岩崎将史です。
今年はそれなりの本数のライブ配信の製作に携わってきました。
生ライブでの配信だったり録画での配信だったり色々とありました。
その中で毎回クライアントに説明しなければならない事項がありました。
有料の音楽ライブ配信における著作権についてです。
理解をしてもらうのに中々に苦労を強いられる事が多く、出来るだけ分かりやすくマトメてみようと思います。
確認すべき3つのポイント
ライブ配信を企画するにあたって著作権の事を知っておくことは重要です。
著作権というと難しく感じるかもしれません。
厳密に全てを理解しようとすると確かに難解ですが、無料のライブ配信の場合はそれほどハードルは高くありません。
次の3点をしっかりと確認しておきましょう。
- 配信プラットフォームがJASRACと包括契約をしているか?
- アーカイブを残すか?
- 有料か無料か?
上記3つを踏まえて適切に処理を理解していないと、著作権侵害で大きな問題を引き起こす可能性があります。
ライブ配信の主催者は必ず理解をしておきましょう。
配信プラットフォームが音楽著作権を処理しているか?
著作権管理をクリアしている事が重要なのは説明するまでもないと思います。
ただし、クリアしているかどうかを判断するのは少しだけ大変です。
普段、実践している僕のルーティンに沿って解説します。
JASRACと包括契約をしているか?
まず最初にやるべきことは、配信プラットフォームがJASRACと包括契約を交わしているかの確認です。
JASRACと包括契約を交わしているプラットフォームかどうかは、JASRACのこちらのページで確認できます。
またURLから類推するに2021年になるとURLリンクが変わると思われうので、見れない場合は「JASRAC 配信 包括契約サイト」などで検索すると見つけてみてください。
包括契約をしている場合
配信プラットフォームがJASRACと包括契約を交わしていれば、
- JASRACの管理楽曲を演奏する
- アーカイブは残さない
上記の2点が守られていれば著作権はクリアです。
JASRACの管理楽曲かを調べる方法
JASRAC管理楽曲かはJ-WIDというデータベースでの検索できます。
有名な曲の多くはJ-WIDのデータベースで見つけられます。
該当する曲があれば、配信プラットフォーム事業者がJASRACへ著作権使用料を支払っています。
そのために配信主催者は配信可能です。
ただし、アーカイブを残さない場合はです。
アーカイブを残す場合については後述します。
JASRACと包括契約をしていない場合
もしJASRACと包括契約を交わしていない配信プラットフォームを使う場合は個別に申請手続きが必要です。
JASRACへ問い合わせれば親切丁寧に手続きの進め方を教えてくれます。
費用も大した金額ではありませんので、是非、正しい手続きを進めてください。
JASRAC管理楽曲でない曲をライブ配信する場合
JASRACが著作権管理をしてない楽曲もあります。
そうした楽曲の著作権管理はどうなっているのでしょうか?
主に次の3つの場合があります。
- パブリックドメイン
- JASRAC以外の著作権管理事業者が管理
- 著作権者による自己管理
パブリックドメインの場合
既に著作権が消滅している「パブリックドメイン」という作品があります。
パブリックドメインは著作権が既に消滅していますのでライブ配信が可能です。
プラットフォームがJASRACなどと包括契約を交わしていなくても、気兼ねなく演奏できます。
著作権の手続きが面倒な場合は、とにかくパブリックドメイン楽曲の中から選曲をすることもオススメです。
他の著作権管理団体の場合
国内ではJASRACの他にNEXTONEという著作権管理事業者があります。
NEXTONEの管理楽曲を配信する場合は、上記サイトを参考にして適切に処理をしてください。
著作権者による自己管理の場合
どの著作権管理団体にも楽曲が信託されてなく、著作権者が著作権を自己管理をしている場合には著作権者に直接連絡をとり許諾を得る必要があります。
使用許諾
「使用許諾」を著作権者から得る必要があります。
有名曲の多くの場合は「使用許諾料」というのが提示され一定の費用を支払うことにより演奏することが認められます。
金額については「著作権者」との交渉で決定しますが「使用を許諾するかどうか」は著作権者の判断となります。
有名な曲なのにJASRACなどに信託されていない場合は、
〇〇(歌手)に歌ってもらうために書いた曲だから、他の人が歌うことは認めません。
と言われる場合もあります。
著作権使用料
「使用許諾」を得れば晴れて演奏を配信できるようになります。
ただし、その場合でも著作権使用料が無しになるわけではありません。
「許諾」はあくまでも演奏することを許諾するだけで、その後の使用分については使用料の提示があるのが一般的です。
「配信」はなく「CD」に置き換えると、「カバー作品としてレコーディングすることを認める」というのが「許諾料」で、「作ったCDの枚数に応じて著作権料は払ってね」とうのが「使用料」です。
著作権者自己管理の場合は使用料についても権利者に決定権があります。
JASRACの使用料は格安で良心的ですが、自己管理の場合はJASRACより高額な場合もあります。
アーカイブを「残す」か?
