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レコード会社との契約と役割分担

レコード会社との契約と役割分担 アイキャッチ 音楽の学び
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岩崎将史まさふみです。

2000年以降は音楽レコード作品を世に発表する、販売するのに大きくハードルが下がった自体です。

音楽レコード作品とは、レコード、CD、音楽ストリーミング配信などあらゆる音楽録音芸術作品の事を指しています。

大手レコード会社と契約をしなくても、自主制作やインディーズ作品として発表、発売をすることが可能になりました。

その様な時代でも「メジャーデビューをしたい」という声は色々な所で聞きます。

「メジャーデビュー」というと一般的にはメジャーレコード会社と専属実演家契約をしてレコード作品を発表・発売することを指します。

何を持ってメジャーレコード会社というのかは人により見解が分かれるところだとは思いますが、レコード会社と契約をして作品を売っていくというのは、メリットもあればそれなりにデメリットもあります。

そこで音楽アーティストは当然に知っておくべき背景を解説したいと思います。

売れるタレントと契約をしたい

レコード会社からすると当然ながら「CDを発売したらある程度売れる、計算の立つアーティスト」を相手にしたいわけです。

そうしたアーティストの特徴としては現代では、

  • 要件を満たす数量のファンが既にいる
  • 少しプロモーションをしたら相当に話題になる要素を持っている

などの要素が考えられます。

これらの要素は売る側の価値観と戦略次第ですので絶対というものはありません。

20世紀後半のレコード産業が盛り上がっていた時代の人には「原石」を見つけ出して2~3年掛けて磨くなどという話も聞いた事がありますが、現代ではライブハウスでの安定した動員やSNSフォロワーでの盛り上がりなど、それなりに短期間で結果の出せそうな下地を求める事が多いように見えます。

要件を満たす数量のファンが既にいる

とあるプロデューサーは「面白そうなアーティストいたら教えて下さい」と言いつつ「ただしTwitterのフォロワー数が5千人以下の人はやめてね」などと話しています。

どの様に運営しマネタイズしていくのかによって、最低ラインの数字は変わって来るかと思いますので一概に全てに当てはまる訳ではありません。

ひとつの見方、見られ方としてそういった物があるという感じです。

少しプロモーションをしたら相当に話題になる要素を持っている

「少しプロモーションをしたら相当に話題になる要素を持っている」というのも重要な要素かもしれません。

それは具体的に何か?という定まった物は当然ながらありません。

絶対的な法則があった時点で、珍しさも話題性もないのですし、法則通りに運営すれば全員が成功できることになってしまいます。

音楽やエンタメに限らずどんなビジネスでもその様なことはありません。

あえて言語化するとしたら「日本に数人。数百万人に1人のレベルの何か」という感じかも知れませんしそうでないかも知れません。

ビジネスには普遍的な正解というのはないので、当事者同士がどの様に考えるか次第です。

様々な要素を掛け算で組み合わせる

とはいえ「売れる」要素というのは単独の要件では難しい場合が多く、複数の才能を組み合わせた掛け算で生み出される事が多いです。

例として業界で古くから言われるのが「〇〇なのに〇〇」というコピーです。

一例としては、

  • 小学生なのに歌が上手い
  • イケメン(美人)なのに踊りがすごい
  • 目が見えないのに楽器が上手い
  • 耳が聴こえないのに良い曲を作る

身体的特徴を取り上げると、ある種の批判を受けそうなので書くことに少々のリスクを感じますが、もっとも分かりやすく「〇〇なのに〇〇」を極端に表す実例であることは間違いありません。

過去の歴史を遡っても意図的であったかは別にして、結果としてもその様な背景を持った成功例は多く、人々の関心や注目を浴びやすいものです。

世界で初めて市民をターゲットにしたベートーヴェン

ベートーヴェンは、それまでの「音楽は貴族階級を相手にビジネスをする物」という状況を打ち破り、出版社を通じて広く一般大衆をターゲットにするという代表例として語られています。

ベートーヴェンの葬儀には2万人の参列者が集まっという程に一般市民の注目を浴びていたわけです。

能力や楽曲は大変素晴らしい物で、そこは疑いようが無いです。

ただし「難聴」という音楽家には大きくハンデになる部分があるにも関わらず素晴らしい曲を生み出す状況が、宣伝プロモーションに利用されたかどうかは分かりません。

ただし一般市民においてのインパクトはより強かっただろうと考えるのが自然で、注目や与える印象に何のプラスにも働かなかったかというのは考えにくいです。

誤解の無いように補足をすると「だから売れた」と言いたいわけではありません。
稀有な能力とはいえ、出版宣伝サイドからすると「全くその事を顧客に伝えない」ということはなかったはずです。

