岩崎将史です。
名古屋を中心に活躍するドラマー斎藤 麻貴さんより、楽器レッスン室の吸音材について質問と驚くべき情報を頂きました。
吸音材が変色しちゃって〜
Amazonには偽物?がいっぱい
麻貴さんのドラムレッスン室に貼った吸音材が変色してしまったとの相談。
送られてきた写真がこちらでした。
こんな風になるもんなんですね。
僕がスタジオづくりに関わるようになったのが1999年ころからなので、かれこれ25年になりますが、始めてみました。😅
同じタイプの吸音材をこれまでも永く使ってきますが、こんな事になったことはありません。
写真を見る限りドラムのレッスン室で、特に陽が当たるなどの条件も無さそうです。
酸化による経年変化だけでこんな事になるのでしょうか?
3枚のパネルの真ん中だけが変色しているように見えますし…
形状としては定番のあの商品にみえますので、麻貴さんに聞いてみました。
定番の〇〇のブランドだも〜?
ちょっとこの症状は聞いたことないので驚きだも〜😨
amazonで買ったのですが、チャイナ偽物みたいです…😭
ということで教えて頂いたのがこちらの商品。
この記事を書いている現時点で12枚で¥3,200程。
安い…。
偽物というのは言い過ぎかもしれませんが、この様な激安商品がamazonでは大量にあるのですね。
初めてしりました。
本家はコレ
同タイプの吸音材の本家はSONEXというブランドで、スタジオ業界では定番です。
スタジオだけでなく、会議室や飲食店など、落ち着いた話のしやすい空間を作るために使われます。
僕のスタジオ・フルハウスでもいくつかのSONEXの吸音材を使用しています。
本家吸音材のSONEXは20年間変色なし
商品自体はとても良いものです。
20年程使っている物もありますが、変色などは一切ありません。
いくつかの色もあるので、お好みで選べます。
麻貴さんが使っていたのはピラミッドタイプですが、違う形状の物もあります。
中華製に比べて値段はやはり高めですけが…
フルハウスでのSONEXの使用例
フルハウスではこんな感じで使っています。
麻貴さんと同じピラミッドタイムは使っていませんが、それぞれ場所や欲しい効果ごとに使い分けています。
安い建築材料でもOK
なんかこうやって書くとSONEXの回し者みたいですが、そんな事はありません。
少しでも値段を安く抑えたいという人には、建築材料を購入してのDIYがオススメです。
フルハウスでもかなり、というかほとんどDIYです。
スタジオ作りたいお客様にはちゃんと建築の設計士や施工業者を紹介しますが、自分の作品を作るのに残念ながらそこまでお金が掛けられない、という人にオススメです。
建築内装材は安価ですのでDIYの労力さえ考えなければ、既成商品を購入するよりもはるかに安価に建築音響の調整ができます。
定番はマグボード
吸音材の定番はなんといってもマグボードです。
グラスウールをブロック状に固めたもので、住宅などの内装で断熱材として使われるものです。
自宅の壁をぶっ壊すと大抵中から出てきますよ。
こいつは吸音効果が物凄く高く、しかも安いです。
取り扱いやすい
マグボードはカッターやノコギリで簡単に切断できます。
そして軽いので天井などの高いところへの取り付けも簡単です。
ただし触るときはガラス繊維がチクチクと刺されいますので、手袋などは必須です。
クロス張りは色も選べる
マグボードは、表面をクロスで覆った物が壁や天井に貼るだけでそれっぽく仕上がります。
クロスも白やグレー、黒などがあります。
クロスは強度が高く加工はしにくくなります。
指定のサイズで欲しければオーダーすれば作ってもくれます。
20年ほど前はオーダーしてカットとクロス張りを業者に依頼してました。
今も可能だと思いますが、最近はDIYで自分たちでクロスを張っています。
ライブハウスやホールの袖、舞台裏で
ライブハウスやコンサートホールの袖などで、黒のマグボードをを壁一面にガンガン貼っている所は多いです。
