こんにちは、岩崎将史です。
購入から10年ほどステレオ・コンプレッサーを売却することにしました。
過去記事「ステレオ・コンプレッサー聴き比べ」でも使った Shadow Hills Industries の「Dual Vandergraph」です。
ヤフオクに出品
Shadow Hills Industries の「Dual Vandergraph」はとても良いコンプです。
それなのにヤフオクに出品しました。
現在の新品販売価格が国内正規代理店「宮地楽器」では40万円オーバー。
税別で42万円。税込みで46万2千円という高級コンプレッサーです。
今回、出品した「Dual Vandergraph」は状態はとても良いものです。
いくらの値段が付くのかは分かりませんが、大切に使っていただけるが購入していただけると嬉しい。
API500シリーズ用のステレオ・コンプレッサー
Shadow Hills Industries の「Dual Vandergraph」はAPI500シリーズ用のステレオ・コンプレッサーです。
API500シリーズというのはレコーディングスタジオ用ミキサーのメーカーAPIが定めたアウトボード用ラックマウント規格です。
マイクプリアンプやEQ、コンプレッサーなどミキサーに必要な様々なモジュールが各社からリリースされています。
「Dual Vandergraph」もShadow Hills Industriesがリリースしているマスタリング用コンプレッサーをイメージさせAPI500ラック用ステレオ・コンプレッサーです。
なぜ「Dual Vandergraph」を売却?
なぜ「Dual Vandergraph」を売却することにしたのか?
このコンプレッサー自体に問題があったからではありません。
売却に至った思考の経緯を自分の考えを整理するためにも書いてみます。
売却するきっかけ
「Dual Vandergraph」を売却するきっかけとしては何といっても「Lavry Engineering AD122-96 mkIII」の故障です。
その件については過去記事があります。
修理するにしろ新規にしろ数十万円から百数十万円という費用が必要。
改めてスタジオ機器について、ビジネスモデルと経営的な判断をしてみることにしました。
クリエイターやエンジニアではなく経営者として
クリエイターやエンジニアというものは、とかく採算を無視して「良いもの」「質の高いもの」を求めてしまいます。
僕自身も経営者としての才能や能力は低く、意識をしないとクリエイターとしての価値観のみで会社を運営してしまっています。
音楽的あるいはサウンド的に質が高いということで、現在の市場の変化にマッチしない機器を多く所有してしまっていたというのが実情。
そんな中でココ1年ほどは、多くのビンデージ・アナログ機器を売却してきました。
オリジナルNEVEのマイクプリアンプを初め、NEVE氏が設計のビンテージマイクプリ、FOCUSRITEのISA115HDも売却しました。
AVALONのEQ AD2055も手放しました。
いずれも売却価格が1台につき40万円や50万円を超える金額で入札をいただきました。
それくらい希少で良質なビンテージ機器たちでした。
現在のニーズに応じたシステムへ変更
こうして手放した機器のお金をどうしているのか?というと、今必要とされている物への変換です。
今、時代はもの凄く変化していて、僕の仕事も大きく変わってきています。
録音スタジオ単体で語ると、音楽作品を作るというのは極限られたアーティストやプロダクションだけになっていくでしょう。
逆に仕事全体で見ると新たに必要とされるシステムが出てきています。
「Lavry Engineering AD122-96 mkIII」の故障
そんな中で故障してしまった「Lavry Engineering AD122-96 mkIII」。
これがないとマスタリング業務に影響がでます。
過去記事でも書いた通り代替えのADコンバーターは持っていますが、流石に世界トップのサウンドからランクを落とすのは厳しい。
マスタリングはあらゆる音楽制作作業の最終工程ですので、ここの品質が落ちるとサウンド全ての質が落ちてしまいます。
録音時に使わない「Dual Vandergraph」
今回「Dual Vandergraph」をなぜ売却候補に上げたのでしょうか?
アナログのコンプレッサーは他にも、
- EMPIRICAL LABS「EL8X DISTRESSOR」
- Avalon「AD2044」
などを所有しています。
これらと「Dual Vandergraph」の違いは録音時に使うかどうかです。
BUS COMPとして最高の「Dual Vandergraph」
EMPIRICAL LABS「EL8X DISTRESSOR」やAvalon「AD2044」はレコーディング時に良く使います。
特にボーカル・ダビングの際には必ずといって良いほど。
一方で「Dual Vandergraph」はマスタリングではなく主にBUS COMPとして使っていいました。
このコンプレッサーはドラムのBUS COMPしては最高です。
アナログ機材なので、多少アバウトな所はあるものの、安価な機器にありがちな通すと音が痩せるみたいな事はありません。
優先順位はミキシングよりマスタリング
素晴らしい「Dual Vandergraph」ですが、今の僕の仕事のスタイルでA/DコンバーターとBUS COMPとを天秤に掛けて考えてみます。
「どちらが優先か?」というのを問うと「マスタリングが優先」という回答が導き出されます。
良いコンプだけど業務としての優先順位でいうとA/Dコンバーターが重要。
ここのランクを落とさないことが、
- サウンド・クォリティーを落とさない
- 作業フローの効率化を落とさない
という観点から重要だと判断しました。
その様な考えの上で、売却してA/Dコンバータの導入費用にするべきと判断しました。
スタジオは決まった資産上限が決まっている
スタジオは保有できる資産というのが会計上、自然に決まってきてしまいます。
年月が進むに連れ少しづつ機材を拡充できそうですが、それを実現するためにはスタジオ運営以外の収益が重要というのが一般的です。
ここでは少し別の話になるので詳しくは書きませんが、簡単にまとめるとスタジオは年間の稼働日数以上に売上を増やすことはできません。
必然的に持てる固定資産の修繕費は決まってきます。
その中でやりくりできる名一杯までしか保有することはできません。
一度購入したら一生壊れずに使える、買い換える必要なしというの物なら持てますけどね。
時代が変わっている中で、対応するために狙っている高額機器が他にもあったりします。
そのためにも「Dual Vandergraph」は今、必要とされている人に使って頂ければ嬉しいです。
最後に思い出も兼ねて撮影した「Dual Vandergraph」の写真たちを。
気合を入れてスタジオ撮影しましたよ。
ということで、今回はこの辺で。
ではまた。