こんにちは、岩崎まさふみです。
録音・撮影などの動画制作を担当させて頂いた動画が公開されました。
今回担当させて頂いた動画は国際音楽コンクールの提出用。
僕のスタジオ「フルハウス」ではどのようにコンクール録音と撮影を行っているのかを、簡単に紹介します。
満丸彬人さん、神戸国際フルートコンクールへ
今回ご依頼を頂いたのは、名古屋を代表するフルート奏者の一人、満丸彬人さんです。
名古屋を代表するフルート奏者
名古屋フィルハーモニー交響楽団を始め様々なシーンで活躍しています。
名古屋フィルハーモニー交響楽団・楽員ページ
名古屋芸術大学・教員紹介ページ
超絶フルーティストが集う国際コンクール
神戸国際フルートコンクールという世界的に著名なコンクールがあるのですが、今年は新型コロナウイルスの影響で動画審査となりました。
第1次審査:第10回神戸国際フルートコンクール
世界から集まった若き才能ある56名のフルーティストがトップを目指す。第1次審査では、出場者が提出した動画を基に、国際審査員たち来年3月に神戸でおこなわれる第2次審査に進出する約24名を選出します。音楽界の次代を担う彼らの熱演にご期待ください!
神戸国際フルートコンクール オフィシャルサイトより
満丸さんから、それに参加するための動画制作をご依頼いただきました。
予備審査も録音撮影
第1次審査に出場できるだけでも物凄く難易度の高いコンクールです。
そのための予備審査があり、それも動画審査でした。
今年の1月にその録音撮影をさせて頂き無事に出場権を勝ち取り、今回の新たに動画収録をさせて頂きました。
コンクール用演奏動画
その動画がコチラです。
動画のプラットフォームはYouTubeとなっています。
他の出演者などの動画は全てコチラの動画ページで視聴できます。
無編集・無修正の収録と動画制作
この様なコンクール用の録音審査や動画審査は、レギュレーションで「無編集・無修正」というのが一般的です。
当然ながら、今回の動画もマイクとカメラを立てて、後は「無編集・無修正」のいわゆる一発撮りです
録音
そのため録音もマイクを適切な位置に設置して、
- 各マイクの録音レベルを決定。
- 各マイク、楽器と残響などのバランスを決定。必要に応じてタイムシフト。
- マスターレコーダーのレベル確定。
などの処理を行ったら後はレコーダーの「RECボタン」を押すだけ。
録音が開始された以降は、どのような処理も一切行いません。
マイクを立ててバランスを取るだけ
今回はフルートのソロのみで、ピアノ伴奏などはない課題でした。
そのためサウンド的に重要なのはマイキングと各マイクなどのバランスだけ。
僕のクラシックレコーディングの定番の組み合わせである、
- ROYER R-121 ステレオペア
- B&K (現DPA) 4006 ステレオペア
の2つで楽器音と残響音を集音してバランスを取っていきました。
双指向性と無指向性の組み合わせです。
双指向性のR-121がコチラ。
リボンマイクと言ってピークの少ない自然な柔らかい音が録れます。
そして、コチラがDPA4006。
全方位を披露無指向性マイクとしては最高のマイクの一つです。
全てのダイナミクスは演奏者に委ねる
録音ボタンを押したら、オーディオ技術者側がやることは何もありません。
クラシック音楽というのはPA(電気音響)がない時代に生まれ発展していった音楽です。
演奏者は音色の変化やダイナミクス、表情、表現に全人生を傾けています。
特に音量ダイナミクスなどの補正は確実に演奏者が意図した表現を変えてしまいます。
もし、オーディオ技術者が何かしら後処理をしなければいけないということは、マイクや位置、バランスなどの何かが間違っていて、演奏者の意図を収音をできていないと言うことになります。
撮影
撮影もコンクールの場合は、複数のカメラを切り替えるいわゆる「マルチカム」などは禁止されている事が通常です。
カメラのアングル切り替えがあると「本当に生演奏で一発収録の演奏動画なのか?」という判断がやりにくくなるからです。
画角を決めて固定
