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【コンサートホール】パイプオルガンの有無【室内楽ホール】違いと歴史

【コンサートホール】パイプオルガンの有無【室内楽ホール】違いと成立の歴史_thumbnail音楽の学び
この記事は約11分で読めます。

岩崎将史まさふみです。
前回の「コンサートホールとは?」の続きです。
コンサートホールのパイプオルガンの有無についてです。

このブログ記事を書いた理由
コンサートの公演、録音などで主催者が会場を選ぶ際の参考になればと。
極まれに「この音楽でこのホール?」と奏者も技術サイドも困惑するブッキングも無くは無く…。

パイプオルガンのあるホールと無いホール

パイプオルガン

いくつかのコンサートホールを見てみると、大きく2つに別れているのが分かると思います。
パイプオルガン設置されているホールと設置されていないホールです。

パイプオルガンのあるホール

国内には他にも多くあります。が、このブログは僕のクライアントや仕事をお手伝い頂いている方々と知見を共有しておきたいという趣旨もあります。普段よく仕事で訪れるホールを上げています。

パイプオルガンの無いホール

こちらも普段お世話になっているホールです。

パイプオルガンがある理由

このようにパイプオルガンを設置しているコンサートホールと設置していないコンサートホールがあります。

まずは設置している理由について解説します。

クラシック音楽のルーツは教会

過去記事でも何度も書いてきていますが、クラシック音楽とポピュラー音楽の理論セオリーの原点は中世ヨーローッパの音楽にあり、その中心の1つがパイプオルガンです。

当時の音楽として代表的なのがグレゴリオ聖歌とそれらをルーツに持つ音楽たち。
それらについても過去記事で解説しています。

グレゴリオ聖歌を中心にした声楽曲がユニゾンからハーモニーとなり、アンサンブルが発展していきました。

中世は教会を中心に都市が発展

中世の欧州ヨーロッパの都市は教会を中心に発展しています。
僕もいくつかの都市への訪歴がありますが、必ず教会と古城などには立ち寄ります。
余談ですが日本でも旅行した時は無名の城跡を訪れるのが好きです。

2019年4月15日のノートルダム大聖堂の火災焼失ニュースは多くの人の記憶にあると思います。

ノートルダム大聖堂の位置をグーグルマップで見てみるとこんな感じ。

ど真ん中にあります。

外側をぐるっと囲んでいる環状道路をペリフェリックと言います。

ブルヴァール・ペリフェリック(Boulevard Périphérique) は、フランスのいくつかの都市圏に存在する、都市を環状に取り囲む都市高速道路の名称

wikipediaより引用

ペリフェリックは中世都市の城壁後になります。

ほぼパリ市の行政上の市境に沿って敷設されており、1920年代に取り壊されたティエールの城壁の外側の建築規制地域の跡地を利用して1973年4月に完成した。

wikipediaより引用

中世欧州ヨーロッパの各都市はこのような城塞都市として成立発展していきました。
別の都市ですが、中世の面影が残る城塞都市カルカソンヌ。

鳳山雑記帳アメブロ版 より引用

かつては、この部分だけでカルカソンヌ=シテという独立したコミューンだったが、現在は周辺も含めてカルカソンヌ市となっている。

封建制の時代は、1096年からの大聖堂の建築と、12世紀の伯爵城の建造とによって特徴付けられる。伯爵城は元々二棟の建物からなっており、1150年に礼拝堂が加えられ、ちょうど中庭を囲むようにU字型になった。

13世紀を通じて、フランス王たちはシテの外側に第二の城壁を建造するよう命じた。

Wikipedia より引用

ということで、中世欧州ヨーロッパの各都市は教会を中心にして城壁に囲まれていたというイメージができれば良いと思います。

細かい事を書き出すと話が本題からどんどんズレてしまいます。
当時の欧州ヨーロッパがどのような感じだったのか?というのは、岡田斗司夫さんの動画が分かりやすいです。

岡田斗司夫ゼミ#182(2017.6)13世紀中世ヨーロッパのゴシック建築ブームを紐解けばぼくらの現在と重なってくると邦題どうしてこうなった?映画評論『ドリームス』!ハンター講義は待たせたな!G・I編

