岩崎将史です。
CD販売額の内訳の第2段。
今回はCD製作者の予算の考え方の解説です。
製作者と流通の費用内訳については前回の記事で解説しています。
CD製作費の内訳
一般的なレコード会社やレーベルなどの製作費の内訳はおよそ上記の円グラフの様な割合になります。
数字は作品や商品ごとに異なる
ただし、あくまでも一般的な一例として取り上げています。
前回の記事でも解説していますが「メーカー」と「流通」の割合が50:50の場合もあります。
またそれぞれの細かな配分は、作品や商品ごとに変動します。
- 各所でどの程度の予算が必要な作品か?
- リクープ枚数を何枚に設定するか?
などなどで変わってます。
関係各所と調整をしながら配分を決めていくのが通常ですのので、大まかな叩き台のイメージとして捉えてください。
著作権使用料は固定
ただし1つだけ固定なのが「著作権使用料 6%」です。
詳細
各項目の詳細を解説していきます。
著作権使用料
著作権者に対する支払いです。
殆どの場合において著作権者は、
- JASRAC
- NEXTONE
のどちらかに楽曲を信託していますので、どちらかまたは両方に費用を収めます。
メーカーはCD製造時に著作権使用料を支払います。
著作権管理団体から先の著作権使用料の分配の仕組みについては、また別な記事に書こうと思います。
原盤制作費
レコード原盤、録音原盤の製作費です。
製作者に対して原盤権という形でココのフィーを見ます。
過去記事で詳細を書いてますので、ご参考ください。
正確には次項の「著作隣接権」の1つとですが、予算管理をする際にはそれぞれ別項目で記載した方が分かりやすいです。
そのために抜き出して別項目として取り上げています。
著作隣接権
一般的には次のような項目が設定されることが多いです。
- 歌唱印税
- プロデュース印税
- プロモーション印税
これらは絶対に設定しなければならない物ではなく、各所の相談と調整で決まります。
僕の場合だとレーベルとプロデューサー契約を交わして、プロデュース印税を設定してもらっている場合があります。
パーセンテージは1%からと僅かですが、作品が結果を出せばその分の収入につながるのでクリエイティブな仕事をする場合には、とても重要な概念です。
指示通りの作業をするのだけではなく、「どうしたら作品・商品が成功するのか?」を自分の仕事の範疇をある意味超え提案や行動をしています。
アートワーク
CDジャケットやカバーなどのクリエイティブ作品の予算です。
主な項目としては、
- 企画
- 撮影
- イラスト
- ロゴ
- デザイン
などの制作費を踏まえて設定されます。
こちらも原盤権、隣接権同様に一部インセンティブを設定する場合もあります。
その場合はカメラマン、デザイナーなどとの話し合いで決定されます。
製造費
製造費はCDという物を製造する予算です。
- CDプレス
- 印刷・製本
- 梱包・包装
- 倉庫までの運送
などが含まれてまして、一般的には「CDプレス会社」に発注されます。
この費用は製造枚数によって単価が大きく変動します。
一度に大量に製造するほど1枚あたりの単価は安くなりますので、パーセンテージで当てはめられる物ではありません。
そのためリクープ枚数などを設定して慎重に定められます。
宣伝費その他
宣伝費はとても重要な予算です。
一部では「宣伝費は少なくとも原盤製作費と同じかそれ以上見るべき」という意見もあります。
宣伝費というと広告出稿費やポスター、チラシなどをイメージするかと思いますが、昨今ではインターネットや動画、SNSが重要になってきていますので、それらのコンテンツ制作や管理運営費などに充てられます。
ミュージックビデオ1本製作するとなると、元の楽曲の製作費より予算が必要などということも通常です。
映像絡みの仕事では、映像と音楽・音声の予算が8:2くらいの場合も多く、映像作品はとにかく手間と予算が必要になります。
そして「その他」と一緒にしてしまいましたが、完成した商品の受発注管理や利益も見込んでおく必要があります。
本来は分けるべきですが、この辺りはメーカーサイドの考え次第おおきく変わる部分ですので、詳細は控えます。
現代では成立しづらい考え方
レコード業界では永くこの様な配分や考え方に基づいてレコードCDビジネスが展開されてきました。
ですが音楽CDがある程度の販売枚数を誇っていた時の考え方であるのも事実です。
3,000枚から5,000枚以上のセールスが見込めるのであれば、ビジネスとして成立してきます。
昨今では個人やインディーズレーベルなどが500枚から1,000枚ほどの想定でCD作品を作る事も増えてきています。
この様な場合、各所において「予算が足りない」という事態になります。
製作者は普通に実行するだけでは確実に赤字になってしまいます。
どうやってプラスに広げていくか?というのを常に模索しながら活動を続けることが重要になっています。
音楽制作会社 / スタジオ「フルハウス」では、様々な音楽アーティストの作品プロデュースなども行っています。
ではまた。