こんにちは岩崎将史です。
箏奏者・佐藤亜衣さんのCDアルバムがリリースされます。
そのアルバムのレコーディングなどを昨年に行いました。
佐藤亜衣さんにとっては初となるアルバム。
どの様なCDか雰囲気をお届けできるように簡単な紹介動画を作ってみました。
今回のブログは、このCDアルバムの録音方法などを解説します。
指向性毎のステレオマイクとスポットマイクを設置
佐藤亜衣さんとのお仕事は今回が初めて。
佐藤亜衣さんやプロデューサーなどの制作スタッフがどの様なサウンド感を持っているのかは全くの不明。
こういう状況の場合は僕はあらゆる事を想定して録音プランを立てます。
想定される様々なマイクを全て立てておくモ〜
先程の写真には色々なマイクが写っているのが見えます。
順番に解説していきます。
柔らかいアタックで自然な音像が得られるリボンマイクによるXYステレオ
まず中央に2本設置したのがROYER『R-121』というリボンマイク。
センター軸を揃えることで位相ズレの少ないステレオ収録が可能になります。
リボンマイクの柔らかいサウンドが得られるのと同時に、フィギュアエイト(双指向性)による独特のステレオ感で集音できます。
ド定番。指向性コンデンサーマイクによるA-Bステレオ
そしてDPA4015もステレオでセット。
ワイドカーディオイド(広指向性)をA-Bステレオにて。
空間残響も全て録り込める無指向性によるステレオ録音
そしてもう1セットがB&K4006。
無指向性のマイクを設置して自然なルーム感、部屋の質感を集音します。
バランス調整用に欠かせないスポットマイク
これらのマイクをメインマイクとして、さらにバランス調整用にスポット近接マイクを設置。
箏用にDPA4011。
これは写真では1本しか見えていませんが、もう1本立ててステレオで集音しています。
そして唄用にはZENNHEISERのMD441。
指向性がとても強いマイクなので、良い感じで唄のバランス調整使えるのではと立ててみました。
初めての奏者との仕事は、好みなサウンドを探る所から
これだけ多めにマイクを立てるのには理由があります。
それは演奏者もプロデューサーも僕にとって初めてお仕事相手だからです。
そのため先方の好みや音に対する価値観が分かりません。
上記の方法で録音しておけば、どの様なタイプにでも対応できます。
箏曲における僕の理想は明確で、それはボンマイクの1ポイント・ステレオマイク録音です。
ただしそれが全ての人に当てはまるとは限りません。
録音を始めるにあたり、色々なマイクの音を出しながら好みをお聞きし、奏者の演奏やプロデューサーがジャッジしやすいマイクランスを探りました。
最終的には1ポイントステレオ
録音前にマイクバランスを決めたら、基本的には録音完了まで変えずに録りきり。
ミックスとマスタリングはオンラインでのやり取りとさせて頂いたので、次の2つの音源をブラインドにてご案内しました。
- A→録音時のマイクバランスでのミックス
- B→リボンマイクでのステレオ1ポイントのみ
どちらもテイクは同じです。
音的に好きな方でマスター作りましょうモ〜
Bでお願いします。
結果、僕の理想と同じ選択をして頂けました。
柔らかいアタック感が特徴のリボンマイク
リボンマイクのサウンドはコンデンサーマイクよりもアタックが柔らかく集音できます。
そのため箏の弦を弾く成分などが気にならず、正面に立てるだけで普段お客さんとして聴いているのを同じ用に記録できます。
音質的な調整や加工は一切なしのサウンド
スポットマイクも結果的には全く使用しませんでした。
ですので真正面に立てたマイクの音のみ。
EQなどの加工調整も一切なし。
純粋に佐藤亜衣の奏でるサウンドを楽しんで頂けるCDとなっています。
演奏バランスが秀逸だからこそ実現できる1ポイントステレオ録音
この用に完全に1ポイントのステレオマイクのみでCDアルバムを完成できることは、それなりに珍しいです。
大抵は唄が小さくなり過ぎた所は唄の近接マイクの音量を少し上げたりなど調整が必要になります。
今回はその様な調整が全く必要がありませんでした。
必要なかった理由はひとえに佐藤亜衣さんの演奏バランスが素晴らしかったから。
こうなると録音時に調整することは何も必要がなくなります。
次回作はリボンマイクのみで録音??
今回は数多くのマイクを立てましたが、次作以降はリボンマイクの1ポイントステレオのみ。
でも良いとは思いますが、気分が変わった時にサウンドキャラクターを変えられないのも不安なのでやはり沢山立てるとは思います。
CDプレス用DDPマスターにて納品
今回の僕およびフルハウスの仕事は音源マスターの納品まで。
マスターはCDプレス用にDDPにて納品させて頂きました。
今回のCDの詳細や購入方法は佐藤亜衣さんのSNSなどでご覧いただけます。
是非チェックしてみてください。
また僕はこの様な邦楽器のレコーディングなども日々行っています。
録音や撮影、リリースなどを検討している人は是非、僕の会社フルハウスにお問い合わせください。
今回はこの辺で
ではまた。