こんにちは、岩崎将史です。
CDを聴こうとしたら違うタイトルが表示された
という質問がよくあります。
特に音楽家やクリエイターなど同業者かろも割と質問がくるので、
もしかしてあんまり知られてないかも〜?
ということで解説します。
【理由】CDプレイヤーが予想で勝手に表示してるから
音楽CDには文字情報を入れるスペースは全くないんです。
そのため、皆さんがカーステレオなどでCDを再生させるときに表示されているタイトルは、再生機器側が
予想で勝手に表示してる
です。
なのでそのCD自体は、
不良品でも事故でもありません
のでご安心ください。
【詳しく】音楽CDには文字情報は入れられない
CDに文字情報を入れらるようにしておけば良いのに…
と思いますよね?
そうなっていないのは、CDが出来た時代や経緯にあります。
CD-DAとレッドブック
音楽CDのことを正確にはCD-DA(コンパクト・ディスク・デジタル・オーディオ)と言います。
CD-DAにはこういうマークが必ずついてます。
CD-DAはフィリップスとソニーが共同で開発しました。
商品として市場に出たのは1982年です。
その時にCD-DAの規格を定めた規格書がありました。
表紙の色が赤かったので、レッドブックと呼ばれています。
この規格で、
- リニアPCM 44.1Khz
- 量子化ビット16bit
- 最大トラック数は99まで
みたいなことが定められています。
データーの収納方法がしっかりと定められていまして、この規格の中に、
タイトルなど文字情報を入れる内容は一切ない
んです。
TOC情報から予想している表示している
では、どうやって再生機がタイトルを判断しているか?
TOCと呼ばれる情報から判断しています。
TOCとは?
TOCはTable Of Contentsの略です。
CDの情報の先頭部分に、
- CD-DAか?
- 最初のトラックNo.と最後のTラックNo.(何曲収録されているか?)
- 各トラック(曲)の長さ(分/秒)
などが記載されています。
データをツールでみるとこんな感じです。
Global CD Offsets
Track Offset: 0 ms ( 0 frames )
Splice Offset: 0 ms ( 0 frames )
Pause Offset: 0 ms ( 0 frames )
T I Position Length Title Artist Prot/Gen/Pre/ISRC
01 00 Pause 00:00:00 00:00:02
01 Track 00:00:02 00:02:56, 2ch audio, no no no
02 01 Track 00:02:58 00:03:26, 2ch audio, no no no
03 01 Track 00:06:25 00:02:24, 2ch audio, no no no
04 01 Track 00:08:49 00:03:12, 2ch audio, no no no
05 01 Track 00:12:01 00:02:00, 2ch audio, no no no
06 01 Track 00:14:02 00:05:03, 2ch audio, no no no
07 01 Track 00:19:05 00:04:59, 2ch audio, no no no
08 01 Track 00:24:04 00:03:01, 2ch audio, no no no
02 CD End 00:27:06
Total length: 00:27:06
Total length without pauses: 00:27:04
表記方法はツールによって違いますが、CD-DA自体がTOC情報として持っているのはこんな感じです。
要は曲数と長さしか分からないも〜
CDのデータベース、CDDBを利用している
TOC情報では曲数と長しか分からない。
なのにどうやってタイトルを判断しているのか?
CDDBというデータベースにアクセスして文字情報を取得しています。
CDDBとは?
インターネットサーバー上にある音楽CD用のデータベースの総称です。
世界中の様々なCDのタイトル情報などがアップロードされていて、ここでTOC情報で検索をかけると、
その曲数や時間なら、多分〇〇ってCDじゃね?
などと教えてくれます。
データベースはどうやって更新されるの?
上に書いたGracnote社のCDDBサービスは、AppleのiTunes Storeをはじめ、ソニー、アルパイン、パイオニア、サムスンなどに提供しつつ提携しています。
iTunesではCDを入れた時にタイトル情報などが不明なとき、
- アルバム / Audio CD
- Track 01
- Track 02
と表示された経験がないでしょうか?
その場合はiTunesで自分で入力すると、次からは正しく表示される可能性があります。
その情報はiTunesのデータベースへ送信することができます。
そのデータはCDDBとして共有されます。
つまり、世界中の人々が日夜ボランティアでデータベースを構築していっているのです。
予想が外れることもある
曲数や長さの情報だと違うタイトル出る場合もあるのでは?