アーカイブを「残す」か「残さない」のかで、著作権の取り扱いが変わってきます。
一言で著作権といっても「演奏権」「録音権」など複数の詳細な権利に分かれています。
アーカイブを残さない場合は通常のライブと同じ様に考えますので、前項の著作権の手続きが問題なく行われていればライブ配信が可能です。
アーカイブを残す場合はライブではなく「映像コンテンツを作る」という解釈になりビデオグラムの権利をクリアにしておく費用があります。
また同様に事前に収録をして映像作品として制作した動画をライブ配信を行う場合も同様にビデオグラムの承認が必要です。
たとえアーカイブを残さなかったとしても「ライブ」ではなく「映像作品の制作」と見なされます。
アーカイブを残す場合に注意しなければならないことを解説していきます。
企業や商品・サービスなどの宣伝になっていないか?
動画の内容が特定の企業や商品、サービスなどを紹介する内容がある場合は「広告目的複製」となりますので、広告利用の手続きが必要です。
広告利用の費用感
一般的には利用にあたってはそれなりの費用が必要です。
僕自身も常に広告関連の音楽制作に携わっていますので、クライアント企業から
〇〇の曲をアレンジしてもらって動画で使うとかどうですか?
などという相談を頻繁に頂きます。
許諾料が高いと思いますよ。
一応、音楽出版社に問い合わせてみますけどモ〜
今年も何件か、このような案件がありました。
今年ヒットしたあの曲は400万円で、あの曲は800万円でした。
僕が携わった案件での過去の最高値は誰でも知っている学校でも必ず歌われるような昭和のあの歌な、
〇〇ですと相当な人気曲でして、直近のとある広告では〇千万円で契約させて頂きましたので、それに近い金額でのご提示になるかと思います。
著作権管理者はJASRACにて確認
JASRAC管理楽曲の場合は、JASRACの担当窓口に問い合わせると著作権者の担当窓口を教えてくれます。
広告と見なすかどうかは著作権者の判断
映像作品が企業や団体などの宣伝行為に当たるかどうか?は、著作権者の判断になります。
僕からみると、とあるクライアント企業の案件で、事前に相談をされ音楽出版社に問い合わせた所、
担当者
広告に当たります。
と言われ、
それも広告とは少し酷だモ〜
と感じる内容も過去にいくつかありました。
特定の出版社だけではなく、多くの出版社がかなり厳し目の基準を持っています。
団体や企業、サービスなどが少しでも絡む場合は、独自に判断するのではなく必ず著作権者(大抵の場合は音楽出版社)に事前に確認を取りましょう。
シンクロ権をクリアできるかどうか?
