岩崎将史です。
近年のDTM用の音源はどんどんクォリティが上がって生演奏のサウンドに迫ってきています。
それ自体はとても良いことです、
が、それだけに本物を知っていないと上手に作品を作れなかったり、サウンドをコントロールできなかったりします。
何を勉強したら良いですか?
と質問される機会が増えてきてました。
僕は「勉強すると良いよ〜」といつも言っているスキルは色々あるのですが、大きく分けると現代的なモダンスキルと古典的なクラシカルスキルに分かれます。
モダンスキルはクラシカルなスキルの上に積み上がっているので「まずは古典スキルの勉強をお勧めしますよ〜」ということで、3つスキルをゆる〜く紹介します。
3つの必須な古典スキル
プロの作曲家、編曲家は主に3つのスキルをガッツリと学んでいます。
- 和声
- 対位法
- 管弦楽技法
その1:和声
4声体を中心として、ハーモニーの機能性と適切なバランスの取り方や進行が学べます。
多くの音大声の多くの人が「げっ!」ってなる奴です
作曲学科でなくても必須だったりして「意味わかんな〜い」と言っている学生の声を数多く聞きます。
実際の音楽やサウンドに結びつけて学べないと、ただのパズルになってしまい何も楽しくないです。
そのため指導者に高いレベルが求められます。
プロ・クオリティの作品を作りたいなら必須
プロとして、あるいはプロではなくても仕事として通用するクォリティの作品を作りたいなら必須のスキルです。
僕らはこれを正しく勉強している人とそうでない人の編曲は、一聴して分かります。
「仕事したい」とポートフォリオ作品が送られてくることもありますが、ここの部分がなってないと一聴して勉強してないのがバレてしまいますので橋にも棒にも掛からないという感じです。
受験勉強の悪夢が思い起こされる赤・黄・灰本
多くの人が学んだテキストはコレだと思います。
1巻〜3巻まであります。
刊行は1961年。
1巻と2巻は普通の厚さです。
が、3巻目が中々の分厚さで辞書です。
入試科目の1つ
作曲学科の入試科目で、音楽高校組は授業で教科書として使われたいたようです。
普通科出身組は多くの人が塾に通う中、コレを受験勉強の1つとして勉強します。
僕も普通科でしたので、高校に持っていって各授業の合間合間の10分間で課題を進めていました。
必須だが必守ではない
和声に限らない話なのですが「必須だよ〜」というと曲を作る時に「必守」だと勘違いしてしまう人がいます。
それで作曲の勉強が嫌いになってしまう人も沢山います。
あくまでも要素の1つであって「この考え方が全てに繋がっているんだよと」ということですので「これから勉強してみようかな〜」という人はそこだけ気をつけて頂けたら良いのではないかなと思います。
その2:対位法
続いて対位法。
カウンターポイントとも言います。
中世から近世にかけて教会を中心に発展していた作編曲技法です。
「なんだ教会か」と思った人は、音楽やる前に(いや、やりながらで良いけど)文化や歴史についての知見も深めていきましょう。
今日の殆どの音楽のベースはこの時代に確立していってます。
以前にグレゴリオ聖歌についてや、コード、ハーモニーは教会音楽の中で確立していったということを書いていますので、読んでみてください。
音楽に関係のなくアメリカの大学へ留学した友人たちは、和声や対位法の授業が一般教養としてあったようで触りだけですが知ってました。
今がどうかは知りませんし当時も全部なのかどうかも知りません。
その3:管弦楽技法
で3つ目が管弦楽法です。
かなりの分厚さの本が出版されています。
オーケストラを中心に当時の楽器の奏法や編曲の考え方やコツについて学べます。
最新の楽器などについては書かれてないです。
なんだ、じゃ、いいや
と思った人はどうぞご勝手に。
今でも音楽の90%以上が当時の楽器や奏法や音楽理論に基づいています。
現代においてベストなテキストか?は疑問
今回上げた3つのスキルが必須なことは間違いないです。
内容も全くもっとで正しいことばかりです。
が、リンクでご紹介したテキストが現代においてもベストなのかは分かりません。
僕も学校でこれらのテキストを使って指導してきた経験がありますが、正直、古い本ですので今では使わない感じがあったり言い回しがあったり。
現代の学生は、圧倒的に文字を読める人と読めない人の差が激しいので、受け入れられない人には難しいかもです。
今でも検索トップで出てきますので、ニッチな分野で新しくするほどの需要はないのかも。
必要条件の理由
これらのスキルが「必須だよ〜」と言うと、昔から必ずある種の大人が湧いてきます。
勉強してなくても仕事してるぜ
とか、
音楽は理屈じゃないぜ
とか言うタイプです。
最近はちょっと減った気がしますが、昔は本当に多かったです。
古典的スキルがなくても仕事は可能
結論から言うと、これらのスキルがなくても編曲の仕事をすることは可能です。
ただ一生食えるかというと僕は無理だと思います。
実は損害を出している
勉強してない系アレンジャーの事故あるあるエピソードは、多くの音楽家もお持ちだと思います。
具体例書くと切りがないので触れません。
簡単にいうと「なんじゃこりゃ」系のアレンジは、録音やミックスなどあらゆる工程において膨大なロスを生み、知らない間にクライアントに大損害を与えています。
そしてクライアントも気づかず、本来は必要のない予算を使ったり、得られる筈の効果を得られなかったり。
判断基準は雇えるか雇えないか
過去に新卒クリエイターも雇ったときも「よしこいつならやっていける」という光る物を感じた上で、入社してから足りないと感じたこれらのスキルを徹底的に鍛えました。
古典的スキルがなくても瞬間瞬間は乗り切れるかもしれません。
が、長くやっていけるかどうかというのは、僕は雇ったときに10年後、20年後も給与を払えるだけの仕事が可能か?という基準で考えています。
古典的スキルがあれば後は時代に合わせて応用していくだけ
逆に古典的スキルがあれば、現代の音楽はその応用です。
例えば近年のエレクトロなジャンルにしても、スケール、ハーモニー、フレーズ、ビートなど全て置き換えられているだけです。
98%の過去の資産に2%の新しいテクノロジーやアイディアを加えるだけ。
基本を踏まえていれば時代が変わっても何の問題もなく対応できます。
十分条件ではない
プロとして、プロではなくても同クォリティの作品を生み出していくならば必須であると書いてきました。
が、当たり前ですが、必要条件であって十分条件ではありません。
ちゃんと活かせれば元は取れる
例えば高い学費を払って学んだとして、どんな学校でもそうだと思いますが、その道のプロでやっていけるのは少数です。
他にも多くの要素を複合的に組み合わせて初めて仕事は成り立ちます。
ただ、ちゃんと活かせれば十分に元が取れる価値のあるものだと思います。
大学の学費に4年間で800万円くらい掛かったと思いますが、そんなの年間の楽曲制作の売上からみたら一部です。
普通に仕事として、会社の家賃払って水道光熱費払って、機材償却して、交通費払って、厚生年金、労災、その他諸々払って最後に残った一部が人件費になります。
これらの事は音楽に限らずどんな仕事も一緒だと思います。
ちょっと話がそれだしたので、この辺で終わります。
では、また。
この記事のPVも怪しそうですが、あなたに読んで頂いたので僕は満足です。m_ _m