こんにちは、岩崎将史です。
「モノラル」と「ステレオ」という言葉を僕は日常的に使います。
多くの音楽制作に関わる人たちも一緒だと思いますが、世の中一般的には「モノラル」と「ステレオ」という言葉は当たり前の言葉ではない、と実感させられる事が多いです。
普段から音楽に携わっている人なら誰でも知っていると思ってしまいがちですが、実際には、
- 音楽を学ぶ音大生
- スタジオにレコーディングに来るミュージシャン
などでも「モノラル」や「ステレオ」という言葉が通じない事が多々あります。
そして年々、それは増えているように感じます。
そんな既に死語となりつつある「モノラル」と「ステレオ」。
説明しなければならない機会が多いので、一度ブログにまとめてみます。
理解難易度
チャンネルが「1つ」なのか「2つ」なのか
いきなり結論を書くと、
- モノラルは1チャンネルの音声
- ステレオは右耳用と左耳用の2チャンネルの音声
となります。
チャンネルって何?
分かりやすく解説していきます。
コンテンツを作る時の違い
例えば本を読み上げるAudibleのような音声コンテンツをイメージしてみてください。
朗読する人の声を、
- 1本のマイクで録音したらモノラル
- 左右2本のマイクを個別に録音したらステレオ
音を記録するルートをチャンネルと呼びます。
マスター音源のチャンネルが、
- 1つなら「モノラル」
- 右用、左用の2つなら「ステレオ」
となります。
コンテンツを聴く時の違い
同時に聴く時の違いも重要です。
- モノラル = 1チャンネルのソースを1つのスピーカーで再生させる。
- ステレオ = 左右2チャンネルのソースを2つスピーカーでそれぞれ個別に再生させる。
というのがモノラルとステレオの違いになります。
両方が実現されて「ステレオ」を体感できる
「作るとき」と「聴くとき」のどちらかが「モノラル」だと、リスナーは「モノラル」として感じることになります。
スピーカーが2つあったとしても、両方が同じ音で再生されます。
その場合、聴く人は中央から音が出ているように感じます。
「モノラル」とは?
「モノラル」と「ステレオ」をさらに詳しくみていきます。
まずは「モノラル」について。
1つ以上のスピーカーがあれば聴ける
「モノラル音声」のコンテンツは、音源ソースのチャンネルが1つです。
そのため、再生時には1つ以上のスピーカーがあれば聴けます。
現在はスマホのイヤホンなど「2つのスピーカーがあるオーディオ・システム」で聴くのが一般的です。
「2つのスピーカー」があるので再生側は「ステレオ」です。
しかし「モノラル音声」で作られたコンテンツは、こうしたステレオのシステムで再生しても、左右の2つのスピーカーで同じ音がでます。
そのため、リスナーは「ステレオ感」で体験することはできません。
「モノラルを聴いている」と言って良いと思います。
もちろん「真のモノラル」という意味では、再生時の左右のスピーカーのどちらか1つを鳴らなくする必要があります。
昔はモノラル放送が基本
なぜ、皆さんイヤホンなどステレオで聴くのに、「モノラル」のコンテンツを作るの?
現在ではスマホなどの「ステレオを再生できるシステム」を皆さんが持っていますが、ほんの少し前までは、そんな事はなかったのです。
ラジオやテレビはモノラル放送が基本でした。
本当にホンの少し前だモ〜
まさか生まれる前の人がいるかモ〜?
