こんにちは、岩崎将史です。
昨日は「しらかわホール」における最後の仕事でした。
今月の2月末でホールが閉館ということで、僕にとってはこの場所での最後の録音。
ということで簡単ですがブログに残して置こうと思います。
初めて訪れた約20年前も名フィルの録音だった
しらかわホールを初めて訪れたので、20年ほど前だったと記憶しています。
当時、名古屋フィルハーモニー交響楽団の録音を請け負っていたスタジオフローラ山崎氏の協力で訪れました。
その後、山崎氏は故人となり現在では僕が名フィルの録音業務を時々行う事になりました。
あれから何度となく訪れたこのホールも遂に最後の訪問。
しらかわEXP(エクスプレス)マチネ&ソワレ#4【最終回】〈北村朋幹の世界〉
今回の公演は名古屋フィルハーモニー交響楽団のコンサートによる『しらかわEXP(エクスプレス)マチネ&ソワレ#4【最終回】〈北村朋幹の世界〉』。
指揮者でもありピアニストでもある北村朋幹氏が指揮とピアノの両方を務めるいわゆる「弾き振り」のコンサート。
オーケストラの中央にピアノが配置されています。
通常、ピアノ協奏曲はピアノの向きをピアニストが上手を向くように配置しますが、今回はピアニストがオーケストラを見渡せるように舞台後方を向く配置です。
それに合わせてピアノの天板を取り外されています。
天板を取り外すことでピアノ音が上手に流れず、バランス良く四方に飛ぶようになります。
僕は天板を外したピアノ音が結構好きで、特にこれくらいの中規模のスペースでの音がより好きです。
スコアリングステージでの収録音に近く、明瞭さや色気がありながら適度に残響感のある何とも魅力的な音になります。
オーケストラの配置もコントラバスが下手にいるなど少し変則的になっています。
吊りマイク4本設置での集音
マイクは吊りマイクに4本設置しました。
最近お気に入りの「マス工房 model 359II の4本設置』です。
しらかわホールの吊りマイクは少し距離が客席寄りで、音像が遠くなるというのはクラシック音楽録音業社にとっては有名です。
そのため吊りマイクを紐でステージ後方から引張って前に寄せるという手法が定番。
僕もこれまで何度もその様に録音をしてきました。
ただし今回はマイクをマス工房『model 359II』へ。
このマイクは少し話した位置でもしっかりと集音できるので、引っ張り出さずで良いのではないかと期待しました。
結論からいうと大成功。
直接音と残響感が実に何ともいえないバランスで集音できました。
近接マイクの設置は今回は行いませんでした。
しらかわホールはオーケストラ用途しては舞台が広くないので、舞台上にはマイクが仕込みにくい場合が多いです。
今回、吊りマイクの音だけで十分だろうとの予測で判断しました。
結果としては近接マイクを足したい箇所はありました。
ただしコンサートとしての運営的な優先順位を考え今回は無しで必要十分と予想し決断しました。
舞台下手袖に録音基地を設営
マイク音声回線はホールの設備回線を通しパッチ板から録音基地へ引き込みした。
しらかわホールでの録音基地設置場所は、僕はいつも下手袖にしています。
マイク音声はマイクスプリッターを通して2台のマイクプリアンプへパラレルで音声信号を送ります。
2台目のマルチトラックレコーダーはもしもの時のバックアップになります。
リハーサルやゲネプロなしのいきなり本番でも適切な音量レベル管理
本番は、マチネとソワレの1日2公演。
マチネとソワレとは?
舞台用語でマチネとは昼公演を指し、ソワレとは夜公演を指します。
今回は午前中に録音機材のセットアップをしたら、午後からはリハーサルなしのいきなりの本番でした。
通常はリハーサルなどで録音音量レベルを適切に調整していきます。
いきなりの本番録音だと、適切な音量レベルを予測するのは難しく、フォルテッシモで音が割れてしまったり、逆にピアニッシモが小さすぎたりしがちです。
今回、実はオーケストラは前日に同会場にてリハーサルを行っていたのです。
北村朋幹さんとのリハーサルが終了しています! 〈しらかわEXPマチネ&ソワレ〉は最終回、三井住友海上しらかわホールは今月いっぱいで閉館…。寂しさもありますが、北村朋幹という新たな指揮者を発見する喜びもございます! 明日はマチネもソワレも当日券を販売いたしますので、お聴き逃しなく! pic.twitter.com/BbC3Sks4ER
— 名古屋フィルハーモニー交響楽団 (@nagoyaphil) February 8, 2024
僕ら録音が入るのは当日の本番日のみ。
通常であればリハーサル無しでの適切な音量レベル設定は不可能ですが、そこは何度も録音してきたオーケストラと機材達。
これまでの経験則から予め予想して設定していたマイク音量レベルの設定などで最後まで通す事ができました。
最後なので記念撮影しておきました。
そして公演終了。
リアルタイムで録音記録した音楽CD-Rをオーケストラへその場で納品。
機材を撤収して僕の会社『フルハウス』へ帰還。
今回はこの辺で。
ではまた。