9歳でデビューした天才少女歌手・美空ひばり

美空ひばりさんは天才的な歌唱力をもって9歳でデビューしました。

オーケストラ・バンドと同じスタジオ無いので1マイクでのデイレクトカッティングで一発OKという現代の歌手が聞いたら震え上がる実力だったわけですが、それでも「9歳である」ということが興行宣伝的に何も効果を生み出さなかったとは誰も言えないと思います。

当時の芸能事務所と地域興行の関係性についてはコチラの記事で書きましたが、

地方興行の宣伝チラシや新聞広告に「天才女性歌手〇〇 (30歳)」とか書いてあるよりも「11歳の天才少女歌手」と書かれている方が、市民へのインパクトはより大きかったはずで、それは否定できないかと思います。

技術力が高ければ買われる訳ではない

レコード会社からすると絶対とは言えませんが、上記のような視点での何かしらの要素というのは当然ながら検討の重要な材料になります。

良くも悪くも世のマーケットは「高度な作品性の曲」や「上手な演奏」を求めている訳ではありません。

多くの人にとっては少なくとも技術が水準以上であれば、あとは本人の人生や状況、楽しみ方にどれだけマッチしているかという事の方が重要でしょう。

レコード会社との契約とは

国内の多くのレコード会社は「家電オーディオ機器のメーカー」の子会社として設立されました。

目的は「国内市場向けのコンテンツ・ソフトウェアを拡充してオーディオ機器のマーケットを開拓するため」です。

これについてはコチラの記事で解説しています。

ソフトウェアを充実さハードウェアと共にブランディンして音楽レコードのマーケットを創出しシェアを取るという使命の元に特に昭和の戦後において、ぞくぞくと東芝だのソニーだのが参入してきました。

子会社を設立した、本社から社員や技術者を出向させてレコード会社の立ち上げと運営に当たらせます。

外資と提携して海外のコンテンツだけでなく製作や販売などのノウハウも取り入れていきました。

その様な中で経営、企画、運営として働く役員や社員は出向していく社員で賄ったとしても、当たり前ですが音楽を作ったり演奏したりすることを社員自らが行う訳ではありません。

実際にその時点で音楽活動でそれなりの評価を集めているアーティスト、タレントに声を掛けてレコード商品化を持ちかける事になる訳です。

専門技術と設備が必要な時代

レコード会社はこうした「売れる(と予測される)タレント(≒事務所)」にアプローチをします。

音楽を録音してレコードとして発売するには、当時は高度な技術と設備が必要でした。

演奏者はレコード会社と契約をしなければ、事実上レコード作品を発売は不可能でした。

レコード会社から声を掛けられるかどうか?というのが一つの目標になっていった時代でした。

今では専門的な設備や技術がなくても、誰でも簡単に音楽を録音して販売したり安価にCDにすることができます。音の良し悪しや売れるコンテンツとなり得るかどうかは別にして。

専属実演家契約

そうしてレコード化の話を持ちかけられた音楽アーティストはレコード会社と契約をしてレコード作品を発表・発売していくことになります。

この音楽アーティストとレコード会社とが結ぶ契約を専属実演家契約と呼びます。

実際にはレコード会社が直接音楽アーティスト個人と2者で契約をすることは珍しく音楽アーティストが所属するマネージメント事務所との3者契約という場合が多いです。
ココでは分かりやすく音楽アーティストサイド(本人&マネージメント事務所)とレコード会社の関係性という視点で解説しています。

この契約は単なる実演家契約ではなくて専属というところが重要です。

レコード会社からすると、莫大な費用の掛かるスタジオや製造工場、販売網を用意しレコード作品を製作、製造、販売していきます。

そこには膨大な人員と予算が投下されていて、費用の回収には中長期の展望を持って望む事がほとんどです。

お金をかけてレコード作品を作り「よし、これから宣伝して売っていくぞ〜」という段階で「他のレコード会社からも作品を発売しますね」となってしまっては、企業としては宣伝コストを他社に上げるのと同じ事になってしまいます。

そのために一般的には契約期間を定め他社からレコード作品の発売ができないようにします。

音楽アーティストのメリット

演奏家や事務所自らがCDを製作して販売を行えば、その売上は術て自分たちで掌握できます。

それでもメジャーデビューにこだわり、演奏家(≒事務所)がレコード会社と専属実演家契約を結ぶのにはそれなりのメリットがあるからです。

高額な製作費と専門の技術と環境を利用できる

現代ではデジタル化によりレコード作品の製作コストは劇的に下がっていますが、以前はそうではありませんでした。

1990年代前半に僕が音楽出版社などから仕事を頂くようになって頃、1枚のアルバムを製作するの最低でも1,000万円程度の録音原盤制作費と、それと同額の宣伝広告費、販促費などが必要と言われていました。

