岩崎将史です。
最近、邦楽という言葉の使い方について、気になる事が続きました。
例えばこんな使い方。
合っているとか間違っているということを書きたいわけではありません。
音楽業界で仕事をする上で、しっかりと定義を理解して使わないと仕事や活動で混乱を起こす事態になります。
元来の邦楽の使い方と違うので、その辺りを解説します。
邦楽 とは? 2つの使われ方
邦楽という言葉の意味をそのまま分解すると、日本の音楽という意味です。
現在では、それぞれ別の2つの意味で使われています。
- 本来の意味である日本の古典音楽
- 日本のポピュラー・ミュージック全般
それぞれについて見ていきます。
日本の伝統的な音楽
元々は邦楽というのは日本の、
- 伝統的な音楽
- 古典的な音楽
などの事を指していました。
- 和楽
- 国楽
などとも呼ばれます。
日本の伝統的な音楽としての、邦楽の歴史やどんな物があるのか?について簡単に触れておきます。
邦楽誕生の歴史
古代から中世にかけても色々な音楽があったようです。
- 御神楽、東遊などの上代歌舞、国風歌舞
- 中国、朝鮮、南アジアなど外国の音楽を取り入れた宮廷音楽、雅楽
- 仏典に旋律を加えた歌曲(声明、和讃等)で現代でいう宗教音楽
- 世俗で育まれた歌曲。現代でいう民謡や流行歌
など。
日本書紀に登場する楽人
日本書紀には楽人という言葉が記載されています。
允恭天皇崩御の際に、隣国である新羅が崩御を悼んで使節団を派遣してきました。
その派遣された使節団の中に楽人が含まれていた話があります。
允恭天皇
- 日本の第19代天皇
- 生没:仁徳天皇64年頃 – 允恭天皇42年
- 在位:允恭天皇元年12月 – 同42年1月14日)
- 日本書紀での名は雄朝津間稚子宿禰天皇
- 諸氏族の乱れた氏姓を改革
あの、仁徳天皇の4番目の皇子です。
持統天皇時代には楽官が登場
持統天皇の時代には楽官が登場でします。
持統天皇元年(687年)の正月に登場ということですので、当時の音楽の重要性が分かります。
そして、後の雅楽寮の前身であったとも言われます。
持統天皇
日本の第41代天皇で女性天皇です。
「天上の虹」という持統天皇が主人公の漫画があります。
少女漫画ですが、壬申の乱や大化の改新などの当時の状況を分かりやすく学べます。
大宝律令に雅楽寮が登場
701年に大宝律令を制定されますが、その中に雅楽寮の設置というのがあります。
雅楽寮の読み方は2種類?
雅楽寮には2種類の読みがあるようです。
- うたりょう
- うたまひのつかさ
資料によってルビの振り方が違いますので、どちらが正しいというのは無いようです。
和名類聚抄という平安時代に書かれた本では、うたまひのつかさとなっているそうです。
雅楽寮では、外国や世俗などの様々な音楽をまとめながら宮廷音楽とする試みがなされていました。
この辺りから始まった音楽を邦楽の歴史の初期と捉える事が一般的です。
邦楽の主な分類
古典的音楽としての邦楽も実に様々な種類があります。
正当系
- 雅楽
- 能楽
- 仏教音楽
- 俗楽
- 浄瑠璃
- 唄もの
民謡、俗謡系
- 吟詠
- 器楽
- 祭礼音楽
- 出囃子
他にも色々あると思います。
代表的なものとしては、
ここでは説明すると趣旨が変わってくるので名前だけで。
現代での邦楽の使われ方
本来の方がの意味に対して現代では、日本のポピュラー音楽全般を邦楽という傾向があります。
特にJPOPや日本のロックを邦楽と呼ぶ人達が多いと感じています。
なぜJPOPやJロックなどを邦楽と呼ぶのか?
