岩崎将史です。
もう1つ質問が来ていたので、急いで書きました。
防音室を入れてボーカルを録音できるようにしたいです。
オーディオインターフェースだけでなくマイクなどどうしたら良いのでしょうか?
with コロナの時代に中々スタジオへ外出はしにくいですよね。
録音には録音機器以外にも実に多くの重要なファクターがあります。
その辺りは完全に無視する形になってしまいますが、マイクなどの録音機器周りとどうしたら良いのか?解説します。
スタンダードを揃えよう
まず最初にお伝えしたいのは、奇をてらわずにまずは定番の物を揃えるべきです。
安いものには安いなりの理由があります。
そういった機器で録音されると、いくらミックスやマスタリングを頑張ろうとしてもどうしようもなくなります。
安物買いの銭失いにならないように、ド定番の物だけをおすすめします。
その上で各自でアレンジしてみてください。
その後、必要があればバリエーションを増やしていくのが良いと思います。
絶対に必要な物
絶対に必要な物は3つです。
- マイクとマイクに関連するもの
- オーディオインターフェース
- PCとDAWソフトウェア
今回は3番は既にある。
1番と2番について知りたいとのことでしたので、この2つを解説します。
マイク関連
マイク関連は、
- マイク本体
- ショックマウント・アダプター
- マイクスタンド
- マイクケーブル
- ウィンドウスクリーン(ポップガード)
が必要です。
マイク
マイクは3つ紹介します。
マイクの種類は数限りないですが、ボーカル用として定番な物を3つ紹介します。
NEUMANN U87Ai
ボーカル用マイクの定番は何といってもNEUMANNのU87Aiです。
色々言う人もいると思いますが、聞き流してください。
最初の1本として持っておいて損はないです。
ボーカルだけでなく何でもいけます。
ジャンルも選びません。
値段は30万円前後。
このマイクがない商用スタジオは、まず無いです。
世の中には他にも良いマイクはたくさんありますが、これより安い価格たいのマイクを買うのは要注意です。
理由は僕自身が、結局満足できずに低価格のマイクをいくつも購入してきたからです。
10万円以下のマイクでも3個買ってしまえばU87Aiが買えました。
もちろんU87Aiより良いマイク、欲しいマイクはあり余るお金があれば欲しいですが、基本的に十分満足しています。
最初に購入し、正しく維持すれば一生使えるマイクです。
日本国内でU87Aiを手に入れるならサウンドハウスでの購入が1番安いです。
そしてU-87Aiを購入する場合は、合わせてサスペンションフォルダーを購入してください。
これがないとマイクスタンドに取り付けられません。
オールドのU-87では、マイクスタンドに直接取り付けるタイプの物もありましたが。
BLUE / Bottle
2000年代からボーカルマイクとして人気のあるBLUE社のBottoleです。
上記動画ではスティングが歌っています。
特徴としてはダイヤフラム・カプセルがだけが上に飛び出ていることです。
これは音響的のも大きな利点がありますが、バリエーション性やメンテナンス性も高いです。
ダイヤフラム・カプセルだけを販売していて交換できます。
本体はこちら。
そして下のようにカプセルだけを販売しています。
こちらは交換用の本体に最初から付属しているものと同じ物ですが、ダイヤフラムの大きさや指向性を変えたものなども販売されていて、シチュエーションに合わせて付け替えることによりサウンドの調整が可能になっています。
本体の価格は40万円前後とU-87Aiより高めですが、魅力のあるマイクになっています。
NEUMANN / U-67 Set
3つめはNEUMANNのU67 です。
価格は80万円前後ということで高級マイクの1つです。
マイクスタンド
マイクが決まったら次はスタンドです。
スタンドメーカーで定番はK&Mです。
殆どのスタジオやライブハウスはK&Mです。
これより高いもので良いものはありますが、安いものは絶対にやめてください。
スグにネジ部分が馬鹿になって調節ができなくなります。
また、コンデンサーマイクは重いので、安いものだとマイクが垂れやすくなります。
K&Mの物で2種類をおすすめします。
K&Mの定番といえば210STと呼ばれるものです。
210STやダイナミックマイクや細いコンデンサーマイクには良いですが、ボーカル用の大きなマイクには少し弱いです。
最初の1本としてはオーバーヘッドブームと呼ばれる少し長めのものをおすすめします。
マイクケーブル
マイクケーブルも種類はたくさんあります。
ケーブルのメーカーによってサウンドのキャラクターが違うので、オーディオオタクの間では日々、喧々諤々の議論が繰り広げられているかと思いますが、Canareで良いです。
僕も20年以上前から散々っぱら多くのケーブルを試してきましたし、フルハウスでもいくつかのケーブルを使い分けています。
完全に一周まわってCanareで良いというのが僕の結論です。
それから必要に応じてバリエーションがあれば。
必要な長さは部屋によると思いますが、少し余裕をみたながさとして10m。
そして何か機器をつなぎ込むように2mの短いものが2~3本あれば、まずは良いと思います。
デシケーター
マイクを購入する際は、必ずデシケーターを揃えましょう。
マイクは基本全てデシケーターに保管します。
デシケーターは湿度調整をしてくれる箱です。