ノートルダム大聖堂のパイプオルガン

パリ・ノートルダム大聖堂の大オルガン ONTOMOより

なおノートルダム大聖堂のパイプオルガンについては、わざわざ書かなくても詳しい良い記事が多くあります。

クラシック音楽の公演をやる上では必須

クラシック音楽のルーツは上記のような歴史的背景の中で発展してきたのでパイプオルガンを取り入れた曲が数多くあります。

交響曲第3番ハ短調 作品78「オルガン付き」/サン=サーンス

交響曲第3番ハ短調作品78オルガン付き」(Symphonie n° 3 ut mineur op.78, avec orgue)は、1886年カミーユ・サン=サーンスが作曲した交響曲。サン=サーンスの番号つきの交響曲としては3番目、番号なしを含めれば(2曲の未完成作品を除く)5番目の交響曲である。演奏時間は約35分(各楽章20分、15分)。
ロンドン・フィルハーモニック協会の委嘱で作曲され、1886年5月19日の初演も作曲者自身の指揮によりロンドンセント・ジェームズ・ホール英語版)で行われている。

wikipediaより引用

そのためクラシックのレパートリー全て行える本格的なコンサートホールとして企画されたホールはパイプオルガンの設置というのが必須になります。

※大砲を使った曲もありますので、そういうイレギュラーは除いて

某欧州有名オーケストラのツアースタッフから伺った話。世界ツアーのブッキングでとある東南アジアの国。現地の制作サイドが「オルガンあるからここで!」とブッキングをしていたホールがいざ訪れてみると、パイプオルガンがない…。
「はい、オルガン」と笑顔で足踏みオルガンが出てきたそうです。
もちろん急遽の演目変更。

パイプオルガンが無い理由

パイプオルガンが無いコンサートホールがあるのは何故か?
大抵の場合は2つの理由のです。

  • 面積容積上から設置できなかった
  • 予算上から導入できなかった
  • 室内楽ホールとして設計

パイプオルガンは巨大ですので、設置するとステージや客席などを極端に狭くしなければならないという場合は設置を諦める事になると思います。
また予算も膨大に掛かりますので、見送る場合もあると思います。

こういった消極的な理由で設置を見送る場合もあるかと思います。
が、そうではなくきちんとした狙いがあって設置しない場合があります。

それが室内楽ホールです。

室内楽というジャンル

室内楽といっても多種多様です。
代表的なものは、ストリングス・カルテット木管楽器のカルテットなどです。
小編成のアンサンブルが中心です。

弦楽四重奏団Strings Quartet「葦」

僕がレコーディングさせて頂いた弦カルテットです。

室内楽の生まれた背景

室内楽用のホールであればパイプオルガンを設置していない場合がほとんどです。
なぜかと言うと、室内楽が成立していった経緯にあります。

室内楽が盛んになった当時は、中世から近世への境目。
音楽のメインが教会を中心とした宗教的行事から娯楽、エンターテインメントへと変わっていく時代でした。

ルネッサンス期や大航海時代を経て、中世ヨーロッパが富を蓄え余裕が産まれ、王侯貴族や市民を中心に音楽が娯楽として楽しまれるようになっていきました。

富を手にした王侯貴族

室内楽のメインのシーンは宮廷です。
王侯貴族は、富を手にすると盛んに豪華な邸宅や宮殿を建築するようになります。

宮廷の代表各ヴェルサイユ

1600年頃〜1700年代半ばにかけて、音楽史的にはバロックの時代。
フランスのルイ14世の宮廷ヴェルサイユが有名です。

ルイLouis14世XIV  (1638~1715)

