マイクを使ったステレオ録音【定番の4つ手法】

岩崎将史まさふみです。

2個のマイクロフォンを使った、ステレオ録音のテクニックについての解説します。

【ステレオって何？】モノラルとステレオの違い

ステレオマイクの方式 4つ

ステレオ録音のマイキングには次の4つの方法があります。

それぞれ特徴やメリット、デメリットがあるので解説していきます。
合わせて、それぞれの方式に最適なマイクもお伝えしていきます。

AB ステレオ

最もポピュラーなステレオ録音方式です。

ABステレオの方法

2個のマイクを平行に配置します。

各マイクの指向性は、

が使われます。

「単一指向性カーディオイド」で録音するのが最も一般的かとは思いますが、僕は「無指向性オムニ」でのこの録音方式が大好きです。

ABのマイク間の距離は状況しだいですが、20cm〜60センチ程度までが多いです。

20センチだと人間の耳の距離に近いとされていて、広げるとよりワイドな音像が得られます。

ABステレオ録音のサンプル

ABステレオで録音したサンプルをいくつか紹介します。

シューベルトSchubert「 野ばらHeidenröslein」｜コンクール用録音

ピアノと歌が程よいサウンドで集音できる位置にB&K4006を立てました。

Down by the Salley Garden｜Harp ハープ｜やまばたまい

B&K4006をABステレオで配置して録音しました。

ABステレオにオススメのマイク

無指向性オムニマイクとしては上記動画の録音でも使用したDPA4006が定番です。

単一指向性カーディオイドでは、DPA4011やNEUMANN U87Aiが定番です。

双指向性フィギア エイトでは、ROYER R-121が定番です。

XY ステレオ

XYステレオの方法

XYステレオは単一指向性カーディオイドか双指向性フィギア エイトのマイクを使います。

こんな感じで斜めに配置します。

単一指向性カーディオイドだと図のように前方の音を中心に収録します。
右のマイクで左の音を、左のマイクで右の音を集音します。

2つのマイクの距離をゼロにするのがポイントです。

2つのマイクのダイヤフラムが近接しているため、明確な音像が得られやすいです。
左右の位相差や音の違いが起こりにくいからです。

そのため、プロの録音家でない人がステレオ録音をするには最も安全な方法です。
逆に広がりのあるサウンドは得られにくい傾向があります。

XYステレオにオススメのマイク

XYステレオで使われる単一指向性カーディオイドマイクはDPA4011が定番です。

双指向性フィギア エイトではROYERのSF-12がと言うリボンマイクが90度XYステレオマイクです。
僕も大好きなマイクです。

ポータブルレコーダーとしてはSONYのPCMD-100がXYステレオに対応しています。
マイクが可変式で後述するORTFステレオにもなります。

スマホ録音用として、Zoom iQ6というのがあり、これはXYステレオ方式での録音が可能になります。

もちろんプロ用マイクには大きく負けますが、スマホ内臓マイクで録音するよりも明らかに良いステレオ音像が得られます。

ただし録音するアプリケーションがステレオ録音に対応している必要があります。

ORTF ステレオ

ORTFステレオの方法

2つの単一指向性カーディオイドマイクを開いて録音します。

角度はマイクの指向範囲によるので決まりまはありませんが、110度程度が多いです。

距離は17cm程度で人間の顔の幅、つまり耳で聴いているのと同じように録ると言うのが1つの基準です。

ただし、それもマイク次第ですので、実際に音を聴きながらベストなポジションを定めてください。

センターを補強する場合も

ORTFは単一指向性カーディオイドマイクを使うため、マイクの指向性の広さによっては中央が薄くなる場合があります。

中央の音像やセンターの定位感を補強するために、センターマイクを追加する録音家もいます。

XYステレオにオススメのマイク

XYステレオにはオススメの定番マイクは、DPA4011とNEUMANN U87Aiです。

ポータブルレコーダーとしては、SONYのPCM-D100が、XYステレオにも対応しています。

こんな感じで、マイクを動かして好みのステレオ収録方法を選択できます。

スマホ用マイクとしては、オススメできそうなORTFステレオのマイクは見つけられませんでした。
距離が近くなるので、難しいというのがあると思います。

MS ステレオ

4つ目の最後はMS方式です。

MSステレオの方法

1つのマイクをカーディオイドにしてMSセンターを収録し、残りの1つをフィギュアエイトにしてMSサイドを収録する方法です。

位相差を利用したMSエンコーダーを使うことにより、左右のステレオ感を作り出します。

僕は使わない

正直に書くと、僕はこの方式は絶対に使いません。
サウンドが良くないからです。
理由としてはいくつかありますが、まず正面と裏面が完全に同じ音で拾える双指向性のマイクというのないので、的確なステレオ感を作れないというのが大きいです。

MSステレオのマイク

単一指向性カーディオイドと双指向性フィギア エイトの切り替えができるマイクを2個使うのが一般的です。

NEUMANN U87やAKG C414などが定番です。

スマホ用マイクとしては、ZoomのiQ7というのがあります。

ステレオマイクのマトメ

4つのステレオマイクの方式について解説してきました。

これらのどれかの方法であれば、場所や音楽に合った適切なステレオ音像を見つけられるはずです。

そしてステレオのマイキングは方式だけでなく、場所や楽器との距離感も重要です。

その辺りは、こちらの記事にも書いていますので、読んでみでください。

では、また。