こんにちは、岩崎将史です。
今回はレコーディングからミキシングまでを担当させて頂いたオーケストラCDの紹介です。
レコーディング系ブログ記事は久しぶりになってしまったかもしれません。
オーケストラ録音は毎月のように携わっていますが、中々記事化できるタイミングが無く。
今回の作品はクラシック音楽業界から見ると少し変わった企画です。
どんな企画でどの様に録音したのかを解説します。
バンド「OUTRAGE」のリリース30周年記念アルバム
ハード系のロックバンドとして一斉を風靡し欧州ツアーなども大成功させてバンド「OUTRAGE」。
その「OUTRAGE」が「The Final Day」というヒット作品をリリースしたの30年前の1992年。
そのリリース30周年を記念して新たなCDアルバムが制作されました。
そのアルバムが「RE:prise〜The Final Day 30th Anniversary」です。
ユニバーサル・ミュージックより10月に発売
「RE:prise〜The Final Day 30th Anniversary」は今年の10月にユニバーサル・ミュージックより既に発売されています。
2枚組で、そのうちの1枚が全てオーケストラ演奏のCDとなっています。
その1枚の録音からミキシングまでを全て担当させて頂きました。
なお今回は余談ですが近年の「OUTRAGE」作品のレコーディングは割と僕のスタジオ「フルハウス」を使って頂いています。
代表曲をオーケストラアレンジに
「OUTRAGE」の代表作をオーケストラに編曲にするというユニークな企画でした。
アレンジャーは小塚健二さん。
20以上前にとある仕事でご一緒したことがありまして、久しぶりの再開となりました。
レコーディングは名古屋エリアにて
今回のアルバム制作にあたって制作の裏テーマとして
「名古屋エリアで名古屋エリアの場所とスタッフで作る」
というのがあったらしいです。
録音の相談を請けたときには日程と会場は仮予定で決定していました。
愛知県の多目的ホールにて
会場として選ばれていたのが「知多市勤労文化会館」の「つつじホール」
詳しくは知りませんが、この地域には縁があるようです。
僕はこれまで訪れたことがないので、早速下見に訪れました。
広大な駐車場があるホール。
あたりは港湾、運河も近いとうことで工場関連が多かったです。
リハーサルから録音完了までで3日間
本番の録音は2021年の6月30日から7月2日まで。
3日間に渡り行われました。
オーケストラのアルバム収録としては割と多い日数です。
ただし今回はオーケストラ側がスケジュールなどの都合で一切のリハーサルなし、この3日間で全て完結させるということでした。
そのため1日目は音楽リハーサル (一応録音するけど) という時間割。
さらに2日目はまだ内緒の別件の収録もあり、実質的には1日半というところ。
そう考えると中々にタイトなレコーディングと言えたかもしれません。
レコーディングからミキシングまで
僕が今回担当した業務は次の4つです。
- レコーディング
- ディレクション
- エディティング
- ミキシング
録音の3日間では録音とそのディレクションを担当しました。
録音しながらオーケストラの楽譜にテイク毎の良いところや悪い所を記載し、その場でどのテイクのどの部分を使うかを書き込んでいきます。
収録漏らしがなく、より良いOKテイクが作れるように記録しつつ、レコーディングの時間配分やスムーズかつ合理的な進行に努めます。
オーケストラ録音用の機器たち
今回のレコーディングでホールに持ち込んだ主な機材達を紹介しておきます。
マイク
今回使ったマイク達はいずれもアコースティック楽器録音ではスタンダードな物ばかりです。
メインマイク
メインマイクにはホール録音の定番といえるボールマイクを使いました。
人間の耳で聴いているのと同じような自然な音像感が得られます。
これにROYERのR121を組み合わせました。
B&K4006も欠かせないマイクです。
B&K4006は今はDPAという会社に移っています。
スポットマイク
スポットマイクには楽器の特性に合わせて、小口径と大口径のダイアフラムを使い分けています。
指向性はいずれも単一指向性もしくはワイド単一指向性です。
Strings Section
ストリングスセクションにはDPA4011とDPA4012を、チェロやコントラバスなどの低音楽器にはNEUMAN U87Aiを使いました。
低音楽器もDPAで問題ないのですが、そこまでDPAの本数を所有できていないというのもあります。
Wood Window Section
「SCHOEPS」のマイクを中心に並べました。
ボディにCMC6、カプセルにMK5とMK4の組み合わせが中心です。
Strings Section のDPAと入れ替えても良いのですが、
- セクション毎の数量的な統一感
- 木管管楽器の編曲における位置づけ