はい、あります。
普通にガンガンあります。
事例のところで紹介したいと思います。
確実に正しい文字情報を入れたいならブルーブック
どうしても文字情報をCDに入れておきたい、という人には別の規格があります。
CD-EXTRAです。
企画書の表紙が青いためブルーブック規格なととも言います。
CD-EXTRA
CD-EXTRAは正式には、Enhanced Music Compact Disc と言います。
CD-DAにデータを共存させているのでマルチセッションCDともいわれます。
音楽部分は通常のCD-DAと同じ構造のため、通常のCDプレイヤーで問題なく再生できます。
データ部分はいわゆるCD-ROMと同じでテキスト情報だけでなく動画ファイルやPCアプリケーションなどの、あらゆるデジタルデータを入れることができます。
実際の用途としては文字情報を入れるためではなく、ボーナストラック的に動画ファイルなどを入れるためにCD-EXTRAにすることが多いです。
音楽CDではないという扱い
なんで全ての音楽CDをCD-Extraにしないの?
と、当然思いますよね。
これには諸説ありますが、一番大きいのは
レッドブック規格のCD-DAではなくなる
だと思います。
流通はCDショップなどで展開されますが規格上はCD-ROMとなります。
PCソフトなどと同じ扱いです。
そのため再販制度などの適応が除外されます。
CD-DAにはパッケージに(再)マークがつきますが、CD-Extraにはつけれません。
メリットとデメリットを考えるとCD-DAでリリースすることが多い
特別に映像ファイルなどの特典をつけたい場合を除いては、基本的にCD-ExtraではなくCD-DAでリリースされています。
あとは何かエビデンスとなるデータがあるわけではなく、僕の想像ですが、
- CDDBがあるので実際上は何も問題がない。
- むしろユニバーサル言語化などを考えるとCDDBの方が効率が良い
- データ収納にするとマスタリング時の作業工程やリスクが格段に増える。
- すでに業界的に大きなサービスになっているので、潰すのに抵抗がある
などがあるのではないかと思います。
特に3つめの工程が増えるは僕にとってもクライアントにとっても重要です。
通常のオーディオCDマスタリングの作業に加えて、
- 仕様の決定や言語の準備とそれらの入力作業。
- データCD部分のオーサリングをするためのツールや作業
などなどが必要になります。
要は制作費が上がるし制作時間も伸びるも〜
あくまでも僕の場合はですので、他の会社やレーベルがどう考えているのかは知りません。
【事例】違うタイトル表示で揉めた例と解決方法
過去に相談を受けて実例をいくつか紹介します。
おまえのかあちゃん出べそ
同業の音楽クリエイターからの相談でした。
企業のイメージソングをCDで納品したんだけど、社長がカーステレオに入れたら「お前のかあちゃん出べそ」って出たらしく怒りのクレームが…
なんでこうなるのでしょうか?
よりによってCDの内容からして、最も表示されたくない系統のタイトルが…。
CDDBにデータあげるしかないも〜
直ぐに100%確実になる治るわけではないけど、やり方を教えるも〜
その後、解決したのかは分かりませんが、特に連絡はなかったから上手く収まったのかな??
一応、言っておくけど、僕やフルハウスは何も携わってない仕事だも〜。
突然、相談されからやり方教えてあげただけだも〜。
某アマチュアロックバンドの場合
とあるアマチュアロックバンドのCDを作っていた時でした。
iTunesでCDを読み込むと、次の表示がでました。
岩崎さんが言ってたとおり不明で出ますね。
自分でもできるも〜
もし面倒臭かったらこちらでCDDB更新するも〜
ということでこちらでセットアップ。
無事に表示されるようになりました。
【まとめ】解決できるから気にしないでOK
ということでCDのアルバムタイトルや楽曲タイトルの表示についてのまとめ。
- 音楽CDには文字情報は入っていないし入れられない。
- 表示されるデータはオンラインのデーターベースを見にいっている
- データベースには複数の運営団体がある
- 各個人でデータベースの登録はできるし代行も可能
ただし、オフラインの再生プレイヤーは過去のデータベースを本体に内臓している物もあるかもしれません。
その場合は更新されませんが、再生機器側の問題ですので我々ではどうすることもできません。
以上を踏まえて、すっきりと安心してCDを作ってくださいね。
では、また。