こんにちは、岩崎まさふみです。
今回はレコーディング機材の紹介です。
15年間ほど使ってきたAvalon Design の名イコライザー「AD2055」を悩みに悩んだ末に手放すことにしました。
今回は、
- Avalon Designのアウトボードの素晴らしさ
- AD2055の良さ
- 導入の経緯と手放す理由
などを語らせてください。
手放す理由
手放すことにした理由は、ズバリ使用頻度が下がったからです。
4~5年くらい前までは録音やミキシングの際には必ずと言って良いほど使っていました。
使用頻度が下がったのは主に次の2点です。
- マスタリングにおいてManley Massive Passive EQがメインとなった
- 今年始めの調整室のプチ改装で置いておく場所がなくなった
マスタリングではManleyがメインに
10年くらい前までは、まだ我がスタジオ「フルハウス」にはManlery のMassive Passive EQもなく、マスタリングのメインEQとして稼働していました。
サブ機としてや2台連結する時のEQとして最初は使っていました。
ただやはりサブ機ですので、Manley Massive Passive EQよりも断然に使用頻度は低下していました。
プチ改装で置く場所がなくなった
マスタリングでの使用頻度が減ったとは言え、レコーディングやミキシング時のアナログEQとしてとても重宝していました。
特に通すだけで倍音が乗り、明るくサウンドが輝きます。
そして高域をブーストするときのサウンドの自然さやスムーズさは、どんなプラグインEQにも負けません。
ところが…
外録にスムーズに機材を持ち出せるよう設置方法を見直し
今年始めにスタジオ内のプチ改装を行いました。
頻繁にあるコンサートなどのホール録音やライブ配信収録に対応しやすいように、機材の入れ替えを行ったのです。
普段から外録時に持ち出す機材セットをできるだけ1~2つのラックにマウントし、スタジオからの持ち出しと現地でも組み立て時間を減らせるようにしました。
いわゆる経営的な視点での効率化であり、改善です。
もちろん録音に関しては、一切の妥協がないという前提で。
必要な時に設置
そうした所、どうしてもいくつかラックに収めきれない機材が出てきてしまいました。
その内のひとつが今回の「AD2055」だったのです。
常設場所がなくなった「AD2055」はスタジオの隅に置き、必要な時だけコントロールルームに持ってきて設置するようになりました。
そうなると、余程の事がない限りは使わなくなってしまいます。
持って置きたいけど経営者としては
最高のEQのひとつなので、感情的には持っていたい。
ただし、ココは自分自身に対して心を鬼にして売却すべきという判断をしました。
株式会社の経営者としては、会社の大切な資産を眠らせるのは犯罪的な行為です。
現金に変えて、今の会社にとってより有効活用される熱い物に投資されるべき。
というポジティブな判断をしました。
今となっては幻のAvalon Design のアナログ・アウトボードたち
「AD2055 EQ」を始めAvalon Designのアナログ・アウトボードは1990年代から2000年代を彩る数々の名作たちに使われてきた大定番のシリーズです。
次の3機種、
- AD2044 コンプレッサー
- AD2055 EQ
- AD2077 マスタリングEQ
は当時、世界中のどこの大手レコーディングスタジオやマスタリングスタジオに行っても見かけた物です。
ピュアクラスAの100%ディスクリート設計で、通すだけ音の輝きが増す魔法の道具でした。
正規代理店でのラインナップから削除
そんなAvalon Designの製品も、今では手に入らない貴重なビンテージになってしまいました。
上記ページは正規代理店である宮地楽器のAvalon Disignのページです。
ラインナップから高級ハイエンドなアウトボードはなくなっていて、安価なDIとハーフラックのマイクプリアンプだけになっています。
同サイトの3機種のページは全て「メーカー生産終了につき販売終了」となっています。
世界的に消滅していくハイエンドなアナログ・オーディオ機器
15年ほど前から予想していましたが、ハイエンドなアナログオーディオ機器がどんどん世界中からなくなっていっています。
この流れは今後も加速することでしょう。
おそらく10年後にはほぼ消滅していると思います。
最高のサウンドを目指すのではなく、安価かつ多機能な方向の製品やメーカーは生き延びるでしょうが。
理由や世の中的な背景は、長くなるのでまた改めて機会があればブログ記事にしたいと以前から考えています。
感動したAD2044とAD2055との出会い
僕がAvalon Designの製品と初めて出会ったのは、2000年前後。
当時、CDマスタリングの世界ではビクター(JVC)が開発した「K2マスタリング」というのが、CDなどのデジタル化において断トツのサウンドを実現し一世を風靡していました。
僕も自分が関わった作品をK2マスタリングに持ち込んで作業してもらった時は「目から鱗」で物凄く感動しました。
当時は横浜のJVCの工場にマスタリングセンターが併設されており、そこのいくつかのルームではAD2044が使われていました。
また同じくビクターのマスタリングスタジオ「FLAIR」のルームではAD2077も使われていました。
負けないサウンドをフルハウスでも実現
これらのスタジオでは輝きのある僕好みのサウンドが得られていたので、僕は催促端で「K2」と同等のシステムをスタジオ「フルハウス」にも導入するべくお金を貯める事にしました。
2~3年ほど頑張って予算を作り出した後に「K2マスタリング」の考え方とアプローチを更に発展させて、
- 電源環境の見直しと再構築
- ワードクロックやAD・DAコンバータなどのシステム見直しと再構築
- ケーブル・コネクタなども徹底的に見直してチューニング
などを行い、その上でAvalon DesignやTube-Tech、Manleyなどのアウトボードを導入しマスタリング業務をレベルアップさせていきました。
その甲斐もあり、名前は出しませんが東京の某有名マスタリングスタジオを利用していた、いくつかのクライアントが「フルハウスの方が音が良かった」と言っていただける機会も増え、依頼も増えていきました。
思い入れはあるが現状のシステムにはまらない
丁度僕が30歳~40歳になる10年間の出来事で、最も思い入れのある機材のひとつ。
そんな歴史がある中で「AD2055 EQ」を売却することにしました。
サウンドは一級品ですが、常に修正や要望が変化するクライアントワークではどうしてもメモリー可能なデジタルのプラグインを使わざる負えないという業務フローの実情もあります。
経営者としては稼働率の低い資産はより有効的な資産に変換するべきという声も常に頭の中から湧いてきます。
趣味なんですけど趣味ではないですからね。
ヤフオクへ出品してみた
売却するとはいっても、僕はあまり機材の値段とか相場に詳しくないので、いくら位が現在の相場なのかが分かりません。
そこで今回はヤフオクへ出品してみることにしました。
そのために写真を撮影しました。
このブログで使っている写真は全てその写真です。
ついでに前から試して見たかったYouTube ショート動画を作ってみました。
良く分からなかったので何となく10万円スタートで始めたのですが、一晩経って見てみたらまさかの20万円超え。
こんなマニアックな機材を欲しい人なんて、
どれくらいるのかモ〜
と出品前は考えていましたので、ちょっと嬉しい驚きです。
まだまだアナログの音に拘る仲間が沢山いてくれるのですね。
どの様な人が落札してくれるのかは分かりませんが、上手に末永く使ってくれることを願っています。
ということで、今回は売却前の機材紹介でした。
ではまた。