こんにちは、岩崎将史です。
武道館でのライブ経験もあるロックボーカリスト
ミュージシャンの近藤葵さんが、フルハウスに遊びに来てくれました。
今は活動休止中ですが、武道館ライブの経験も凄腕ミュージシャンです。
東京から名古屋に移り、自宅を建てられました。
僕と近藤さんが出会ったのは、半年前の夏のこと。
超おしゃれな自宅プライベートスタジオの設計協力をオーダー頂きました
新築の自宅ガレージをプライベートスタジオにしたい相談を頂きました。
そのスタジオの建築音響やシステムの設計協力をさせて頂きまして、先月完成しました。
じゃ〜ん!
とってもオシャレなスタジオです。
このスタジオの設計施工に関しては プライベートスタジオ route 66 の記事で書いています。
今回、近藤葵さんが、僕のスタジオ「フルハウス」に遊びにきてくれました。
今後のためのベストな機材選びをしたい
近藤さん所有のマイクやマイクプリアンプなどと、フルハウスで使用している物を、色々と比較して、プレイベートスタジオの今後の機器選定の参考になれば、と遊びました。
順番に解説します。
マイクの比較
近藤さんの希望は、
まずは自分が持っているマイクと、スタジオ定番のマイクとでどれくらい音質が違うのかを体感してみたいんです。
面白そうです。
やってみましょう。
ブラウナー vs ノイマン
スタジオ定番のマイクといえば NEUMANN の U87Ai です。
近藤さんが所有しているのはBRAUNERのPhanthera。
- NEUMANN の U87Ai
- BRAUNERのPhanthera
この2つを比較してます。
フルハウス所有の定番マイク、NEUMANN の U87Ai を2つ並べて歌の録音。
初めて使ってみるBRAUNERのマイク
BRAUNERのPhantheraは僕は初めて使うマイクでした。
アマゾンとサウンドハウスで取り扱いがない非常にマニアックなマイクです。
そしてフルハウスの NEUMANN の U87Ai はこちら。
マイクプリアンプはまずはMANLEYのDUAL MONOから
マイクプリアンプには、フルハウス所有のチューブマイクプリアンプ、MANLEY Dula-monoでテスト。
このプリアンプ、凄いこだわりの設計なのですが、こだわりすぎて採算が合わなかったらしく、すでにディスコンとなっています。
現在はFORCEという4chのモデルにチェンジしています。
が、少しコストダウンに走ったらしくDual Monoに比べていまいち評判は良くないようです。
近藤葵さんオリジナル曲のボーカルレコーディングでテスト
この組み合わせで近藤さんオリジナル曲のボーカル録音をしてみます。
- マイクは U87Ai と Phanthera の2種類
- プリアンプはDual Mono
スッキリのPantheraとふくよかなU87Ai
比べてみた結果、サウンドは、
- Phanthera はスッキリ
- U87Ai は中低域がふくよか
と全然別物のサウンドでした。
自然に聴こえるU87Ai
U87Aiは声を張ったら張ったぶんだけ大きく聴こえるます。
それにに対しPhantheraはパンチがイマイチ感じられません。
Phantheraだとサビでもっと張って声を出さなければいけないように感じますね。
思いっきり張り上げてるのに、マイクを通して聴こえてくる音は軽い感じです。
クリアーといえばクリアーなんですけどね。
ということで、今回はU87Aiの勝ち。
まあ、こういう勝ち負けは、声や楽器によってもも全然変わってきますので絶対とは言い切れませんが。
今回はとても差が大きかったです。
プリアンプの比較
マイクはマイクプリアンプとの組み合わせがとても重要です。
同じプリアンプでのマイク対決はU87Aiの勝ちということで、次はプリアンプを色々試していきましょう。
近藤葵さんに一番マッチするマイクプリアンプを選ぶために。
Brent Averill / NEVE 3405
まずは上記写真のネズミ色の機器、Brent AverillのNEVE 3405です。
伝説のオリジナルNEVEコンソールのマイクプリアンプ
このマイクプリアンプは、Brent Averillさんという方が作って売っていたものです。
「作って」といっても使わなくなったレコーディングミキサーからマイクプリアンプ部分だけを抜き出してケースに収めたもの。
ただし、そのレコーディングミキサーが凄くて、今や伝説となっている70年代のNEVEコンソールから抜き出した物なのです。
めちゃくちゃ太くとれてオススメです。
近藤葵さんも文句なく気に入ったオリジナルNEVEのマイクプリアンプ
マイクプリアンプをNEVE 3405に変えて1テイク歌ってもらいました。
めちゃくちゃ歌いやすいです
さらに再生を聴いてもらいました。
この感じが欲しかったんですよ!
ロック系の名盤はたいていNEVE系マイクプリアンプ
近藤葵さんが聴いてきたであろう先人ロック系アーティスト達の作品は、おそらくほとんどの場合においてNEVE系のマイクプリアンプが使われていたはずです。
やっぱりロック、ポップス系の歌はビンテージNEVE系に限るモ〜
普段レコーディング機材を製作しているエンジニア曰く、
この「ビンテージNEVE」の音は現代では作れないです。
材料が手に入らない物ばかり。
僕のスタジオ「フルハウス」めっちゃ頑張って6チャンネル分のオリジナルNEVE系を購入しています。
リイシューで匹敵するものに出会ったことはまだない。
オリジナルでないと駄目なんです。
禁煙はリイシューといって現在も手に入るパーツで製作した物が各社から発売されています。
僕も散々デモ機を借りて試させて頂きましたが正直にいってピンときた物はありませんでした。
VINTECH AUDIO の X73 とかも「全く同じ」みたいにプロモートされてました。
何回か使った事がありますが別物です。
念の為にNEVEプリアンプでマイクを変えてみる
NEVEプリアンプが近藤葵さんの声にとても合うということが分かったので、年のためにPhantheraのBrauenerも再びテストしてみます。
結果の印象に差はなく、
僕はやっぱりU87Ai、ノイマンの音が良いですね
NEVE vs NEVE の対決
マイクはU87Aiに決めて、他のプリアンプも聴き比べてみます。
次に試したのはこいつです。
FOCUSRITEのISA115HDという奴でこれも伝説のNEVEオリジナルのマイクプリアンプなのです。
FOCUSRITEなのにNEVEオリジナルなんですか?