ラジオの場合
上の写真は昔のラジオの写真です。
こんな説明書きがついていました。
ラジオの放送は、昭和3年(1928年)より始められています。
『昔の道具展』より
その後、日本中に放送されるようになって、すぐにニュースを知ることができるようになりました。
このラジオは、香取市立(かとりしりつ)湖東小学校(ことうしょうがっこう)が昭和27年に買ったものです。
このラジオにはスピーカーが1つしかついていません。
放送局の電波もモノラル音声しか送れないシステムでした。
ステレオ放送というのは、1950年代から試験的にな試みがおこなわれていましたが、今のようなFMステレオ放送を全国で当たり前に聴けるようになったのは1980年代なってからです。
僕が小さい頃は、モノラルが主流だったモ〜
テレビの場合
大昔のテレビの画像
テレビも最初にステレオ放送が始まったのは1978年。
ステレオ放送の番組は珍しく「音が良い」というのが売りになるので、番組中に何度も、
ステレオ放送です。
というテロップを番組中にだしていました。
このテロップ表示は1993年まで続いていました。
僕が大学生の時までテロップが出ていたモ〜
それくらい、
この番組はステレオ放送だから音が良いですよ。
是非、ステレオに繋いで聴いてみてね〜。
というアピールだったのです。
ステレオのテレビもあったとは思いますが、今の様に左右のステレオ感を楽しめるコンセプトのテレビは少なかったのです。
僕もわざわざ別のオーディオシステムにTVの音声を出力して、音を再生させて楽しんでいました。
ステレオとは?
ステレオとは、次のいずれか、もしくは両方を挿します。
- 左右の2つのチャンネルの音声ソースを持つコンテンツ
- 2つ以上のスピーカーで左右のそれぞれの音声ソースを再生
図にするとこんな感じです。
現在ではほとんどの音声を楽しむコンテンツやオーディオ・システムのほとんどはステレオを基本として作られています。
人間の耳は2つ
なぜステレオが基本なのか?と言うと、人間の耳は2つだからです。
右と左の音を聴き分けて、方向や距離などを立体的に捉えます。
そのため右用、左用の音声を別々に録音して、それぞれのスピーカーで再生させれば臨場感たっぷりのリアルな音声を味わえます。
そのため音声の記録には2本のマイクを使い、その場所で聴こえるのと同じ状態を実現するべく、様々なマイキングが開発されてきました。
右用、左用の2つのマイクを使うステレオ・マイキングの手法を、この記事で解説しています。
2つ以上のスピーカーがあれば聴ける
ステレオ放送は2つ以上のスピーカーがあるシステムで聴くことができます。
現代では多くの人がスマホのイヤホンなどで音楽を聴くことが最も多いでしょう。
右と左にそれぞれスピーカーがありますので、ステレオです。
誤解されている事の多いステレオ
近年は「ステレオ」というと、多くの人がコレを思い浮かべる人も多いです。
こういったコンポーネント型のオーディオ・システムが普及していった当時は、スピーカーが1つのラジオやテレビなどが一般的。
ステレオで聴けるということで、「ステレオ・コンポ」よ呼ばれやがて「ステレオ」と呼ばれるようになりました。
同じことが車のオーディオでも言えます。
「カーステ」という言葉が1番メジャーかと思いますが、スピーカーが4つ以上のサラウンド対応でも「カーステレオ」と呼ばれます。
イヤホンではなくスピーカーのあるオーディオシステムを「ステレオ」と思っている人は、今まで割と多かったモ〜。
現在はほとんどのコンテンツがステレオ
現在は世の中のほとんどの音声を扱ったコンテンツはステレオが一般的です。
逆にモノラルを探すほうが難しいです。
ただしステレオを最終的にユーザーが楽しむには、
- コンテンツがステレオ
- システムがステレオ
この両方がステレオに対応している必要があります。
どちらか1つがモノラルなら、ステレオ感は楽しめない
ステレオで録音されていたとしても、オーディオ再生システムがモノラルでは、コンテンツをステレオ音声として楽しむことはできません。
また、オーディオ再生システムがステレオであったとしても、コンテンツがモノラルであれば、「ステレオ」と言えるのか?というと微妙な所です。
例えばAudibleに代表されるような、本を読み上げてくれるサービス。
これらはマイク1本でモノラル収録されています。
ただし、音声ファイルとしてはステレオで公開されています。
TVやラジオ番組、YouTubeなどでもモノラルで収録し、放送時にステレオとして放送や配信する場合は多くあります。
モノラル音声をステレオとして放送する「モノステ放送」
業界的には「モノステ」と呼ばれていて、「モノラルコンテンツだけどステレオソースとして配信」という意味です。
この場合は、当然ながら左右それぞれのスピーカーで同じ音声が再生されますので、ステレオの広がり感はありません。
まとめ
「モノラル」と「ステレオ」について解説してきました。
最後にマトメです。
では、また。