僕の認識だと、1960年代移行の話だと思うのですが、北米やヨーロッパでのポピュラーミュージックシーン、特にロックやポップスを洋楽と呼ぶようになりました。
僕は1973年生まれですので、それ以前の記録に無いことは正確には分かりませんが、少なくとも小中の1980年代にはFMラジオなどでは、ポップスやロックのヒットチャートの事が洋楽チャートなどと呼ばれていました。
僕が小さい頃に母親が当時は洋楽をよく聞いていたので、こんな会話をした記憶が残っています。
邦楽に対しての洋楽なんだから、
クラシック音楽とかを言うべきよねぇ
当時の日本においてポピュラー・ミュージックと言えるポジションは、
- 歌謡曲
- 演歌
- フォークソング
- ニューミュージック
などででした。
洋楽に対して業界が作った言葉
音楽番組などで取り上げられる音楽チャートといえば、特にことわらない限りはオリコンなどの日本チャートを指していました。
それに対して外国曲のチャートを洋楽チャートなどと言い、まだまだ洋楽を聴くのは少し意識の高い人達という印象でした。
やがて日本のポピュラー・ミュージックにおいてもロックを中心に洋楽の音楽性を取り入れたものが中心になっていきます。
番組や音楽フェスなどでロック、ポップスなどの海外アーティスト達と日本人アーティストが同じステージに並ぶぬようになってくる中で、
- 洋楽に対して邦楽
- 洋楽アーティストに対して邦楽アーティスト
という区分けや呼び方が一般的になっていったと認識しています。
上手に使い分けるしかない
多くの人がそうだと思いますが、僕自身も様々な分野の仕事に携わる中で、邦楽の使い分けを慎重にしています。
本来は日本の古典的音楽のこと
まず洋の東西を問わず伝統的な音楽の基本を学んできた層やフィールドの人達を会話をするときには、邦楽という言葉は日本の古典音楽もしくはそこから派生したかなり近いポジションにある音楽に限定して使っています。
僕の母校でもあり指導にも言っている名古屋音楽大学には邦楽コースというのがあります。
国内の芸術大学では全てそうですが、邦楽というのは日本の伝統音楽の事を指します。
業界によっては通じない
一方、放送局や広告代理店の人に、
昨日は邦楽の仕事だったんですモ〜
などと言うと、少し変なやつと思われる確率が高いです。
普段は海外アーティストの仕事が多く、
ひさびさに日本人アーティストとの仕事だと言いたいのでしょうか…
という感じです。
放送局の音楽に携わる人は毎日のように洋楽vs邦楽という構図でポピュラー・ミュージックシーンに携わっているので、仕方のないことです。
相手に合わせて使い分ける
また自分自身ではなく、他の人の発言や文書でもその人のフィールドによって「邦楽」がどの意味で使われているかは変わってくるので、前後の文脈によく注意する必要があります。
僕は相手のフィールドがよくわからない時は、邦楽という言葉を使わないようにしています。
あえて実は違っても伝統音楽の場合は民謡とか雅楽とか言うようにしています。
そして日本人のロックアーティストなどは邦楽アーティストなどとは言わずに日本人アーティストと言うようにしています。
データ上は50年後には邦楽=JPOPになる?
検索数では圧倒的に邦楽=日本のポピュラーミュージック
キーワードの検索ボリュームなどを見る限りにおいて、現在は、
邦楽 = 洋楽ポピュラー・ミュージックに対する日本人アーティストの楽曲
という意味がほぼ100%と言って良いです。
日本の伝統音楽=邦楽として調べている人は皆無
これは伝統音楽としての邦楽に携わる、触れる人が圧倒的に少ないので仕方がないことでもあります。
言葉は生き物。現在のポピュラーが未来の定番?
言葉は生き物ですので、このまま50年ほど時が進めば邦楽は日本人アーティストの曲を意味する言葉の方が正しいというなる可能性は高いと覆います。
が、その前に音楽マーケットの変化によりポピュラー・ミュージックがこのまま存在し続けるとも思えませんし、日本人アーティストでも外国籍のメンバーがいたり、海外の作曲家が楽曲を作っていたりするという場合も、ヒット曲でも多くあります。
単純にポピュラー・ミュージックを洋楽、邦楽と区切るのはこれからの実態に合わないし凄く狭量な気はしますが…
ということで、邦楽という言葉を使う時には2つの意味があるから注意ね!
という話ですた。
では、また。