そのため今回のカメラの設置位置や画角を決定したら、あとは撮影ボタンを押すだけ。
しかも「全曲通しでの演奏で一切の撮影中断もなし」という非常に厳しいレギュレーションでした。
今年も他のオーディション審査用の動画なども多数を録音・撮影しましたが、大抵は「1曲を分けて収録はダメだけど曲ごとに収録して後でつなげて1本の動画にするのはOK」という内容が多かったです。
バックアップを考えて2台
「カメラのアングルは1台で固定のみ」とは言っても、僕は必ず2台のカメラを回します。
理由は次の2つ。
- 念の為のバックアップを考えて2台を回す。
- 1台はやや広角気味に全景を。もう1台は少し望遠気味に寄ったアングルで撮影。
カメラはSONYの動画に特化したフルサイズのミラーレスカメラである「SONY α7S III」。
こちらを2台回しました。
そしてレンズはそれぞれに、
- SONY 16-35mm F2.8 G-Master
- SONY 24-79mm F2.8 G-Master
を付けました。
16-35mmは広角気味に。
24-70mmは標準域でバストアップで。
それぞれ撮影しました。
SONY α7S III を2台購入した時の過去記事がコチラ。
2台撮影しながらもカードも2枚
カメラは2台体制ながら、1台につき2枚の記録用カードを入れています。
これは同時に2枚のカードに記録することにより「データが上手く記録できていなかった」という事故を防止するためです。
SONY α7S III は高速な CF-Express カードに対応しておりコチラ使っています。
高いんですよね。
ただしバカっ早なのでもっと普及して欲しいです。
次期MacBook ProにはSDカードリーダーが復活するとの噂です。
SDカードだけじゃなくCF-Expressカードにも対応するとメチャクチャ嬉しいのですが…。
無いでしょうね。
仕上げ
録音と撮影が終わったら、組み合わせてレンダリングやエンコードという処理をして1本の動画ファイルにします。
編集禁止ですので動画ファイルと音声ファイルを1つにマトメて提出用に最適化したファイルに書き出していきます。
YouTubeに最適なエンコード
今回はレギュレーションで「主催者側がYouTubeにアップロードします」となっていました。
そのためYouTubeが推奨するフォーマットである、H.264 60fps という規格にてエンコード。
ラウドネスレベルと呼ばれる適切な音量基準もそれに合わせました。
編集が入っているので…
ただし…、
規定を見る限りそのままアップロードされるのかな?と考えていたのですが…。
動画を見ると冒頭にタイトルカードが入っています。
ということはおそらくですが、エンコード圧縮されたファイルをもう1度展開してProResとかにして再エンコードされているかも知れません。
それだと画質が落ちてしまうのです。
その場合、422ProResのまま提出とかの方が良いのですが、そうするとファイルサイズが数十GBになるので多分受け付けてくれないですよね。
まあ、大切なのは演奏ですがから技術的なその辺りは気にしなくて良いでしょう、などと考えつつ。
本気の応募は動画のクォリティで伝わる
9月5日までの間で順次、出演者の動画が投稿されていってます。
皆さん素晴らしい演奏。
そしてやはりきちんと録音と撮影されていますね。
練習室、ランジ、スタジオ、ホールそれぞれ様々な場所で収録されています。
一通り見て感じるのは演奏が素晴らしいのは当然として、手を抜かないまでも「映像はとりあえずで」という感じの動画は今の所ないですね。
やはり皆さんのかける意気込みが伝わってくる動画ばかりです。
ということで、もしコンクール出場を考えられている方がいらっしゃれば、スタジオだけでなくホールなど何処へでも参りますので、お問い合わせくださいね。
僕の会社「フルハウス」のサイトリンクも貼っておきます。
ではまた。
後日談:
満丸彬人さんは今回の演奏動画で予選を無事に突破することができました。
本選に向けて頑張ってください。