ではまた。

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