ソナーの開発、アップデート終了
僕のクリエイター仲間のSNSタイムラインでは昨夜、この話題で持ちきりでした。
Cakewalk社のDAW「SONAR」が開発、アップデートなどを終了する、とのことです。
DAWとは作曲や編曲に使ったり、録音に使ったりするアプリケーションです。
物書きで言うところのワードやページズみたいなものでしょうか。古い物書きは原稿用紙と鉛筆だと思いますが、それに相当するのが楽譜とピアノとかかな、と。
見た所、音楽&レコーディング関連のアプリケーション開発から完全に撤退するみたいですね。
幸いにも僕は使用していませんでしたが、「さてこれから何に乗り換えようか?」という方は多いかと思います。
このようなDAW系の開発終了などは、昔から頻繁にありまして、僕もこれまで数多くのDAWを使ってきました。
(昔はPCスペックが弱く録音とかはできませんでしたの音楽シーケンサーというジャンルでしたが)
あ、ちなみに、有意義な情報を提供しようとか、啓蒙しようとかそんな大それた事を考えて書いておりません。ただの個人的雑感です。
DAW(シーケンサー)遍歴
ざっと振り返ってみると、
PC言語時代
最初は小学校4年生〜6年生くらい(1982~1985年くらいでしょうか)、MSXと呼ばれる安価なPCを手に入れましてBasic、Z80アセンブラ(マシン語)という言語を使用して作曲を始めたました。音楽アプリ(昔はアプリではなくソフトって言ってましたが)ではなく、自分で直接プログラムを組んで音を出すと言うやり方です。
レコンポーザー時代
中学1~2年生(1986~7年くらい?)に初めて、当時プロも使っているというカモン社の「レコンポーザーPC88」と言うツールを使い始めました。当時NECのPC88/98シリーズというのが国内を席巻しておりまして、PC88は8Bit、PC98の方が16Bitで性能が上なのですが、とっても値段が高い。親に1年越しくらいで頼み込んで、お年玉や誕生日など全て合わせ技で購入した記憶があります。
両親を引き連れて名古屋大須のアメ横ビル(当時は電子機器やパーツのお店がたくさん入っていました)に連れて行き値段交渉。当時はちょうどバブルだったのでしょうか。とにかく大須はいつもすごい人混み、という記憶があります。
思い出して「懐かしいな〜」と検索してみたら、レコンポーザーについてこんなブログ記事を発見。もう営業終了していたのですね。
当時、中学校の職員室初めてPC1台が導入された時代。家からでっかいPC抱えて中学校に登校。舞台でオリジナルのBGMを鳴らしていた記憶があります。ノートPCなんて無い時代ですから、運搬大変だったとはずなんですが、そこだけはさっぱり記憶が欠落しています。
Tool do music 時代
高校に入ると、革命的なPCな発売されました。
NEWのPC-9801N
コレです。
憧れの16Bit機。しかもノートブックで持ち運びできる。バイト(もちろん校則では禁止ですが)に明け暮れて手に入れました。これでいつでもどこでもプログラム組めると。
その時使っていたシーケンスアプリがこれ。
ククワテック社のTool de Muisc (ツールドミュージック)
まだWEBサイトがある。現存なのでしょうか???
MS-DOSで動作している現役PCってもう見たことはないですが、、、
Notator Logic との出会い
高校卒業後は音楽大学の作曲学科へ。音大ってやつはとにかく「古典の世界」PCとか。シーケンスとかは無縁。作曲はとにかく楽譜とピアノの世界でした。これは決して悪く言っているのではなく、僕の現在に物凄く大きなプラスになっています。
ただ当時は、「伝統的な作曲技術」は当然学ぶべきとしつつも、長くやってきたシンセサイザーやシーケンサー、PCなどを使った作曲の事も知りたい。そこで大学OBの現役作曲家を頻繁に尋ねるようになりました。
先輩たちが使っているツールのなかで「これだ」と思ったのが、EMAGIC社の「ノーテーターロジック」。
「楽譜作成アプリ」ノーテーターと「音楽シーケンスアプリ」ロジックが合体したものでした。
完全な楽譜を画面を見ながら作成しなら作曲、シーケンス機能もこれまでのどんなツールよりも細かな機能が付いている。「さすがプロのツールは違う」と感心しました。
当時、業界の先輩方でポップス系の方は、パフォーマーやビジョンというのを使っている方が多かったのですが、これらには今までのアプリとの違いは殆ど感じられず、とにかくノーテーターLOGICの便利さ、出来る事の幅の広さ、深さに驚きました。
MACでしか動かないよ〜
そして、このアプリ(当時はソフトと言ってましたが、、)。僕が持っているPC98Nでは動きません。まだOSがMS-DOSの時代でWindowsが登場する前です。
アップル社のマッキントッシュ(Macintosh)というPCでしか動かない。この当時、マッキントッシュ(以降Mac)は凄いPCでした。初めて触ったのは小6か中1かの1985年頃だと思いますが、操作が全てマウスでできる。アプリをスタートさせるのに「run」とかいちいちコマンドを覚えて手で打たなくて良いのです。当時のマイクロソフトのOS(MS-DOS)は、コマンド入力がメインでした。例えば、ファイルがどこにあるのかを「dir」(ディレクトリの略)などとコマンドで手打ちすると、今でいう「フォルダ」の中身が表示される。そのようなPCの基本動作が全て、マウスとクリックで感覚的にできてしまう。使いやすさは抜群でしたが、手に入れようと思うと当時は50万円〜100万円はするという超極額PCでした。