などを考えて決めました。
Brass Window Section
オーケストラ録音における金管楽器のスポットマイクは、それほど重要ではありません。
音量の大きな楽器ですので、余程のことがない限りはフェーダーを大きく上げることはないマイクたちになります。
もしもの時に最低限各パートのバランスを整えられる程度に保険で立てています。
そのため所有しているマイク達の中ではどちらかというと使用頻度の低い余り物マイクとも言えるAKGのC414TL2やAudio-TechnicaのAT4050/CM5などにしました。
C414は現在はXLIIというモデルに変わっています。
Percussions
打楽器群のスポットマイクは絶対に必要がないと僕は断言できます。
メインマイクが正しく設置されているのに「パーカッションのマイクを上げたい」というのは、そもそも演奏のバランスや編曲が間違っていると言えます。
ですが今回のようなレコード会社やレーベル案件では「万が一のもしものために」という感じで立てる事を希望されます。
録音されてないより録音されていた方が、安心感は大きく違いますからね。
スモールダイアフラムの
- SHURE SM81
- AKG C414EB
などを配置しました。
Piano
ピアノのスポットマイクは地味に重要です。
無しなら無しで成立しますが、オーケストラアンサンブルにおいてのピアノは中々に生音で最適解を作るのは難しい。
客観的に聴こえるのは指揮者だけですからね。
薄くバランスを調整できる余地を作ってあげます。
いつもDPA4021を使っています。
ステレオキットで60万ほどしましたがちらは既にディスコン。
ただしサウンド的には4011で代用できます。
ピアノ用のアタッチメントはありませんけどね。
PA音響の世界では4099が人気ですが、音は全然違います。
4099も良いマイクですが、そこはやはり値段なりの差があります。
僕はレコーディングでは使わないです。
1年ほど前に仲間達と比較動画を収録したのですが、全く編集できておらず…。
マイクプリアンプ
マイクプリアンプは Millennia の HV-3Dの2台を中心に、32チャンネル分を用意しました。
マイク配置紹介VLOG
今回使ったマイクの配置などはVLOGで紹介しています。
レコーダー
レコーディングセッションには必ず2つのシステムを持っていきます。
万が一にも「録音ができていなかった」というのは許されないので、2つのシステムで常に2重にレコーディングしています。
メインレコーダーはProTools HDXシステムです。
アマチュア、セミプロ向けにProToolsソフトウェアが販売されていますが、HDXは専用のDSPボードなど完全にプロオーディオ向けのシステムになっています。
基本システムを揃えると車両が購入できるくらいの金額だったりします。
これにインターフェースとしてApogeeのSymphony I/O を持っていきました。
今は「mk II」になっていますが、この時はまだ「mk I」でした。
クラシック音楽のレコーディングではメインマイクを基本に複数のスポットマイクを立てます。
コンサートの録音ではいつもメインマイクを基本にスポットマイクは最低限の2本から6本程度までにしています。
今回はレコーディングのみということでレコード会社関係者からの希望もあり全ての楽器にスポットマイクを用意しました。
VLOGでもシステム紹介してます。
オーケストラ録音のマイキング
オーケストラ録音に限りませんが、クラシック音楽の録音では各マイクの時間軸的確に合わせることが重要です。
どのように行っているかを少しVLOGにしています。
僕は2001年頃からこの様な時間軸合わせをマルチマイクレコーディングに取り入れています。
これについてはまた別の機会に、ブログ記事にしたいと考えています。
スタジオ「フルハウス」でのミキシング
ミキシングは当然ながらスタジオフルハウスにて。
ProToolsでミキシングしますが、ManleyのMassive Passive と SLAM! で仕上げ調整をします。
dCSとLAVRY Engineering のコンバーターも重要。
CD「Re:praise」の詳細と「OUTRAGE」の2022年
最後に今回のCDとバンド「OUTRAGE」今後の活動を紹介しておきます。
OUTRAGE – Re:praise は下記から詳細を確認、購入できます。
通常版はコチラ。
Amazon限定版というのもあるようです。
そして2022年の「OUTRAGE」の新たな活動が発表されました。
- 映画「鋼音色の空の彼方へ」の全貌が発表?
- 35周年記念アルバム発売&ライブ開催
などなど。
映画は実は少しご縁があって、足首、いや小指の爪くらいだけ関わる機会がありました。
ライブも行くことになると思いますので、楽しみです。
ということで今回はこの辺で。
ではまた。