こんにちは、岩崎将史です。
先日、久しぶりに演歌の歌の録音をしました。
演歌の録音は数ヶ月に1度くらいしかありませんので、フルハウス的には超珍しいです。
今回は編曲から録音まで受けていた音楽屋さんが多忙でスケジュールをこなせなったという事での急遽のヘルプ依頼。
音楽屋さん
歌手だけスタジオへ行くので、納品まであとは全てよろしく〜🎵
という事で、作曲家も編曲家もディレクターも誰も来れないとのこと。
歌手とは面識はありましたが一緒に仕事をするのは今回が初めて。
とても面白いシチュエーションになりました。
効率よく=早く=安く、でも良い物に
ヘルプ仕事を依頼されたときに、まず気にするのは予算です。
元請け音楽屋さんがいくらで請けているのかは分かりませんが、元請けにも利益を残して上げなければ。
その場合、単純に「値下げ=人件費を下げる(家賃などはさがりませんので)」ではなく、極力、無駄な工程、時間を省いてクライアントが求める物に仕上げる必要があります。
今回は出来るだけ効率よく出来るだけ急ぎでやって欲しそうなニュアンスでの話ぶりでしたので、そんな感じで進めました。
カラオケデータを準備
今回はカラオケデータを事前にWAVファイルで送ってもらいました。
録音当日にデータなりCD-Rなりで持ち込んで頂いてもOKですが、事前に送ってもらえればデータに問題がないか、先に確認しておけます。
別作業の合間にでも確認できますので、録音当日の時間短縮になります。
ミックス済みのカラオケファイルをアップロードにて
送って頂く方法は何でも良くて、いつも問い合わせ頂いた際には、アップロード方法をメールで案内しています。
簡単に誰でもブラウザにアップロードできますが、PCやスマホを使えない場合はCD-Rなどで送って頂いています。
ブリックウォールリミッター、トータルリミッターは外す
この段が分からない方は飛ばしてください。
たまに、最終のミックスにトータルリミッターをかけて、波形が潰れた状態でカラオケを送ってくれる人がいます。
DAWで見ると、カラオケの波形がこんな感じになっています。
業界用語では海苔というサウンドエンジニアもいます。
特殊な理由がない限り、仕上がりがよくならないので、外しておいてください。
こんな感じで、波形の上に余白(マージン)が-3~6dBくらい取ってあるのが理想です。
事前に送ってもらえればそのあたりも確認できるので、より安心です。
マイクのセットアップ
ヴォーカルダビングの場合、マイキングは事前に準備していますので、直ぐに録音を始められます。
バンドなどの場合は楽器セットしてマイクセットしてと準備が一番時間かかりますが。
マイク、プリアンプ、コンプレッサー、ADコンバーター
僕がサウンドプロデュースをする案件の場合、いくつかのマイクやその他の接続機器を複数ためして一番、サウンドがマッチする物を選びます。
作品を世に出すからには少しでもサウンド的に良いものを作りたいから。
今回のように元請け音楽屋さんが別の場合は、考え方を180度変えます。
定番の機器で対バンの接続方法で、時間を無題にしない。
フルハウスの場合、それだけでも十分以上のサウンドクォリティになるようにしています。
レコーディング、録音の進め方
レコーディングの進め方は色々あって、内容によってベストな進行方向を選択します。
歌手、オペレート、ディクレション
今回は、3名体制にしました。
- 歌手さん
- ディレクション 僕
- オペレーター フルハウス山田くん
歌手が自らディレクションをするスタイルであれば、エンジニア兼オペレーターの1名と歌手の計2名だけが良い場合もありますし、そのような時は2名体制にします。
初めてフルハウスに来る歌手で、作曲家も編曲家もディレクターも来ないので、このような場合は僕がディレクション中心に回って3名で作業するのが、より早くより安くより良い録音と作品になります。
あともう一つ理由があって、また別の機械に書きます。
「経営の1は最悪の数字」でピンと来る人も多いと思いますが。
テイク1を録音して判断
録音はサウンドチェック、録音レベルチェックが済んだら、まずテイク1を録音します。
一度、最初から最後まで歌っていただきます。
僕は、それを聴きながらどのように進めるかを判断していくのですが、今回は、
一度、テイク1を聴いてみて〜🎵
でした。
