こんにちは、岩崎将史です。
フルハウスという自分の会社で作編曲やレコーディングの仕事をしています。
僕はライブレコーディングの依頼も頻繁にあります。
ブルーノート名古屋でのライブレコーディングがいくつか続きましたので、参考になればと少し解説します。
佐藤竹善 with The Jazz Creatures Your Christmas Night 2018 ライブレコーディング
少し前の昨年12月のライブですが、佐藤竹善さんの「佐藤竹善 with The Jazz Creatures Your Christmas Night 2018」のライブレコーディング。
佐藤竹善さんはSIng Like Talkingという3人組のユニットのボーカルです。
僕が高校生から大学生の頃に聴いていました。
毎年、クリスマス時期にジャズライブを行なっていまして、名古屋公演でのレコーディングのオーダーを頂きました。
メインシステムと2つのバックアップシステム。合計3つの録音システムで万全の体制
ライブレコーディングに機材トラブルやミスは許されません。
一度切りのステージなので、僕はいつも録音はメインとバックアップの2システムを持ち込みます。
今回は、さらに万全にするためバックアップのレコーディングシステムを2セットにしました。
メインシステムはアナログ分岐してハイエンドなサウンドを実現
メインシステムは、マイクチャンネルスプリッターを持ち込んでをPA回線と完全に分岐。
マイクチャンネルスプリッター
マイクの音声回線を音質を劣化させずにアナログで分岐させる機械です。
フルハウスではたくさん持ってますので、公演内容に合わせて必要な量を持っていきます。
今回は4台分、32ch分を持ち込みました。
格安でのレンタルもしてますので、同業の方は遠慮なくお問い合わせください。
マイクプリアンプはMillennia HV-3D
フルハウスから32ch分のレコーディング専用マイプリアンプを持ち込むことによって、クリアかつスピード感が溢れるサウンドを目指しました。
持ち込んだマイクプリアンプは、マイクプリアンプ新規追加 Millennia HV-3D で書いたミレニアのプリアンプです。
ADコンバーターはAPOGEEのSymphony I/O
マイクプリで増幅した音声信号をデジタルに変換する大事な部分。
今回はアポジー社のシンフォニーI/Oを選択しました。
192I/OよりSymphony I/O の音が好き
2Uの1台で32chの録音ができ、かつProTools標準の192I/Oより断然、音が良いです。
ソフトクリップの設定が絶妙
またソフトクリップの設定が192I/Oより絶妙です。
192I/Oのソフトクリップだと音が変わりすぎて、使えないと判断することが多いですが、Symphony I/Oはアリな変わり方です。
ライブ録音では安心して使えます。
ヘッドフォンアンプが2個も付いている
ヘッドフォンアンプ搭載でコネクタが本体に2個あります。
ライブレコーディングはチーフとアシスタントの2名のコンビで行うことが多いので、2台あるとヘッドフォンアンプを別に用意しなくて良いのです。
録音はProTools HDX
レコーダーはProTools HDXを持ち込みました。
ハイサンプリングレートでの安定した録音をしたいからです。
ただし、192Khzでのレコーディングは万が一のクロックアウトが怖いので、96Khを選択しました。
デジタルレコーディングの要。高品質のクリーン電源とワードクロック
レコーディングではクリーンな電源が重要なので、専用のクリーン電源サプライを持ち込みました。
そしてワードクロックジェネレーターも。
フルハウスでは、スタジオ用とライブレコーディング用に2台、Antelope OCXを導入しています。
バックアップの2台はDanteとCubaseで低コストを実現
バックアップのレコーディングシステムはメインとは大幅にテーマを変えました。
プロ用ととしては十分な通常のサウンドで、低コストと安定性が期待できるシステムにしました。
用意したのは、Cubaseの入ったNote PCを2台。
これだけです。
Danteは超便利で低コスト
ブルーノート名古屋はモニターハウスにYAMAHAのCLとRIOというPA用デジタルミキサーのシステムが導入されています。
RIOにはDanteという規格のLANコネクタ(Ethernet) が付いていまして、LANケーブルでNote PCと接続するだけ。
