こんにちは岩崎将史です。
今回は4つのマイクの比較検証です。
先日、お付き合いのある映像制作会社から相談がありました。
今度、ワークショップの収録があります。
会議室で円卓1台に5名。
合計5卓の25目での会話を収録したいのですが…
円卓で大人数での収録は珍しくないですが、机卓が5台というのは僕も経験がないです。
1名1本のマイクを用意するうような仕込み時間は全く無いらしく、サクッと集音するにはどの様な方法が良いのか?
という相談でした。
短時間の仕込みで集音するのであれば、無指向性マイクかバウンダリーマイクの設置です。
ただし一般的にトーク収録で使われる指向性ダイナミックマイクとは音質や集音の範囲がかなり変わります。
それで用を成すのか?どうか、検証してみることにしました。
比べるのはこの4つ
比べるのは次の4つのマイクです。
- SHURE SM58
- TASCAM TM-90BL
- B&K (DPA) 4006
- SENNHEISER MD441
この4つを選定した理由
なぜこれらの4つのマイクにしたのでしょうか?
SHURE SM58
おしゃべりトークの最も一般的な収録方法は指向性ダイナミックマイクによる集音です。
指向性ダイナミックマイクで最も定番かつ安価で音の良いマイクが「SHURE SM58」です。
先ずは利用候補としては最有力のマイクと言えるでしょう。
トーク集音性能の安定感は予測できますが、問題はその指向性。
1名につき1本を用意しなければなりませんので、いくら安価なマイクといえども25本も用意するにはそれなりの予算が必要です。
そして何よりも25本分を仕込むのにはまとまった時間が必要となります。
TASCAM TM-90BL
大人数の演目で比較的に仕込み量が少なくてすむため、良く利用されるのがバウンダリーマイクです。
バウンダリーマイクはマイクスタンドなどが必要ありません。
机の上や床などに置くだけで、前方向を広く集音してくれますので、演劇などの舞台現場でも広く使われています。
バウンダリーマイクの多くは指向性がワイドカーディオイド (180度) です。
円卓会議だと1方向しか集音しないので、複数個が必要です。
前向きと後ろ向きで180度に配置すれば論理上は全方向を拾います。
ただし横方向の集音は苦手です。
私の経験から基づく間隔では3個を三角形、もしくは4個を四角形に並べるのがベストだと推察しています。
丁度相談者である、映像の小林さんが2台を持っていましたので、その2個で検証してみます。
横方向の集音能力がどの程度落ちてしまうのか?というのもあ確認してみます。
DPA4006
最も仕込み量が少なくてすむ方法として、無指向性マイクの設置を考えました。
無指向性マイクは円卓上に1つ配置すれば周囲を満遍なく集音してくれます。
5つのテーブルであれば5本用意するだけですので、最も仕込み量が少なくて済む予定のプランです。
ただし、無指向性は全てを拾う分、空調音などの環境音も拾ってしまいます。
それがトークにどの様に影響するのか?にも注目しています。
所有している無指向性マイクで最も高性能なマイクということで、DPA 4006 を選びました。
SENNHEISER MD441
ナレーション取りに私が最も好きなマイクというこでお、SENNHEISER MD441 を選びました。
方向性としては SHURE SM58 と同じです。
普段は近接(オンマイク)で使用しているので、卓上トークの少しオフマイク気味の時にどうなるのか?が気になっています。
動画にしてみました
言葉よりも実際の音を聞いて頂いた方が良いと思いますので、今回の検証を動画にしてみました。
動画は実際の使用感を確認したかったので、Final Cut Pro で音量ダイナミクス系のみ調整しています。
具体的にはラウドネスと均一化を適度に加えています。
それ以外のEQなどの処理は行っていません。
検証を終えての評価
検証を終えての僕の評価です。
音の良し悪しだけでなく運用面を考えての評価となります。
SHURE SM58
SHURE SM58の良い所はなんと言っても集音能力の高さでしょう。
オフマイクになることで低域の量感は落ちますが、会話に必要な音の重要な成分が失われることがありません。
その割に指向性も高いので、反対側の邪魔な音は程よくカットされています。
ネガティブ要因としては、その指向性の高さから参加人数分のマイクの本数が必要になることです。
25名参加のワークショップとなると25本分のマイクの用意と仕込みだけで、かなりの時間が必要になりそうです。
また金額もマイク1本としてはかなり安い価格帯のマイクですが、25本揃えるとなると…。
TASCAM TM-90BL
バウンダリーマイクは何につけても「置くだけでOK」という手軽さが魅力です。
前方180度を広く拾ってくれるので、向きもそれほどシビアになる必要はありません。
値段も安価な部類になります。
音質は正直微妙です。
今回の目的は「会話を記録する」ことで音質は二の次ですので、十分に用は成します。
ただトーク動画といえど積極的に使いたい音かと言われると微妙。
サブ的な要素でこっそり置いていくという役割が多いマイクです。
あと指向性が180度となってはいますが、横方向は全然集音していませんでした。
円卓会議などでは3個から4個の設置が望ましいでしょう。
DPA4006
無指向性マイクなので卓上に1本置くだけで。
360度全てを満遍なく拾ってくれます。
そして4006の特徴でもあるのが、音源が遠い場所にあっても低域が落ちないこと。
そのため無指向性ながら、近接マイクで録っているかのような存在感も得られます。
本来は楽器集音用のマイクですが、トーク収録でも十分使えました。
無指向性のマイクなので当然、周囲の環境音、部屋の残響感や空調音なども拾います。
今回の検証では気になるレベルではありませんでしたが、公共施設の会議室など音環境が悪い場所では気になるかもしれません。
SENNHEISER MD441
僕がおしゃべり収録で最も好きなダイナミックマイクです。
超指向性と言ってよく、声以外の音は全く聴こえません。
空調ノイズなども皆無でした。
そして声の質感がすごく好きです。
高域のヌケの良さと低域の押し出しで圧倒的な存在感があります。
動画では伝わらないかもしれませんがダイナミクスが良い感じで整えられていて、そのまま何も処理しなくてもそのまま使える音で録音できました。
Final Cut Proによるラウドネスと平均化を使用していなければ、圧倒的に聞きやすいマイク1番です。
僕が大好きなMD441ですが、欠点はなんといってもその金額でしょう。
ダイナミックマイクで1本10万円を超えるなかなかの金額です。
さらに超指向性ということで人数分の本数を用意する必要があります。
ちなみに先日までは第二世代?のMD441-Uが販売されていましたが、今はサウンドハウスなどでは販売終了になっていますね。
人気なかったのでしょうか。
フルハウスでは初代ノーマルMD441を3台所有しています。
大切に使っていきます。
どれも使える
今回は使用目的がはっきりしている中での検証でしたので、音の良し悪しだけでなく運用面を考えて評価してみました。
サウンドに優れているダイナミックマイクや運用面に優れる無指向性、ワイドカーディオイドなど。
運搬や仕込み時間、コストと総合的など考えて選択するのが良いと思います。
いずれも会話が聴き取れないということはありませんでした。
ただしスタジオ内での実験です。
25名が集まる会議室だと無指向性やバウンダリーマイクは他のテーブルの会話もかなり集音すると予想されますので、動画での利用には不可とは言わないまでもかなり使いにくいサウンドになるとは思います。
ということで、今回はこの辺で。
ではまた。
この様な収録の相談・ご依頼はフルハウスへ