著作権についてクリアになったとしても、もう1つ巨大で大きな敵ないます。
シンクロ権と呼ばれる音楽作品を映像利用するに際の著作権です。
外国曲の場合はシンクロ権が発生する
音楽を映像化する場合には著作権の1つである動画へのシンクロ権をクリアしなければなりません。
シンクロ権については過去に別の記事も詳しく書いています。
国内曲は通常の著作権利用の範囲
JASRACが管理をしている国内曲については著作権利用の手続きを正しく行っていれば映像シンクロ利用も認められています。
動画も通常の著作権利用の範囲と定められています。
つまり、
- JASRACと包括契約をしている動画プラットフォームを利用する
- 個別にJASRACに著作権使用の手続きを行う
この2つのどちらかが該当すれば問題ありません。
ですので大まかな理解としては、
国内曲をライブ配信や動画アーカイブに残すにあたっては、誰でも容易に著作権はクリアできるモ〜
外国曲の場合はかなり大変
外国曲の場合は映像利用のためのシンクロ権は通常の演奏権、録音権などとは切り離されていて各国の著作権管理団体が著作者から信託されていません。
そのために映像の中で利用するためには個別にシンクロ利用の許諾の手続きが必要です。
- 無料のライブ配信のアーカイブを残したい
- アーカイブを残さないが有料のライブ配信をする。
僕が携わってきたライブ配信の案件では、上記の2つの際には「シンクロ権の処置が必須」とJASRACや国内著作権管理を委託されている出版社から言われてきました。
シンクロ権については過去記事で詳しく書いていますので、こちらの記事をご参考ください。
シンクロ利用の許諾を得る手順
国外曲をライブ配信する場合にはシンクロ権の利用許諾が必要ですが、その申請方法は次の様に進めます。
音楽出版社へ問い合わせる
- JASRACへ楽曲の著作権を問い合わせ、合わせて著作権管理者の連絡先を尋ねる。(JASRAC管理楽曲の場合)
- 著作権管理者へ電話もしくはメールで問い合わせ指示に従って手続きをすすめる。
という流れになります。
国外の有名曲の場合は、殆どの場合において国内の著作権管理は国内の大手音楽出版社は本国音楽出版社と契約を交わして管理しています。
ですので、JASRAC管理楽曲の場合はJASRACが音楽出版社の担当窓口の連絡先を教えてくれます。
連絡を取り手続きを進めますが、一般的には、
- 許諾されない場合も多い (配信できない)
- それなりの許諾料が必要
- 本国権利者の認可を請けて許諾されるため期間が必要
などなどがあり、現実的にはハードルが高いです。
特に期間については出版社担当者より「明確な権利者しだいなので期限は分からない」と回答されることが常です。
経験上は早くて2ヶ月程度が最も多いです。
また僕自身は経験はありませんが、権利者から回答がない場合もありえます。
シンクロ権の許諾を得ずに行われている実態も
そのために昨今はシンクロ権はクリアせずに有料のライブ配信を行い、アーカイブを残さないようにすればバレないのでOKという方針で行われている話もそれなりに耳に入ってきます。
決してオススメは出来ない方法ですが、コロナ時代のライブ配信の現実としてそのような実態があるというのは間違いないです。
もしかしたら今後はライブ配信での映像化については、別の解釈が世界的に巻き起こってくるのかも?と個人的には考えたりもしています。
適切に処理をして気持ちよくライブ配信を
最後にマトメです。
次の3点をクリアしておけば、大手を振ってライブ配信を行うことできます。
- 著作権については問題がないか? JASRAC包括契約プラットフォームを利用するか、個別に利用申請をしよう。
- アーカイブを残さないか? アーカイブを残す場合は広告・宣伝に当たらないかを注意しよう。
- シンクロ権については問題がないか?国外曲の有料ライブ配信やアーカイブ保存は必ず許諾を。
僕個人の経験としては3番のシンクロ権が手続きが一番大変です。
アーカイブを残したい場合や有料ライブ配信を行う場合は国外曲は選曲から外すといのも重要な考え方です。
逆に権利的な大丈夫なライブ配信の選曲方法として書くと、
- YouTubeなどのJASRACと包括契約を結んでいる配信サービスを使う
- JASRACの管理楽曲かパブリックドメインの楽曲を選曲する。
- アーカイブは残さないようにする
- もしアーカイブを残したい場合は
- 国内曲→企業や団体、商品やサービスの宣伝にならない内容
- 国外曲→シンクロ権があるので選曲から外す
という事をやっておけば、まず大丈夫です。
是非しっかりと確認をして、気持ちよく行えるライブ配信を企画してください。
ではまた。
僕が関わる案件でも権利者にそのように言われ収録できなかった誰でも知っている有名曲がありました。