こんにちは、岩崎将史です。
僕はこれまで音楽コンクールの録音に関わってきました。
録音音源審査に提出するための録音で、これまで多く演奏者の入賞のお手伝いをさせてきて頂いています。
そんな中で、先日はユーフォニアムを録音をさせていただく機会がありました。
今回はユーフォニアムの録音について紹介します。
高校生から音楽コンクールで複数の入賞歴
今回の録音を担当させて頂いたユーフォニアム奏者は佐々木七星さん。
現在は名古屋音楽大学という僕も非常勤講師として指導に行っている大学の1年生です。
佐々木七星さんからは学生だから依頼があったのではありません。
出会いは1年ほど前、彼女がまだ高校生だった頃にさかのぼります。
年代別の音楽コンクールに応募したいということで、僕の会社「フルハウス」のホームページから当時、問い合わせを頂きました。
その時はしっかりと結果を出し入賞されています。
別に録音のおかげと言うつもりはありません。
佐々木七星さんは同時期に別のコンクールでも入賞していますので彼女の実力です。
その後に名古屋音楽大学に入学してきたのですが、僕は今回の録音相談で初めて知りました。
大学って広いし人数が多いので、1年生だと特に授業で接点がない限りは顔を合わせる機会はなかったりします。
ピアノ伴奏でのユーフォニアムのレコーディング
今回の課題はピアノ伴奏での録音審査でした。
音源は非公表ですので、ここで取り上げることはできません。
ですが、録音の様子などを紹介する許可を頂くことができました。
音源審査で参加を目指す演奏家に少しでも参考になればと、今回の録音方法を簡単に紹介してみたいと思います。
今回の録音の様子はVLOGとしてYouTubeにもアップしています。
テキストで解説もしていきますが、合わせてご覧いただいた方が理解しやすいかと思います。
向かい合う配置での演奏
今回は奏者が伴奏者と向かいう配置を選択しました。
大まかな配置図がコチラです。
動画審査ではなく録音音源審査ですので映像は必要ありません。
であれば見栄えを気にする必要はなく、奏者が向かい合った方がアイコンタクトなどの意思疎通がしやすくなります。
僕は特別な理由がない限りは演奏録音は向かい合う配置をオススメしています。
奏者は「通常のコンサート通りの配置で演奏したい」と望めば、もちろんその様にします。
コンクールは編集などは一切禁止
音楽コンクールでは「編集禁止」が一般的です。
録音方法が決まったら、
- テイクのつなぎ合わせや差し替えはしない
- 演奏中のマイクバランスの変更などもしない
などがルールとなります。
そのために、録音前に「演奏の表現やバランスを的確に表現するマイキング」が重要になります。
それを決めた後は、僕らの仕事は録音ボタンを押すだけ。
後は全てが演奏者に委ねられることになります。
クラシック音楽は電気音響(PA)のない時代の音楽。
演奏者の表現技巧が全ての音楽です。
3セット、計8本のマイクで録音
マイクは合計8本を用意しました。
- メインマイク
- 各楽器のスポットマイク
という構成を全てステレオで設置しました。
メインマイク
メインマイクには、
- B&K (DPA) 4006 / 無指向性コンデンサーマイク
を使用しました。
これをManfrottoのスタンドで高い位置にあげます。
無指向性を選んだ理由はいくつかあって、
- 無指向性が最も自然なサウンドで集音できる
- 広いスタジオではないので直接音と間接音が良いバランスで集音できる
というのが主な理由です。
広いホールであれば広指向性のマイクも組み合わせたりします。
スポットマイク
スポットマイクはユーフォニアムとピアノにそれぞれを設置。
- NEUMANN U-87Ai / 指向性コンデンサーマイク
- DPA 4015 / 広指向性コンデンサーマイク
メインマイクが基本
各マイク音声の使い方は、先ずメインマイクを基本にします。
この音声が80パーセン以上です。
場合によっては95%以上とか100%という場合もあります。
僕は各楽器から当距離になるように配置しています。
著しく演奏音のバランスが悪くない限りはですが。
そうすることで各スポットマイクとの時間軸を合わせやすくなります。
各スポットマイクはメインマイクでは足りない要素をカバーするためにちょい足しします。
どれくらいかといのは楽器の組み合わせや空間の大きさなどの状況に寄ります。
望ましいバランスを作るためには普段から、生の演奏を直接聴いていることが重要。
というかそれ無しで音楽の録音作品を作り上げることはあってはならないと寧ろ考えています。
10代から毎日のようにコンサートや練習の生音に環境触れる事ができるとという意味で、音大などの環境は育成にとってはとても重要だったりします。
マスターレコーダーの録音ボタンを押すだけ
適切なバランスが取れたら、あとは僕ら録音技術側の仕事は録音ボタンを押すだけです。
全ての演奏表現は奏者に委ねられます。
マスターレコーダーへの音声信号経路は次の組み合わせを使用しています。
- マイクプリアンプ Millennia HV-3D
- マルチトラック用A/Dコンバーター APOGEE Symphony I/O mk II
- 2 Track 送出用 D/Aコンバーター dCS Debussy
- 2 Track 録音用 A/Dコンバーター DANGEROUS MUSIC AD+
- 2 Track モニター用 D/Aコンバーター dCS Elger II
こうしてみると、コンバーター関連ってクラシック音楽から来てるネーミングが多いですね。
彼らはとにかく最高の音質でのインプットとアウトプットを実現してくれる子達です。
めちゃくちゃ金食い虫ですが…
録音が終わったらCD-Rをプリントして完了
録音はミキシング済みの2トラックをマスターレコーダーにリアルタイムで録音していきます。
そのため録音が完了した後の作業は、使用テイクを決めてCD-Rをプリントするだけです。
今回は、2曲で約15分程の実演奏時間でした。
数テイクを録音し、最も良いテイクを選んでCD-Rにプリント。
録音からCD-Rのプリント納品まで、全ての行程が1時間45分ほどで完了しました。
自前で録音する人は‥
コンクール提出用の録音は「プロに頼みたいけどお金を掛けられない」という人も多いと思います。
その様な方が、少しでも良い音で録音するためのポイントは大きく2つ。
- 適切なマイクポジション
- 適切な録音信号レベル
適切なマイクポジション
適切なマイクポジションは、
- メインの楽器と伴奏が良いバランスになる位置。
- 直接音と間接音が良いバランスになる位置
を見つけるのが重要です。
マイクの位置だけでなく演奏の場所などを探してみるのも良いです。
適切な録音信号レベル
適切な録音信号レベルで注意すべきは2点。
- 過大入力で歪ませない
- コンプレッサーやオートゲインなどの自動調整機能は全てオフ
また別の機会で詳細を書いていくつもりですが、これらの事に気をつけていれば、大きな問題はない音で録音できるはずです。
コンクールなどの録音・録画はフルハウスへ
今回は僕が日々行っている業務の1つ、コンクール録音について「ユーフォニアム編」として解説してきました。
僕は日々、スタジオだけでなく、ホールや外部の練習室など何処ででも録音しています。
もしご依頼やご相談などあれば、お気軽にフルハウスのお問合せフォームから連絡ください。
もちろんこのブログの問い合わせフォームからでもOK。
今回はこの辺で。
ではまた。