そうなんです。
FOCUSRITE 初期のプリは100%オリジナルNEVE
FOCUSRITE社がRupert Neveさんを招聘して作ったのがISA115HDです。
めちゃくちゃ頑張って4チャンネル分を購入しました。
社長はしばらく無休でしたよ(笑)、マジで。
当時の新品での購入価格は100万円越えてたらしいです。
伝説の名機 ISA 115HD の優勝
早速、歌って頂きました。
Brent Averill も ISA115HD もどちらも良いも〜
と僕は感じましたが近藤さんは、
少しの差ですけどISAが良いです。
さらに歌いやすくなりました
歌っている人が、心地良く自然に歌える。
これはとても大切な事です。
長い事、大切に使ってきて良かった。
こんな古いプリアンプが、今でもトップクラスのサウンドって凄いですね。
さらにMillenniaやGrace、Maagなど最近のハイエンドマイクプリとも比べて見ましたが、ISA115HDの圧勝でした。
ボーカルの場合だモ〜
楽器の場合はまた違った結果になると思うモ〜
コンプレッサー対決
好みのマイクとプリアンプが決まったので、次はコンプレッサーの比較をしてみます。
フルハウスでは次の2つを使っています。
- EMPIRICAL LABS の Distressor EL8X
- Avalon の AD-2044
これを順番に試してみます。
EMPIRICAL LABS ( インペリカルラボ ) / Distressor EL8X
EMPIRICAL LABS ( インペリカルラボ ) の Distressor EL8X です。
主にFETタイプのクラシックコンレッサーの代わりに使える便利なコンプレッサーです。
以前は、USAのスタジオから売ってもらった、UREI LA-3A や UREI LA-4A などを使っていました。
そしてど定番、UNIVERSAL AUDIO (ユニバーサル オーディオ) の 1176LN も使っていました。
これらは、全部、売っちゃったんですよね。
スタジオが、、、、狭いんです、、、、
本当なら全部、残して起きたかったですが。
置けなければ使えない。
使えなければ、持っていても意味がない。
ということで、ビンテージコンプレッサーは泣く泣く売却。
おかげさまで他社スタジオなどに、購入時と同じかそれ以上の評価で買われていきまして、少しニンマリ。
そこにDistressoreを導入したのですが、とても優れもので、上記にあげた有名なFETコンプのキャラクターをアナログで再現する設定がたくさん入っています。
同じ音にはならないですけどね。
でも全然、使える音になります。
Avalon AD-2044
OPTコンプレッサーと言って、綺麗でスムーズなサウンドのコンプレッサーです。
1176のようなFETタイプと比べると、コンプっぽさは無いです。
その代わり、1176みたいなガツっと来る感じにはなりません。
ナチュラルなまま、ほんのり明るく倍音が乗る感じです。
昔、ビクターのマスタリングセンターでマスターコンプとしても使われていて、良い感じだったので導入しました。
ただ、今はすでにディスコンになっています。
比較結果は
結果は予想していたのですが、Distressoreの相性が近藤さんの声に良かったです。
ジャズボーカルなどであれば評価は逆転するかもですが、ポップスやロック系ではFET系コンプのガッツ溢れるサウンドが、ほとんどの場合においてハマリます。
Distressore (ディストレッサー) 良いですよ。
リキッドチャンネルと比較
近藤さんの声に合う、ベストな組み合わせが決まってきたところで、
最後に秘密兵器と比較してみました。
リキッドチャンネル
近藤さん所有のフォーカスライト(FOCUSRITE)社のリキッドチャンネル (THE LIQUID CHANNEL)です。
フォーカスライトが、様々なビンテージ機器を完全シミュレートした、というマイクプリアンプ、コンプレッサー、EQです。
今回、試してきた一連のビンテージ機器も再現されているということで、比較してみました。
一台で、いろいろなビンテージ機器のサウンド・キャラクターを作り出せるという事で、他社スタジオでも見かけることがあります。
使ったことはなかったので、ちょっと楽しみにしつつ、比較テスト。
結果は僕と近藤さんの印象は、ビンテージ系のサウンドではなく、現行のフォーカスライトISAシリーズのISA ONE や ISA 828 に近い。
ISA ONEとISA 828 は共にフルハウスで使っています。
ISA828
サウンドハウスで詳しくみる追記:ISA 828 は2018年で全て売却してしまいました。
最新ISAとビンテージISAは別物
もちろん良いプリアンプで価格を考えたら優秀だと思います。
が、ビンテージ機器のサウンドと比べると、差は歴然。
次元が違う。。。
メンテナンスは大変ですが、僕が現役で仕事し続ける限りは、大事に使っていこうと改めて思った次第でした。
そんな感じで、スタジオ1日、楽しく実験しました。
では、また。