岩崎将史です。
コンサートや舞台の仕事ではプロセニアムという言葉をよく使います。
略してプロセとも言います。
今では主に4つの意味で使われる事が多いです。
- プロセニアム・アーチ
- プロセニアム・アーチ的な物を持つホール
- プロセニアム・アーチの常設スピーカー
- その他、雑多な使われ方
簡単に解説します。
本来はプロセニアム・アーチ
舞台で使うプロセニアムの本来の意味はプロセニアム・アーチの事です。
プロセニアム・アーチというのは額縁舞台の事で、オペラ公演のクォリティを上げるために登場した機構です。
上記写真はロンドンのオペラハウスですが、舞台と客席の境目がアーチ状の構造物で区切られているのがわかります。
どの様なメリットがあるのか?はこの記事で詳しく書きましたので、読んでみてください。
そしてオペラハウスが登場した歴史もこちらに書きました。
ホールやステージの分類として
最近では「プロセニアム」「プロセ」というとプロセニアム・アーチの事ではない場合も増えてきました。
その1つがホールの種類としての使い方です。
ホールやステージ形状の分類としてプロセニアム・ステージという言葉が使われます。
プロセニアム・アーチのある舞台の事です。
それに対してプロセニアム・ステージではないホールの形状を、オープン・ステージと言います。
プロセニアム・ステージはクローズ的
オープンの反対はクローズです。
そうなんです。
プロセニアム・ステージ ≒ 閉じたクローズなステージと考えて問題ないです。
クローズな理由
プロセニアム・ステージは緞帳や幕とセットです。
幕を下ろせば完全に客席と部隊を別な空間に閉ざすことができます。
これが1つ目。
2つ目は公演時でも舞台と客席とが分け隔てられているという感覚があることです。
そもそも額縁として舞台を絵画的にみせるために作られているのであたりまえです。
これによって、客席からは映画をみるように、遠近法なども使えます。
現実とは完全に切り離された空間を作り表現することができます。
メリットもデメリットもある
オペラやミュージカルでは上記のようにメリットが多いです。
ところが演劇やコンサートとしてはデメリットにもなります。
客席と出演者がアーチを境に分断された感じがあり、距離感を感じてしまいます。
オーディエンスの熱量を感じながら演奏や演技をする分野には向かず敬遠されるようになりました。
そのため、お客さんの心を無視した出演者側が一方的に表現する舞台の事を皮肉として「プロセニアムなステージ」と言ったりもします。
ホールの音響設備として
1900年代の日本では多目的ホールと呼ばれる公共ホールが数多く建設されました。
多目的ホールにも色々な種類や分類がありますが、多くはプロセニアム・アーチと幕を設置しているプロセニアム・ホールです。
ただし、殆どの場合はオペラハウスの様な建築構造物としての明らかなアーチではなく、演劇以外の用途でも使いやすいようにそれとない意匠で客席との空間を隔てたアーチ的な物にしています。
こんな感じでアーチではないけどアーチ的な感じで舞台と客席が遮られています。
プロセニアム・アーチに設置されたスピーカー
そしてこのプロセニアム・アーチには大抵はスピーカーが埋め込まれています。
上記の写真をみるとアーチの左右と上部に四角く色が変わっている部分が3点あります。
ここにスピーカーが埋め込まれていて、いわゆるサランネット的な音が通る網状のクロスで蓋をしています。
ここに埋め込まれているスピーカーの事をプロセニアム・スピーカーと言います。
略してプロセニアムやプロセとも呼ばれます。
客席に音を届けるスピーカー
プロセニアム・スピーカーは客席に音を聞かせるスピーカーです。
主な用途は講演やナレーション、演劇でのセリフや効果音などです。
音楽用には使わない
音楽コンサート用にはあまり使いません。
大抵のコンサートでは別にスピーカーを持ち込みます。
上記は毎年、僕が舞台監督を務める音楽イベントでの準備中の写真。
こんな感じで舞台の両サイドにスピーカーが設置されているのをみると思います。
その外側のプロセニアム部分にはスピーカーが埋め込まれているのが見えますが、こちらは音楽では使いません。
理由は音楽コンサート用に性能や調整が最適化されていないからです。
影アナやベルで使う
音楽コンサートでは、音楽再生用には使わなくても、開演前のベルやブザー、影アナと呼ばれる会場アナウンスの再生用には使われます。
間違い?かなり雑多な使われ方?
プロセニアムというのは舞台額縁、もしくはそれに付属する設備をさしますので、そうでない物についてはプロセという言い方はするべきでない、と僕は認識しています。
が、実際には色々なところで十把一絡げにプロセと呼ばれる状況を何度か見たことがあります。
臨機応変に現場で付いていくことも重要ですので、そんなケースについて書いてみます。
ホールの設備スピーカーを
プロセニアム・スピーカーはプロセニアム・アーチに設置されていますが、ホールにはそれ以外にも様々なスピーカーがあります。
代表的な物としては、
- シーリング・スピーカー
- ウォール・スピーカー
- バルコニー・スピーカー
などです。
いずれも客席の音を届けるためのスピーカーで、プロセニアムスピーカーなどではカバーできない場所などの補強や演劇などでの演出に使われます。
コンサートホールの設備スピーカーをプロセという
コンサートホールなどプロセニアム・アーチのないホールの常設スピーカーをプロセと呼ぶ人もいます。
上記は普段よく行く豊田市コンサートホール。
天井から吊ってあるのが常設スピーカーです。
これをプロセと呼ぶ人ともいます。
こちらも本来「プロセ」には当たりませんが、現場でそのようなシチュエーションに遭遇した場合は、意図を汲み取って柔軟に対応しましょう。
特別に設置したスピーカーを
録音などで奏者とのコミュニケーション用にスピーカーを設置する時があります。
舞台袖のエンジニアが舞台の演奏者に指示を出すときの声が聞こえるようにするためです。
その方のお手伝いしたときに、
プロセの音声チェックしてもらってよいですか?
?!プロセのチェック??今回は使ってないモ〜。
何のことを言ってるんだモ〜
と混乱したことがありました。
直ぐにコミュニケーション用のマイクでがなりはじめたので、舞台上に今回だけ設置したスピーカーのことだと分かりましたが、「いや、それ違うだろ…」と。
その筋の世界では標準的に使っているのかも知れませんが、流石にそれはやめて欲しいと思います。
まとめ
今回は舞台で使われるプロセニアムについて解説しました。
- 元々はオペラハウスのプロセニアム・アーチ
- ホールの種類として
- 多目的ホールのプロセニアム・アーチに設置されている設備スピーカー
- 一部ではプロセニアム以外の設備スピーカーのことも
です。
では、また。