我々は極限の戦闘状態に入った。
いや、正確に言うと極限の不戦闘状態と言うのが正しいかもしれない。
70年前に南洋の各諸島で、本国からの物資供給が途絶え、戦闘不能に陥り餓死と疫病でほとんどの戦力を失った祖先の記憶が規模が大きく違うといえど脳裏をよぎる。
我々は過去数十年間、来る日も来る日も訪れる敵を倒してきた。
固定費と呼ばれるやつらは、毎月の様に湧いてきては、我々の物資を強奪していく。
そんな敵たちと戦うために、これまでは各地域のチームがそれぞれ独自に連携して戦ってきた。
現地で物資を調達しながら、時にはお互いに物資や戦力を融通しあってきた。
また敵を別の地域に誘導し、敵を分散させながら各個撃破されないよう、戦いを続けてきたこともある。
犠牲を出しながらもなんとか戦線を維持しることができた。
だが、今回の新たな敵は、そんな我々の実力を根本から覆した。
そんな新たな敵に対応するために参謀本部から次のような通達が。
「今後は物資の大規模な現地調達と各部所との物理的な交流を禁ず」
なんと…どういうことだ。
敵は毎月のように襲ってくる。
そんな敵を倒すために我々が数十年掛けて構築した物資獲得スキームを使うなというのだ。
どもそのスキームを使うことによって、敵に大きな利益を与えてしまうらしい。
なんということだ。
司令部の指示であるならば仕方がない。
今はじっと耐えて塹壕のなかで中でできることを考えてやろう。
しばらくは各部所毎の交流を断ち、次の月末に襲ってくる敵とどう戦うかを考えるしかない。
心配なのは戦闘を継続するための物資の残存量だ。
他の部所は大丈夫だろうか?
司令部が公表しているネットワークにアクセスをすると、世界的な一流企業、、違う、、大きな部所でも3ヶ月分だと読み取れる。
大きな舞台は広大な平野を担当しているため、対する敵戦力も多く、そのために抱える人員も多い。
ひたすらに物資を消費するだけの状態に陥ってしまっては長くは持たないだろう。
小さな部隊も、地域によっては1~2ヶ月の備蓄もないところは多いだろう。
かつて聞いた話では、小さな部隊が展開している市場、(間違えた…)そういった地域は、地形が複雑で大規模な戦闘を行うことができない。
物資の運搬には不向きだが、幸いにも山野に動物や自生している食料も多く、現地での調達が日々可能であった。
毎日の様に客…(また間違えた)食料物資が少しながら日々獲得できていたからだ。
今回の作戦指示の重大さはこうした現地での物資調達活動も禁止されてしまったのである。
この戦い方がいつまで続くのかは分からない。
最初は2週間と聞いていたが、その後2週間の延長指示が来た。
そして、今回新たに4週間の作戦延長の指示が来たが、そろそろ備蓄物資が底がつく仲間も出始めるだろう。
我々も同様だ。
当初、司令部は現地での物資調達や融通が出来ない分、緊急に当面の物資を貸与するといっていた。
通常の作戦活動に戻ったら貸与した物資を現地調達から少しづつ返済してくれれば良いという。
中々大変なことではあるが、この戦線を維持しなければ死あるのみだ。
やるしかない。
だが、その物資はまだ来ない。
どうやら全ての部所から様々な物資に対する要望が殺到していて、司令部管轄の物資管理部所は混乱しているようだ。
そのため別の部所に審査と運用を依頼するようにしたそうだが、これが我々にはやっかいな存在だ。
やつらは何かと理由をつけては物資の支給を渋るプロフェッショナルだ。
過去の戦でどう考えても勝利間違い無しの作戦にすらケチを付けて後方支援を怠った歴史がある。
その時、現場は皆が獅子奮迅の活躍をして見事に大勝利をおさめた。
この様子では司令部からの支援物資は当面期待できない。
相当な時間がかかるだろう。
そんな中、
「とにかく一律に早く、送れる所からどんどん物資を送るべきだ」
という意見が参謀本部の若手から出たらしい。
昨日は参謀本部で4時間に及ぶ会議が会議が行われたようだ。
結論は継続審議。
戦いが始まって既に2ヶ月目。
1ヶ月目のなんとか敵をギリギリの戦力で打ち破った。
2ヶ月目はどうなるか分からない。
他の部隊では敵を混乱状態にさせて時間を稼いでいるだけの部所もある。
後日、応援の物資が届いたらまとめて倒す作戦だろう。
それまでは兵力の温存を優先させているに違いない。
それまでは負けない戦いを続けることにしているようだ。
まだしばらく参謀本部での議論は続くらしい。
一律に速やかに物資を運ぶべきか、少しでも各部所毎に適正な量を集計してそれから発送するべきか。
その後、予算の申請をして承認の手続きを得るとのことで、まだまだ相当の時間がかかるだろう。
いつ頃になりそうなののか?
それが分かれば、そこまで戦線を維持するための作戦を個々の部隊は考えるだろう。
もしくは戦線維持は無理と見切りをつけて撤退の判断をするか。
多くの部隊が見切りをつけると、いっきに不動産価格が暴落し金融に影響…、あ、いや、戦線が崩壊し新たな敵がより内部で暴れだすという事態にもなりかねない…
いずれにせよ、いましばらくは、現地調達を封じられたこの状態で、備蓄物資を損耗しながら耐える日々が続きそうだ。
これは誰かや何かを批判するために書いたわけではないです。
多分、多くの人がこんな状態なんだろうなと思います。
ポイントは1ヶ月後に少しづつもとに戻せるのか、1~2年の単位でこの状態が来たり和らいだりが続くのか。
各種の情報を総合するとおそらく後者のような気がします。
そうすると、今やらなければならないことが山のように出てきます。
ではまた。