脱線しますけど、この数年後にマイクロソフトが「Windows」を発表しドヤ顔で「我々は画期的な発明をしました。なんと、全てマウスで操作できて、クリックでアプリが起動し、ダブルクリックてフォルダが開きます!」
作曲家先輩たちと「当時、あれは倒れそうになった(笑)」とよく話のネタになります。
大学生になった1992年には、Macも安いモデルが登場し始め、MacとノーテーターLOGICを手に入れ、作曲のメインで使うようになりました。当時はノーテータLOGICのバージョンが1.7とかで、シリアル番号が100番台だったのを覚えています。日本ではまだ100人しか使ってない超マイナーアプリケーションでした。
マイクロソフトがWindowsを発表し、Macと同じように使いやすくなるとEMAGIC社もWindows版のLOGIC audioを出しました。
(Verion 2からノーテーターが外れて、レーコーディング機能が追加、LOGIC Audioと名前を変えていました。シーケンサーに録音機能が付加されだし、「デジタルワークステーション」DAWと呼ばれていくようになります)
MacよりWindowsの方がハードウェアの導入コストを抑えられるので、僕もWindows98あたりからはWindows版のLOGICに乗り換えました。そして、レコーディングではLOGICよりもNUENDOというアプリが音が良く両方を使い始めました。
アップルによるEMAGIC社の買収とWINDOWS版の開発終了
2年くらいしたら、これですよ。EMAGIC社がアップル社に買収されちゃいました。もちろんWindows版は開発終了。
この時は既に、僕は個人ではなく法人にしていたので、PCをリプレイスするコストはかなりシビアな判断でした。が結果、ほとんど台数をMacへ再変更しました。理由は複合的ですが、シーケンス機能だけに関していうと、「LOGIC以外は著しく生産効率が落ちる」からでした。
録音ではNUENDOを使っていましたので、NUENDOのシーケンス機能(CUBASEと同じ)を真剣に勉強しようと数日スケジュールを確保、何作からトライして見ましたが、1曲あたりの時間コストを考えると、「もう一度MACに戻すべき」というのが当時の僕の結論でした。
総合的にいうと「WINは導入コストは一見安いがトータルシステム構築とランニングコストにそれ以上に費用が掛かる」という経営判断もありました。
現在、使用中のDAW
学生とかに「DAW何が良いですか?」って尋ねられたら、
「なんでも良いじゃない?」
と回答しています。LOGIC推しは特にしません。
色々、渡り歩いた上で現在は、
作曲はLOGIC
録音・ミックスはProTools
マスタリングはセコイア
と日々、3種類のDAWを使い分けています。
それぞれの作業内容に合わせて、やりやすさやクォリティーがちょっとづつ違うからなんですけど、もしどれかが絶版になったら、、、困りますが、どのアプリも一通り全てのことは事はできますし、ちょっと慣れるのに日にちが掛かるとは思いますが、時間がある程度は解決してくれると思いますので、致命傷にはならないかも、と。
何かがなくなったら、新しいアプリを覚えても良いし、最悪は紙とピアノとカセットテープに戻れば良い。さすがにテープはもうないですかね、、、。
「何を使うか」よりも「なんでも良いから毎日作る」「今すぐ始めらることをする」のが大切だと思っています。
曲を作るという意味では、どれかのDAWが終了するということで困ることはないですが、
特定の作業だけにピントが当たるような、専門業社は困るでしょうね。
僕はソナーの特徴を知らないので想像がつきませんが、これだけタイムラインに悲鳴があるということは、重要な意味を持つDAWだったのだと思います。
音楽制作アプリの今後
LOGICやNUENDO、CUBASE、ProToolsなどのように、今回のSONARも何処かに買収されるなどあれば開発継続もあったのかもしれません。これらの有名ツールが、のきなみ買収先を見つけていたという歴史をみると、開発コストと回収が合わない世界なのだと思います。優秀なプログラマーは世界中で引っ張りだこの時代ですし、高額な投資をしてプログラマー集めたら、もっと大きなビジネスにリソースを当てたいでしょうし。
先日、セコイアのバージョンが12から13に上がるということで、輸入代理店の方も「いよいよDSDに対応するかも!」とかなり期待を寄せておりました。結果は、、残念。DSDには対応せずPCMだけでした。
DSDが登場して10年以上経ちます。DSD録音に対応した機器はたくさん出てきました。
ただし、DSDが扱えるアプリケーションの開発は事実上どこも止まっています。近年、音楽制作アプリケーションの開発は世界レベルで停滞しているように思います。現行のPCM録音とは比べるもない次元の良い音であるにも関わらず。投資額とリスクに見合ったマーケットの確保が難しいのだと思います。
他のDAWにも言えることだとは思いますが、プロ向けのアプリというのはコンシューマーに比べて数が出ません。いつ開発が止まっても、おかしくないと思っています。
アップルが「やっぱプロ向けLOGIC儲からないので、やめます。これからはガレージバンド1本に絞りますわ〜」って全然あり得ると思います。他のメーカーも同様。
やっぱ紙とピアノ最強かも。
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