とても上手な歌手でしたので、80%以上の部分はOK。
一部、録音し直したいところがありますが、言葉で説明するよりも一度聴けば感じ取れて修正できる歌手だと判断しました。
コントロールルームで一緒に聴き、お互いが気になる部分を確認。
ほぼお互いの意見は一致ということで、何箇所かパンチイン(部分録り)をして録音終了。
編集とミックスダウンとマスタリング
録音後は編集作業をしてミックス作業、マスタリングへと進んで完成となります。
まずは編集作業。コンビ作業が超重要
4~5箇所のピッチ調整をしていきました。
録音時に僕が歌詞カードに「”〇〇”10セント↑」とかメモしてますので、それを山田くんに伝えてProToolsで調整。
もちろん僕がやっても良いのですが、こういった作業はコンビ、ペアでやった方が圧倒的に早く良い作品に仕上がります。
音楽はその瞬間を脳の中にキャプチャーする連続だと思うのですが、ProToolsやPCなどの編集機械を触っている間に脳がそのオペレーションにエネルギーを取られて、キャプチャーイメージがボヤけてしまうんですよね。
ピッチの調整には、ProToolsのエラスティックピッチかAntalessのAutotuneを使う事が多いです。
サウンドハウスでみるミックスは僕が作業
編集のオペレートは山田くんにやってもらい、ミックスのオペレートは僕にチェンジ。
どちらがやっても良いのですが、今回は僕がやった方が早いという判断です。
録音時にディレクションをしながら、
サウンド的には、このままEQとコンプなしでOK。
ボリュームだけこう書いて…。
と、何をどうするかはほぼ固まっていたいので、伝えるよりも自分で作業しちゃった方が早いだろうという判断です。
上記の写真の感じで、聴きながらボーカルトラックのボリュームフェーダーを動かしてProToolsに記録させていきます。
1回目は大まかに。
2回目で細かく。
と都合2回ほど聴きながら調整しました。
D-Command のフェーダー、超重要
歌のミックスは特にですが、僕には物理フェーダーがとても重要です。
D-Commadnのフェーダーを使って全音、先ほどの写真用に音量データを書き込んでいきます。
このD-Commandは、PCのマウスやキーボードだけでミックスするよりも、物凄く作業を早くできます。
既にディスコンですが、新モデルが、Sシリーズとして続いてます。
リプレースしたいですが、車1台分の値段ですので、なかなか…。
フェーダーだけで良い人なら、こちらのArtsit シリーズが鉄板ですね。
サウンドハウスでみるマスタリングはミックスと同時に
1曲だけの場合は、マスタリングも同時に行います。
と言っても、カラオケと歌だけですので、特段大きく何か処理をすることはなくて、適切なレベルと周波数レンジに微調整するだけです。
今回もMANLEYのコンビを通してサウンドを仕上げました。
サウンドハウスでみる1時間作業にて納品
ミックスが終わったら、ProToosを再生、Sequoiaに流し込んで作業終了。
音楽屋さん
完成したらなる早で直接納品しておいて〜
と言われておりましたので、そのままクラウドへアップロードして、クライアントさんへメールでご連絡。
以上でタスク完了となりました。
録音から納品までの所用時間は、こんな感じでした。
Keynoteの表を貼ってみたので上手く見られますでしょうか?
小さくて見にくい人は下の「最大化ボタン」を押せば見やすいと思います。
1時間を10分超えてしまいましたが、1時間作業の料金ということにして無事完パケ納品完了しました。
歌手も忙しい方で、この1時間を逃すと1ヶ月以上先のスケジュールしかないということでしたが、録音だけでなく編集仕上げまでギリギリ確認してお帰り頂けました。
リップノイズのない歌手はとてもやり易い
歌手の方が発声がしっかりしていましたので、数カ所のピッチ編集のみというのが作業時間短縮に貢献しました。
発声がしっかり出来ていない人だと、リップノイズとして口を動かしたときにでる「プチ」「クチャ」というノイズを削除する編集作業が必要になります。
完全にリップノイズゼロで歌える必要もはないですが、多い方だと1曲で何十箇所も除去の編集作業をしなければならない場合も。
日々の発声トレーニングは大事ですよ。
という事で、本日はここまで。
では、また。