さらにRIOにはプライマリーとセカンダリーと2つのLANポートがありますので、2台つないでバックアップを2台にしました。
メインシステムの機材が、購入金額ベースで800万円ほどなのに対して、Danteでのバックアップしすてむは20万円も掛からないくらい。
経営者目線でいうと、この金額の差はものすごく大きいです。
便利で安価だけと音質面では、融通が効かない
便利で安価ですが、当然デメリットもあります。
PAのマイク回線と同じ音でレコーディングされる
マイクやプリアンプ、ADコンバーターというレコーディングのサウンドクォリティの重要な部分が全てPAと同じ音になります。
レコーディングで欲しいマイクの音やポジション、プリアンプのクォリティとPAは違いまして、そこが音屋の腕の見せ所なのですが、何もできません。
PAさんのプランに全て乗っかるだけです。
サンプリングレートが48Kになる
メインシステムは96Khzや192Khzなどのハイレゾリューションで高音質に録音できます。
バックアップのDante + Cubaseでは48Khzが固定になります。
これはYAMAHAのPA用デジタルミキサーが安定性を優先して48Khzを採用しているからです。
普段からスタジオで192Kh、96Kh、48Khの音質の違いを毎日体感している僕としては、96K以上で録音したいです。
が、完全にメインと同じシステムをもう1セット持ち込むと費用がバカ高くなりすぎます。
バックアップはあくまで保険。
しかも過去20年間の歴史で、メインシステムが止まったことは過去に1度だけでした。
それも10秒ほどの僅かな時間だけ。
レコード会社のディレクターとも相談して今回は、バックアップはこのシステムにしました。
レコーディング専用の追加のマイクが重要
レコーディング用に追加のマイクもいくつか持ち込んでいます。
ブルーノート名古屋でのライブレコーディングの時に僕は、
- ピアノ用のマイク
- ベース用のマイク
- オーディエンスマイク
の3つは必ず用意します。
ジャズのピアノトリオはピアノのサウンドが重要。DPA2011を選択
ジャズのピアノトリオはピアノのサウンドがとても重要です。
PA用のマイクの音も録音しますが、CD化を想定すると違うマイクで違うポジションでの音が欲しいのです。
今回はDPA2011というマイクを立てました。
何の加工もしなくてもパーフェクトなピアノサウンドが録音できます。
そしてマグネットでピアノの本体に固定できマイクスタンドも必要ないので、舞台上でも邪魔にならないです。
ベース用にはDPA4099B。動いても安心なウッドベース専用のマイク
ベース用にはDPA4099Bを用意しました。
ベースに取り付けるタイプのマイクですので、ライブなどの楽器を頻繁に動かすシチュエーションでも、ベースの音がマイクの集音範囲から漏れることがなくなります。
オーディエンスマイクはB&K4099。お客さんの歓声をリアルに
PA音響ではオーディエンスマイクといってお客さんの歓声や拍手を集音することはありません。
スピーカーからわざわざ、その音を出す必要がないからです。
CD化するのであれば、絶対に必要です。
拍手や歓声のないライブ録音…。
全く臨場感がなくて詰まらないです。
B&K4006で臨場感たっぷりにレコーディングできます。
4006の良さについては、エメラルドホールでの声楽レコーディング でも書きました。
このマイクを2本天井から吊るしました。
素晴らしいミュージシャンたちで、録音も順調に完了
バックのバンドメンバーが素晴らしかったです。
ピアニスト宮本貴奈さんが弾かれていたローズがめちゃくちゃ良い音でした。
持ち込んだローディーさんが日本で一番良いやつです、と自慢してました。
ドラムの江藤良人さん、ベースの井上陽介さんは、以前にもレコーディングの仕事で何回かご一緒していました。
江藤さんはオーディオにもすごく造形が深いです。
一昨年、僕が使わなくなったTASCAMのオープンリールデッキの引き取り手をフェイスブックで募ったところ、欲しいということでスタジオにお寄り頂き持っていかれました。
まさか2ndステージの最後に、竹善さんより振られ1節歌わされることになるとは…。
明日は、また別の某大型ライブハウスのでレコーディングオーダーが入っています。
今からプランしつつ機器の準備、チェックを進めていきます。
では、また。
2019年もオーダー頂きました。
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