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クラシック音楽のレコーディング【2つの方法】

クラシック2つの録音方法 音楽の学び
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こんにちは、岩崎将史(まさふみ)です。
株式会社フルハウスという会社を経営しながら、楽曲製作やレコーディングなどをしています。
音楽大学でも教えています。

今回は、クラシック音楽のスタジオ・レコーディングでは、

岩崎
岩崎

2つの方法があるも〜

について解説します。

コンサートホールでのレコーディングの場合
クラシック音楽の場合、コンサートホールレコーディングすることも多いです。
その場合はクラシカルスタイルのみでの録音となります。

クラシカル・スタイル と モダン・スタイル

2つの方法それぞれを僕は、

  • クラシカルスタイル
  • モダンスタイル

と読んでいます。

クラシカル、モダンという言い方は一般的ではないと思います。
僕が昔に勉強したアレンジのテキスト(洋書)に、個別のパンチインやオーバーダビングがモダンな制作スタイル(当時は)として登場していたので、僕は分かりやすくそう呼んでいます。

クラシカル・スタイル

同じ部屋で演奏します。

全員が1つの部屋で演奏します。

オーバーヘッドやメインマイクと呼ばれるステレオマイクを基本に、各楽器にスポットマイクを設置してレコーディングします。

クラシック音楽の伝統的なレコーディング方法です。

クラシカルスタイルでのレコーディング例

上図のように一番広い部屋にピアノと声楽の両方が入り演奏します。

実際にこの方法でレコーディングした動画がこちらです。

モダン・スタイル

別の部屋でこんな風に向かい合います

音がアイソレート(遮断)された部屋で楽器ごとに分かれてレコーディングする方法です。
もしくは主要なパートだけアイソレートされた部屋でレコーディングする場合もあります。

大きな部屋にはルームマイクやメインマイクにスポットマイクを設置します。
小さな部屋にはスポットマイクだけ設置するというのが一般的です。

モダンスタイルでのレコーディング例

上図のように歌とピアノを別の部屋で分けています。
演奏するときは防音ガラス越しにお互いにアイコンタクトが可能です。

モダンスタイルでの声楽作品のサウンドサンプルは近日中にアップします。
たくさんありますが、権利者の確認が間に合いませんでした…。

ポピュラー音楽では?

ポピュラーミュージックは、モダンスタイル前提としてレコーディング作品が成り立っていることがほとんどです。

それぞれのメリットとデメリット

クラシカルスタイルもモダンスタイルもどちらもメリットデメリットがあります。

クラシカルスタイルのメリットとデメリット

  • お互いに生音を聴きあい普段通りに演奏できる
  • 楽器ごとの録り直しや編集調整ができない
  • サウンドにほんの少しだけ濁りがでる

メリット

お互いに生音を聴きあい普段通りに演奏できる

何と言っても、いつもの通りの感覚で演奏できることです。
クラシック音楽は相手の奏でる音色の微妙な変化や音量ダイナミクスをお互いに聴き合いながら演奏します。

デメリット

楽器ごとの録り直しや編集調整ができない

メインマイクにもスポットマイクにも全ての楽器の音が入っていますので、楽器ごと個別の録り直しができません
やり直す時は全員一緒です。

全員一緒での繋ぎこみ編集は可能
編集は全体でのつなぎ込みの作業のみになります。
間違えた部分があれば、そこだけやり直すことは可能です。ただし全員一緒に。
また冒頭から30小節目まではテイク1を使い、31小節目からはテイク2を繋げるなどです。

そして、ピッチやリズムの変更編集作業もできません。
ボーカルマイクの録音トラックのピッチを直しても、ピアノのマイクにも薄くボーカルが

岩崎
岩崎

できるけどバレるも〜

サウンドにほんの少しだけ濁りがでる

モダンスタイルでのレコーディングよりもサウンドが少しだけ濁る傾向にはあります。
メインマイクとスポットマイクとの位相差により、高域において正しい周波数特性とはならないからです。
ただし、それが良いとするオーディエンス層もある一定層います。

濁りといっても我々プロは常にベストなマイクポジションを目指すので、実際上は問題ないです。
モダンスタイルと聴き比べた場合にわずかな差がでます。

モダンスタイルのメリットとデメリット

モダンスタイルはレコーディング技術的に多くのメリットがあります。

  • ミスした楽器の一部だけを録音しなおせる
  • リズムやピッチ、ボリュームの変更や調整が自由自在
  • ヘッドホンをつけて演奏しなければならない

メリット

ミスした楽器の一部だけを録音しなおせる

各楽器が別の部屋に別れて音は完全にアイソレート(遮断)されています。
そのためにミスした部分だけをミスした楽器だけでやり直して録音しなおすことが可能です。

例えば声楽曲の場合、

声楽歌手
声楽歌手

ピアノの伴奏はOKだったけど、歌の27小節目の歌詞を間違えちゃった〜

こんな場合は、27小節目前後の歌だけを録音済みのピアノを聴きながら歌い直してもらえればOKです。

リズムやピッチ、ボリュームの変更や調整が自由自在

録音後の編集による調整の自由度が格段に高くなります。

声楽歌手
声楽歌手

16小節目のEが少し低かったんだど〜

岩崎
岩崎

全然OK〜、30秒もあれば治せるも〜

声楽歌手
声楽歌手

最後のフェルマーターがピアノと少しタイミングがずれちゃった〜

岩崎
岩崎

全然OK〜、10秒もあれば治せるも〜

声楽歌手
声楽歌手

ところどころ大きすぎたり小さすぎたりしちゃった〜

岩崎
岩崎

全然OK〜、1音1音づつ全て音量調性できるも〜

というう風に、ほぼ大抵のことはできてしまいます。

デメリット

ヘッドホンをつけて演奏しなければならない

モダンスタイルのデメリットは何と言っても、ヘッドホンをつけて演奏することです。
多くのクラシック演奏家はヘッドホンをつけての音楽のモニタリングや演奏になれていません。

その場合、慣れるために少し多めのリハーサルなどが必要です。
ほとんどプレイヤーは少し慣らして感覚を掴めば、問題なく演奏できるようになります。

予算と時間に余裕があるプロジェクトでは、ヘッドホンをつけてのプリプロダクション(≒仮制作・仮録音)の時間を取るように、僕はおすすめしています。
事前に確認も含めて仮録音をしていくことで、アレンジや演奏、楽器の準備など様々な問題や改善点が分かり、本番のクォリティと効率化に大きく寄与します。

どちらが良いのか?

僕の持論は、
完成時により伝わる。感動を呼ぶ方が正解
です。

どちらが良いかは複合的に判断しなければなりません。

主なポイントとしては、

  1. どのようなサウンドが欲しいか?
  2. 演奏者がヘッドホンに慣れているか?
    慣れていないとモダンスタイルでは良いテイクが録りにくいかも
  3. 練習など準備が十分にできているか?
    出来ていない場合、クラシカルスタイルはほぼ不可能
  4. 個別の編集が必要か?どちらがOKテイクに近道か?
    準備の状態や目指すクォリティと予算によってベストな録音方法は変わる

などがあります。

特に4番は、全体のレコーディングの流れがわかる経験がないと判断が難しいです。
そんな時は僕らに相談してもらえればOKですが、また別の記事でも詳しく書きたいともいます。

今回はクラシック音楽の2つのレコーディング方法についてでした。

ではまた。

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