金額を聴くと驚く人も多いかもしれません。

20世紀の殆どは今と違ってコンピュータを使った製作環境はない時代で、ほぼ全てが生演奏での録音でした。

そのために、

  • ちゃんとしたプロの編曲家に10曲分の編曲し総譜作成を依頼
  • 編曲からパート譜作成などを写譜屋に発注
  • 数日〜2週間程度の都内のスタジオをロックアウトで抑える
  • 数日間、バックバンドやオーケストラのスケジュールを押さえての演奏依頼
  • 録音エンジニア、ディレクター、プロデューサー、スタッフなどを賄う経費
  • 楽器のレンタルや運搬、調律や調整費用

などのそれなりに複雑な工程の段取りが必要で、まともな作品を作るべくまともなレコーディング・プランを策定すれば、それくらいの予算は直ぐに到達してしまいます。

それでもコスト効率の良いアルバム製作

僕はTVコマーシャルなどの広告音楽も頻繁にて手掛けていますが、15秒や30秒の音楽に最低でも数十万円の予算を割り当てて頂いき製作をすすめる事が通常です。

音楽アルバム作品となると曲数も10曲程度と多く、1曲あたりの時間も6倍から20倍になりますので、製作コストだけを比較すると1,000万円でも安く効率が良いとも言えます。

2000年代以降になると、録音システムがデジタル化されていきました。

デジタル化により変化した制作状況

バックトラック(伴奏音源)の品質にはこだわらないレコード作品については、コンピュータやシンセサイザーを使用した音楽づくりが一般的になっていきます。

制作費を大幅に減少させることが可能になり、レコード会社と契約をせずておも音楽アーティスト自らが予算を出してレコード作品を発表・発売することが増えていきました。

レコード会社と専属実演家契約を交わすメリットの1つが薄れている部分ではありますが、メリットはそれだけではありません。

レコード会社によるプロモーション

専属実演家契約の大きなメリットのもう1つは、レコード会社の予算でプロモーションが行えるということです。

例えば定番なのが、

  • 各地域の放送局へのアプローチ
  • 各地域の店舗へのアプローチ
  • インストアイベンのサポート

などです。

大手レコード会社の場合は各地域にプロモーターがいます。

そのプロモーターがそれぞれのエリアの放送局の芸能担当者にレコード作品や資料を持ち込んで、露出の機会を作るように努力をします。

同様に地域のCD店舗にも足を運び、主にバイヤーさんと呼ばれる商品の発注を担当する人にアプローチをします。

気に入って頂ければ大量に仕入れて店頭に並べてポップを作成してくれたり宣伝の多いなる助けになります。

アートワーク、MVなど新たな世界が広がる

個人や事務所レベルは繋がることのできなかった人脈やスタッフと関わることができるという事もあります。

ジャケット写真を撮影するのに有名なアートディレクターやカメラマンと関われたり、ミュージックビデオで著名な演出家や映像監督に撮ってもらえたりするかも知れません。

クリエイターに撮ってはメジャーレコード会社のアーティストの案件に携わるというのは、今でも1つのステイタスになり得るますので、普段では中々お仕事を請けてもらえないような人ともコネクトできるチャンスが得やすい場合もあります。

他にも様々な面で世界が広がる可能性がまだまだ多分にあります。

専属実演家契約のデメリット

ただしレコード会社との専属実演家契約はメリットばかりではありません。

デメリットもしっかりと理解をしておく必要があります。

レコード作品の売上はレコード会社の物

最も大きなデメリットはレコード作品売上のリターンはほとんど演奏者サイドには無いということです。

演奏家の収益になる部分としては、

  • 作詞作曲を自ら行っているなら2.5%~5%前後の著作権印税
  • 著作隣接権を設定してくれる場合は、歌唱印税や実演家印税などの1~2%

などです。

これらの予算、収益分配についてはコチラの記事で詳しく解説しています。

演奏家や事務所がライブなどでレコード作品を販売する際に、メーカーとして演奏家や事務所に出荷するという体裁で流通小売部分を収益化できる場合もあります。

ただしビジネスの本質としては、販売の収益はあくまで「小売業」としての稼働があっての収入ですのでレコード作品を制作したことによる収益ではありません。

契約終了後には使用できない録音原盤

録音された原盤はレコード会社が費用を出して制作していますので、録音原盤はレコード会社保有するというのが一般的です。

そのために音楽アーティストがレコード会社を移籍したり、

役割分担で双方の得意分野を掛け算する

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音楽アーティストやアーティスト事務所だけで大規模に製作や宣伝活動を行っていくのは難しい部分があります。

そのためレコード作品を大手レコード会社とタッグを組んで、

  • 事務所はタレント自身を売る
  • レコード会社はレコード作品を売る

という役割分担をしながら、それぞれの力を掛け算して相乗効果を狙っていきます。

今回はこの辺で。

ではまた。

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