岩崎将史です。
知り合いのミュージシャンからこんな相談がありました。
自分で簡易ライブ配信するために、ドラムのマイクを揃えたいのです。
何かオススメありますか?
ということで、解説します。
ドラムのマイキングの基本
オススメのマイクを紹介する前に、少しだけ簡単にドラムのマイキングの基本について解説します。
道具も大事ですが、より大切なのは道具の使い方。
たとえ良い道具を手に入れても間違った使い方をしていては、良さを発揮できないどころか、せっかくの道具が悪い方向に働いてしまいます。
オーバーヘッドが基本
ドラムのマイキングはまずオーバーヘッドと呼ばれるマイクを軸に考えるのが良いです。
こんな感じでドラムを上からねらうのでオーバーヘッドと呼びます。
基本はこのマイクでドラム全体を集音します。
正しくドラムがセッティングされ、演奏者が適切なバランスで各パーカッションを鳴らしてくれれば、もうこのマイクだけで80%のクォリティの音で配信できます。
モノラルかステレオか
オーバーヘッドマイクにはいくつかの選択肢があります。
- モノラル … マイク1本
- ステレオ … マイク2本以上
モノラルとステレオの違いがわからない人はコチラの記事を読んでください。
個人的にはドラムのオーバーヘッドはステレオがオススメです。
その方が他の楽器との定位の調整が楽で、オーディエンスも聴きやすくなりやすいです。
ステレオには2本のマイクが必要
オーバーヘッドをステレオで集音するためには2本のマイクが必要です。
左右で異なるマイクを使うと音像が崩れてしますので、かならず同じ型番のマイクを使いましょう。
3本のマイクを使う場合も
ステレオのオーバーヘッドでセンターのパンチ感が弱いと感じるときなどは、中央にもマイクを用意して3本のオーバーヘッドを用意する場合もあります。
ですが、個人レベルのライブ配信程度ではそこまでのマイクの本数は必要ないと思います。
足りないパーツを足す
オーバーヘッドの準備ができたら、ドラムの演奏をしてみて音を少し聴いてみてください。
その時に、少し弱い、物足りないと感じた楽器に個別にマイクを建てて補強します。
殆どの場合において、
- バスドラム (キック)
- スネア
- タム
といった順番で物足りなさを感じることが多いと思います。
感じなければ無理に補強マイクを足す必要はありません。
補強マイクの足し方を説明しますが、タムやそれ以降の補強についてはマイクの必要な数量や技術難易度が突然上がってしまうので、今回はバスドラムとスネアドラムまでにします。
バスドラムのマイクを補強
バスドラムはこの様にマイクを設置します。
プロの世界では設置方法は応用編的に無数にあります。
ただし最初は基本の方法だけで問題ありません。
全てこの様にしてみてください。
スネアドラムのマイクを補強
次にスネアドラムの補強です。
この様な感じで補強されるのが一般的です。
マイクの位置はいくつかの選択肢があります。
音を聴きながら、欲しい質感とバランスになる所に設置してみてください。
オススメのマイク
オススメのマイクを紹介していきます。
今回の趣旨は「ミュージシャン自らができるだけ安価に簡易に、良いサウンド・クォリティでライブ配信ができるようにする」という趣旨でチョイスします。
マイクの選択肢は驚くほど沢山ありますが、安価なものでの定番を中心に紹介していきます。
オーバーヘッド用
AKG C451
オーバーヘッドの定番は何と言ってもAKGのC451です。
安価で頑丈、そして何よりも細くて軽い。
大きくて重たいマイクをオーバーヘッドに使用するには、マイクスタンドにもそれなりの重量や強度が必要になってきます。
初心者には圧倒的に使いやすく、かつコンデンサーマイクということでオーバーヘッドには向いています。
ハイハットやライドなどのシンバル系にも定番ですので、もし将来的により良いオーバーヘッドマイクを購入しても、他の補強マイクとしても活躍できます。
カチッとした硬めのサウンド
指向性も強く近接マイクとの仕様に向いています。
カチッとした明るめの硬めのサウンドですので、シンバル系に向いています。
その分、アコースティック楽器などで空間全体を集音するような集音には向きません。
ステレオペアのセットもある
ドラムのオーバーヘッドはステレオで集音されることが多いです。
そのためC451Bをステレオ・ペアにした、キットも販売されています。
2本のマイクの、より特性の揃ったものをペアとして販売しているという謳い文句です。
ただし個人的には、僕はC451にそこまでのシビアな特性の違いは求めなくて良いという意見です。
金額も割高になりますし。
ステレオペアのキットはより高級なマイクを購入するときに考えれば良いと思います。
SHURE SM81
AKG C451 よりも少し大きくて重たいですが、SHUREのSM81も良く使われるマイクです。
こちらもC451同様に将来的にはシンバル系などのサブマイクに回す事ができます。
C451より少し高価な分、より自然な音で集音できます。
DPA4011