マイクの振動板はとても薄い金属の膜ですので、湿度にとても弱いです。
直ぐに音が籠もったりします。
人に貸したら、音がビビるようになり、交換で20万円とかの経験もあります。
メーカー曰く「ツバらしきものがついてた」と。
扱いは慎重に。
デシケーターについては、コチラに詳しい記事を書きました。
あなたにオススメのデシケーターが見つかると思います。
ウィンドウスクリーン(ポップガード)
ということで、ウィンドウ・スクリーンが必要です。
ツバや吹かれとよばれる息によってダイヤフラムが損耗するのを避ける役目です。
布のタイプや金属のタイプなど色々あって、人によって音の好みも違います。
ポップガードについては詳しい記事を書いていますので、そちらを御覧ください。
オーディオインターフェース
マイク周りが揃ったら次はオーディオ・インターフェースです。
オーディオ・インターフェースには性能や仕様によって数万円の安価な物から100万円前後の高価なものまで実に多くの種類があります。
いくつかの記事を書いていますので、そちらをご参考ください。
できれば揃えるべき物
大抵のオーディオインターフェースには数機のマイクプリアンプがついています。
マイクプリアンプはマイクからの入力信号を適正レベルに増幅する機器で、この性能で大きくサウンドが変わります。
内蔵のものは良くも悪くもなく、プロからすると良くはなくという感じです。
ボーカル用であればマイクプリアンプは揃えていきたいところです。
マイクプリアンプ
安い価格帯だとFOCUSRITEのISA Oneが無難かと思います。
フルハウスも持っています。
値段が数万円と安いので凄く良いという訳ではありません。
むしろこの価格帯はボーカル用途にはまともな物にあたるのが難しいですが、これは無難です。
トランスも入っているので、適度にトランジェントも調整された感じで聴きやすい音になります。
良質なDIとしても機能するので、ラインでの楽器録音にも使えます。
プリアンプはこだわるとキリがないので上位機種の紹介はやめておきます。
また別な機会にでも。
昔のこの記事は参考になると思いますので、よかったら御覧ください。
コンプレッサー
ボーカルのレコーディングにはコンプレッサーという音量ダイナミクスを調整する機器が必要です。
絶対に必要でもないですけど、使うのが一般的です。
オーディオ・インターフェースにはコンプレッサー機能はついていません。
ミックス時にプラグイン・ソフトウェアで擬似的にできなくもないですが、ベストではありません。
もし用意できるなら用意しましょう。
ただしコンプレッサーは扱いにコツがいるのと、かなりサウンドにキャラクターが付いてしまうものもあります。
コンプレッサーとしてUNIVERSAL AUDIOの1176LNは有名ですが、音質がかなり変わるので最初に1台としてはおすすめしません。
扱いやすいUNIVERSAL AUDIOのTeletronix LA-2Aをおすすめしておきます。
超絶ド定番のコンプレッサーです。
凄く扱いやすいですが、問題は値段。
なかなか簡単に導入できる金額ではないです。
他にも良いコンプレッサーはありますが、同じかそれ以上の値段になります。
そこで色々なメーカーが、見た目も名前もそっくりなコンプレッサーを出しています。
WARM AUDIOもその1つで、LA-2Aのパクリですが安いです。
問題は音ですが…使ったことないので分かりません (笑)
色々な比較動画がありますので、興味あるればチェックしてみてください。
コンプレッサーを使って録った方が良い場合が多いのは間違いないですが、少し問題もあります。
僕がミックスを依頼されたとすると、プロがコンプレッサーを使って録音した物であれば問題ないのですが、コンプレッサーのかかりが深すぎたりするとミックスではなんともならなくなります。
というリスクはあるので、プロにミックスを依頼する前提であれば、薄めにかけるほうが無難です。
もしくは無しでも。
なしで録音されている場合は、僕はいつもスタジオで掛け直しています。
チャンネル・ストリップ
凄い予算に余裕があるなら、少々高価ですがチャンネル・ストリップなどと呼ばれるマイクプリアンプとコンプレッサーが一緒になったものを購入するのも手です。
ボーカル用であれば、MANLEYのVOXBOXがオススメです。
名前から想像がつくと思いますが、ボーカル録音用途に開発されたチャンネル・ストリップです。
コンプレッサーとしてMANLEYのELOPやTUBE-TECHのCL1Bなどをおすすめですが、その値段を出すならVoxBoxが良いと思います。
マイクプリアンプとコンプレッサーの両方が1台で完結します。
これだけあれば十分。あとはやるだけ
これだけあれば、ボーカルの録音に必要な機器としては十分です。
ただし!ですが、今回紹介したのはあくまもでマイクとインターフェースなどの部分のみ。
良い音で録音するためには、建築音響の調整や良質な電源の確保。
そしてスムーズなオペレーションや的確なモニタリングをするための環境構築なども重要です。
それについてはまた機会があれば書いてみたいと思いますが、今回は録音機器の部分のみということで。
良い音で録音さえ出来てしませば、ご自身でミックスを行うも良いですし、オーダー頂ければ僕もスタジオでミックスを行っています。
全てオンラインで解決できますので、with コロナの時代でも対応できます。
ということで、参考になりましたら幸いです。
では、また。