ブルボン朝の第3代フランス王国国王

また、メヌエットを宮廷舞踊に取り入れ、メヌエットを最初に踊った人と言われ[1]

wikipedia より引用
職業音楽家の登場

ルネッサンス期から音楽は教会以外でも積極的に楽しまれるようになっていました。
その後、王侯貴族に雇われる職業音楽家が登場してきたのです。

宮廷の中で行われる様々な催し物などで、音楽が重用されるようになりました。
貴族たちは優秀な音楽家を抱え、宮廷では舞踏会バレーオペラと共に室内楽が盛んに演奏されるようになりました。

もしかしたら現代のヒットチャートのように日々、新しい曲を楽しんだりお互いに自慢しあったりしていたのかも知れません。

フランスだけでなく、ドイツやイタリアでも大小の諸侯がそれぞれの宮廷に合わせた室内楽が発展していきました。

Violinヴァイオリン族と木管楽器の発展

室内楽の需要と共に、より最適な器楽アンサンブルを実現すべく楽器が進歩していきます。
なかでも顕著だったのがヴァイオリン族の発展です。

この時代には多くの楽器製作者の名前が残っていますが、なかでもストラディヴァーリは有名です。

アントニオ・ストラディバリ (1644? ~ 1737)

イタリア北西部のクレモナで活動した弦楽器製作者。ニコロ・アマティに師事し、16世紀後半に登場したヴァイオリンの備える様式の完成に貢献した。その作品(ストラディバリウス)は、21世紀現在、約600挺が現存する。

wikipedia より

まだ同様に木管楽器群Wood Windowsも発達していきます。

木管楽器群:Flute, Oboe, Clarinet, Basson など

それ以外もありますが、初心者向けにシンプルさ優先

簡単に持って移動のできるこれらの楽器が発展し、少ない人数でアンサンブルの演奏が可能になっていきました。
パイプオルガンや人の声でなくても、複数の旋律や当時の最新のハーモニーが楽しめるようになったのです。

故に、これらの楽器群は人間の声の音域を想定したパート分けを踏まえた設計がなされています。

この時代の代表的な作曲家を上げると、

名前生没
コレッリArcangelo Corelli1653 ~ 1713
ヴィヴァルディAntonio Lucio Vivaldi1678 ~ 1741
ヘンデル Georg Friedrich Haendel1685 ~ 1759
J.S.バッハJohan Sebastian Bach1685 ~ 1750

義務教育を受けた人であれば、名前は聞いたことがあるかと思います。
そして次の世代、モーツァルトやベートーヴェンへと繋がっていきました。

他にも数多くいますが初心者向けご理解を。

歴史的な背景は、深堀りしすぎると長くなってしまいますので、この辺までで。

つまりは宮廷の大きな部屋

要するに室内楽は宮廷での大広間にて演奏されていた音楽が多かったということです。
ホールではなく四角い広い部屋で天井高は高め。
そこで以下に良い感じで聴こえるか日々の工夫が成されながら産まれた音楽です。

サントリーホールには大ホールと小ホールの2つのホールがあります。

サントリーホール 大ホール
サントリーホールの小ホール (ブルーローズ)

これらは単純に大きさが違うホールというわけではなく、そもそも違う成り立ちの音楽のためにあります。
こうやって見ると小ホールは宮廷の広間に見えてくる?

音楽やサウンドなど総合的に考えて選ぶ

どのタイプのコンサートホールを使うべきか?というのは、演目の内容次第です。

小編成のアンサンブルで大型のコンサートホールでも演奏会は可能ですが、それらの曲が作られた当時の意図や狙いは再現されにくいです。

小編成であれば室内楽ホールが本来ですが、ホールが小さければ客席数が少ないので、興行的な意味で選択しにくい場合もあります。
オーケストラなどを無理に小さめのホールに押し込めば、その音量や低域の空気振動の逃げ場がなく、明瞭感のないサウンドになってしまいます。

  1. どのような音楽なのか??
  2. 舞台の理想的な大きさは?
  3. どれくらいの客席数が必要か?

などを総合的に、これらを考慮して選択するのが良いです。

ホールでのレコーディングなどで場所を決めかねている人には相談にも乗っています。
遠慮なくどうぞ。

ではまた。

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