とにかく安価ですので、オーディエンスから見えないところでは最もコスパの優れた施工方法です。
使いすぎに注意
ただし、闇雲に使うのは危険です。
暑さや密度などが一定になってしますので、貼りすぎると不自然な気持の悪い音の部屋になってしまいます。
そのあたりのポイントは次の項目で解説します。
良い音の部屋にするためのコツ
良い音の部屋にするためには、何を使うかよりも全体のプランニングが大切です。
音楽向けの建築音響設計の一般的な考え方は大まかに書くと、
- 低域音の反射や回り込みを抑える、無くす
- 中域音、高域音の適度な拡散
というところがポイントになってきます。
優先順位としては、
- ベーストラップ (コーナートラップ)
- 吸音と拡散
となります。
1の処理を正しくできていないと、2の処理は終わりの見えない無限ループ地獄に陥ります。
詳しく書くと本一冊分とかになりそうですので、めちゃくちゃ簡単にそれぞれを解説します。
ベーストラップ
構造的に部屋のコーナーは低域を中心に溜まりやすいです。
溜まるというのは音が反射でループすることで、モワモワしたり音の明瞭さがなくなったりするように感じます。
この状態だと、楽器の細かいニュアンスやお互いの演奏が聴き取り難かったりします。
実は僕が知る限りいわゆるバンドの練習スタジオはこの処理が全くなされておらず、特に大きい音を出すと、もう何がなんだか分かりません!みたいな状態になっている所がかなりあります。
先程も紹介したこの吸音材の裏に仕掛けがあります。
そして、これはちょっと僕のアイディアで風変わりですが、
収納棚を確保しつつベーストラップ効果もある造作です。
王道は以前にスタジオ作りをお手伝いさせて頂いた、スタジオ route 66 のベーストラップですが、ちょっと写真が分かりにくい。
ベーストラップの設計や施工方法は無数にあるので、必要があればまた別の機会に書きたいと思います。
吸音と拡散
吸音と拡散の奥は物凄く深いです。
今回は簡単に。
マグボードでの例
上の写真がフルハウスのライブルームに施工したマグボードの使用例です。
マグボードをそのまま壁に貼るだけだと均等に特定の帯域だけを吸音してしまいます。
マグボードは吸音がメインですので、いくつかの木の板と組み合わせてクロス加工をほどこしました。
当時のアルバイトスタッフ総出で作成しました。
これにより吸音と反射のバランスがよくなります。
さらに設置方法で低域音の吸音帯域と拡散具合を調整しています。
木の材質や形状をパネルごとに変更し、中高域音の拡散状況も調整しています。
マグボードも複数の密度を組み合わせて処理帯域に偏りが出ないようにしています。
ミニブースでは密度の異なるグラスウールを縦長にカットして、クロスを貼り壁に貼っています。
グラスウールの使い方は、詳しい事は説明しだすとキリがないので、また希望があればブログに書いてみたいと考えています。
カーテンでもOK
手っ取り早く行うにはカーテンもオススメです。
カーテンは出来れば壁から離したほうが良いです。
この距離で処理する帯域を調整します。
そしてシワのない綺麗なカーテンよりも波になっているほうがサウンド的により良いです。
カーテンは吸音一方になりますが、カーテンの前後で音の拡散になる物を配置していくことでバランスも取れます。
SONEXなどでの例
そのまま貼る
ミニ・ブースでは壁や天井にSONEXをそのまま貼ってます。
小さい部屋で容積を確保する必要がありました。
角度を付けたり距離をとる
写真のように角度を付ける、あるいは壁からの距離をとることで、より効果的に調整ができます。
少ない部材でも性能をアップさせることができます。
好みのサウンドになるまで試してみよう
凄いざっくりとでしたが、こんな感じで対応するだけで、部屋の音に困っている人は大きく改善すると思います。
DIYであれば、予算を気にせずに納得いくまで突き詰めることができます。
頑張ってください。
では、また。
もし、プロに任せたいという事であれば、相談も受け付けております。