安価な物だけを紹介と言っておきながら、ガチプロ向けのマイクを1つだけ…。
予算に余裕のある人はDPA4011がオススメです。
理由としてはやはりサウンドクォリティが数段階上なのに、細くて軽いのでオーバーヘッド向き。
さらにはジャズやポピュラーだけでなくクラシック録音でも定番のマイクで、集音できない楽器はないと言えるほどオールマイティに使えるマイクです。
そういう意味で購入価格は少し高価ですが、最終的なコストパフォーマンスは高くなる可能性があります。
僕は殆どの場合において、レコーディングやコンサートなどでDPAのマイクを数本以上は持っていきます。
バスドラム用
バスドラム用のマイクとしては、次の2つをオススメしておきます。
audio-technica 「ATM25」
僕が最も良く使用するバスドラム用マイクです。
安くて頑丈、そしてアタック感がきちんと取れます。
低音が足りないと感じる録音家もいるようですが、それはおそらく他の要因が整っていないからです。
適切にチューニングされた楽器に良い部屋、良いマイクプリアンプなどがあれば、十分に集音できあmす。
僕はロック系などのミックスでもむしろ低音を少しカットすることがあるくらいです。
SHURE
SHUREのキック(バスドラム)用マイクです。
こちらも安価で頑丈。
サウンドはATM25より少し丸い感じがします。
ダイヤフラムが大きいのでより低域が集音できると言われています。
その分、高域のダンピングは若干不利になりますので、オーディオテクニカ「ATM25」よりもアタック感にはまける傾向があります。
あえて言うなら、
- ATM25 … ロック・ポップス向き
- BETA52 … ジャズ向き
というイメージでしょうか。
実際にはどちらもどっちにも使えますし使います。
スネアドラム用
スネアドラム用のマイクとしての大定番は何といってもSHUREのSM57です。
SHURE SM57
頑丈、安い、音が良い、そしてスネアのために作られたのか?というような他のマイクとは違う何とも言えない絶妙な音のバランスです。
AUDIX「i5」
最近ではAUDIXの「i5」を僕は良く使っています。
現代的な明るく抜ける音で集音できますので、SM57よりも少しクリアにカチッとしたスネアサウンドが欲しいという人にオススメです。
複数マイクの音声を混ぜる方法
複数のマイクの音を混ぜてライブ配信などにリアルタイムで載せるためには、2つのポイントがあります。
- オーディオ・ミキサーが必須
- 位相合わせが重要
オーディオ・ミキサーが必須
オーディオ・ミキサーが必須ですが、
ドラムのマイクを揃えたい!
という欲求が出ている時点でミキサーについては承知していると思いますので、省きます。
位相合わせが大切よ
複数のマイクを使用する際に重要なのが「位相合わせ」です。
マイクの位相を適切に合わせるか合わせないかで、サウンドクォリティは別物になります。
ただし、ここの技術や手法は奥が深くかなり専門的になってしまいますので、詳細には語りません。
興味のある人は、この辺りから読んで見てください。
深い話ではなく、簡単な最低限やるべき事としての位相合わせの方法を書きます。
フェイズリバースのスイッチを切り替える
演奏音を聴きながらミキサーの「フェイズリバース」スイッチをON/OFFしてみてください。
こんな様な感じのマークが記載されたスイッチが、多くのミキサーなどで採用されています。
音声信号を逆相にするスイッチです。
「逆相」がわからない人は、こちらの記事を参考にしてみてください。
正しいのはどちらか?
「音が良い」と感じたほうが正解です。
難しいのは「どちらが良いのか?」と何を基準に判断するのか、ですがコレはその時々によって正解は異なるので失敗と試行錯誤を繰り返して体感で身につけてください。
厳密に正しい方法ではない
厳密にいうと各マイクのフェイズのズレはリバースかアンリバースかではなくタイムシフトです。
そのために、上記の方法はあくまで便宜的な回避策でしかありません。
僕は違う方法で調整しますが、音響の世界では数十年に渡り行われている基本的な調整方法ですので、まずはこの方法から始めてみてください。
それ以上にこだわる場合にはプロに依頼を
ココまで簡単にドラムのマイク集音方法の基本について解説してきました。
もしかしたら今回の基本だけでは満足できないシチュエーションが出てくる場合もあるかもしれません。
もしその時は是非サウンドのプロに声をかけて上げてください。
僕ら音のプロは、例えば1,000万円程度の機器を現場に持ち込んでも、数十分の1から100分の1とかの金額で仕事を請けていたりします。
僕のスタジオですら、7,000万円程度の設備コストが掛かっています。
それを1日数万円とかで使えてしまいます。
機器を揃えて技術を取得する時間で音楽やファンに向き合ったほうが良いかも知れません。
僕のスタジオ「フルハウス」でも配信システムと8個のカメラを常設して、レコーディングしながら直ぐにライブ配信も始められるように整えています。
興味のある人は是非、お問い合わせください。
それでは、また。