こんにちは、岩崎将史です。
今回は僕が録音&動画制作を手掛けた作品について解説です。
以前にも取り上げたオカリナ奏者の西村麻衣子さん。
2022年のこの春に2ndアルバムのレコーディングを行いました。
そのアルバムのレコーディング中に、
別にスタジオセッションの動画を
作ろうモ〜
と持ちかけさせて頂きました。
とても格好良い演奏と映像ができました。
今回はその録音と撮影、動画制作についても簡単に解説します。
演奏動画を作る人は増えていると思いますので、何かしら参考になれば嬉しいです。
名曲『 月光 』を ラテン・ジャズ で
上がその動画です。
クラシックの名曲『月光』がラテン・ジャズにアレンジされています。
アレンジやこの動画でピアノを演奏されている柳原由佳さん。
今回、僕は初めてお会いしましたが素晴らしいピアニストでした。
それではこの動画をどの様に制作したのか、を簡単に解説していきます。
録音の方法
先ずは録音の方法について。
2つの部屋に別れで同時に録音
アルバムのレコーディング中に収録させてもらったので、アルバム録音と全く同じセッティングのままです。
スタジオ『フルハウス』は合計3つの録音ブースがあります。
オカリナとピアノでそれぞれ別のブースに分かれて同時に録音しました。
オカリナの西村麻衣子さんはメインブースにて。
ピアノの柳原由佳さんはライブルームにて演奏してもらいました。
ガラスを通してお二人がアイコンタクトができる位置にセッティングしています。
こうして別々の部屋に分かれて録音する方法は過去記事でも解説しています。
この方法によって、オカリナとピアノの音像を調整するためのマイキングの自由度が増します。
マイクとマイキング
マイクは僕のブログでは同じみのマイク達ばかりです。
先ずはオカリナのマイク。
中央にROYER LABのリボンマイク『R-121』。
外側にB&K(現DPA)の『4006』。
この2つのマイクをそれぞれステレオペアで使い50%づつくらいでミックスしています。
写真では伝わらないかも知れませんが、距離を割と離しています。
そしてピアノのマイキング。
こちらもオカリナと同じ組み合わせになっています。
こちらも写真でかならいピアノから離れているのが分かるかと思います。
アコースティック楽器の生演奏というのは、ホールでお客さんが聴いた時に適切な音量や音色の変化になるようにできています。
距離を離して録音するというのは大事なポイント。
こうすることでミキシング時にほぼ何もしなくても、自然な音像とバランスを作ることができます。
プリアンプ
マイク信号を増幅するプリアンプ。
今回は全て Millennia の HV-3D-8 で統一しました。
足し引きのないそのままの音色がクリアに得られるマイク・プリアンプです。
ADコンバーター / オーディオI/O
プリアンプで増幅されたアナログ信号をデジタルに変換するA/Dコンバーター。
これにはAPOGEEのSymphony I/O mkIIを使用。
サンプリングレートは192Khに、ビット深度が24Bitにてレコーディングしました。
ProToolsでの収録なので収録ファイルは32Bit、内部ミックスバスは64Bitとなります。
ミキシングはボリュームとリバーブのみ
録音後に少しだけミキシングで音を整えます。
といっても各マイクの音量バランスとリバーブ(残響)のバランスを整えるだけ。
電気的に大きく音色を変えてしまうような事はしません。
アコースティック楽器に寄る生演奏ですからね。
撮影の方法
次に撮影の方法について。
5台のミラーレスカメラを使用
今回は1名に2台のカメラ、合計4台のカメラを用意しました。
このブログでも過去に取り上げてきたカメラ、SONYのα7SIIIです。
動画に最適なミラーレスカメラですね。
設定は4K30fps、色域はHLG (BT2020)のHDRで収録しています。
レンズはSONY純正のGMレンズ達を使用しました。
そしてVLOGCAM ZV-E10も使っています。
最近はこのZV-E10にハマっていて、結構使いこなせて来た気がするので、また記事書きたいと思います。
照明が大切
写真や動画は光が大切。
光がほぼ全てということで、照明はとても大切です。
キーライトにはGodoxのML90とソフトボックスの組み合わせ。
とても安価なのにかなり使えるビデオライトです。
フィルライトやバックライトにはNeewerのライトを使いました。
更に激安なんですよね…。
とりあえず予算ないけど照明が何か必要という人におすすめです。
僕の周りの個人映像クリエイター、多分全員持ってる(笑)
ホワイトバランスを調整できるので全部統一するのが重要です。
今回は全て5600ケルビンで統一しています。
収録はとにかくリラックスと集中
これらの機材をセッティングしたら後は収録。
僕ら技術チームはRECボタンを押すだけ。
後は演奏者が全てです。
僕らが常に気をつけていることは、とにかく演奏者が常にリラックスして音楽に集中できる環境を作る事。
僕自身が演奏家でもあるので、その辺りを最優先に考えてスタジオワークを進めています。
収録後の動画編集
収録を終えたら音声と映像を組み合わせて仕上げていきます。
音楽ミキシング
音楽のミキシングは先にも書いたとおり、ほぼ何もしません。
リバーブ(残響)の量感を調節したら、後はマイクの音量バランスを調整するだけです。
適切な距離を取ったマイキングと言えど、どうしてもフォルテシモが大きすぎたりピアニシモが小さすぎたりする部分は発生します。
気になるところだけちょこちょこと音量を調整していきます。
マスターだけはいつもアナログ通しています。
Manleyのマスタリング専用機材達で調整し192Khのサンプリングレートを動画に最適な48Khzに自然に下げていきます。
一度アナログに戻るのでADとDAコンバーターも重要です。
動画編集(映像編集)
動画編集は4つのカメラ映像を並べて適宜切り替えていくだけ。
僕はFinalCut Proという動画編集ツールを使っています。
大したことはしてないですが、今回はHDR撮影をし、HDRでYouTubeにアップロードしたかったので、色域をワイドガンマのBT2020HLGに設定しています。
BT2020PQでないのはSONYのHDRがHLGだからです。
カラーコレクションで少し整えますが、カラーグレーディングまでの凝ったことはしません。
時間かかるので。
音声はミキシング済みのファイルをそのまま映像のタイミングに合わせて貼り付けるだけ。
一切手を加えません。コレ大事。
YouTubeへのアップ
完成した動画をYouTubeへアップします。
HDRなのでCODECをHEVECの10Bitで行うことで、YouTubeではHDR動画になります。
ちなみにYouTubeはMacのChromダークモードで見るとHDRは色域がバグるんですよね。
完全に白飛びしちゃうのでそういう場合はライトモードにして見てください。
簡単にサクッと演奏動画を作成
こんな感じで駆け足で制作方法について書いてきてしまいました。
収録から編集完了までの所要時間は3時間ほど
今回の動画制作に掛けた時間は収録で1時間ほど、ミックスや動画編集で2時間ほどといった感じです。
今は音楽家ご自身でも簡単に演奏動画が作れる時代。
とはいえ設備もいるし何もかも音楽家自らやるのは、音楽に向かうエネルギーを吸い取られてしまいますよね。
そんな場合は、録音や動画のご依頼も受け付けています。
このブログのお問い合わせフォームからでも、僕の会社「フルハウス」のお問い合わせフォームからでも構いません。
遠慮なくご連絡ください。
西村麻衣子さんの2ndアルバムとライブ情報
今回ご紹介した西村麻衣子さんのアルバムやライブの情報はオフィシャルサイトでご覧いただけます。
2ndアルバムは既にリリースされているので、ブログ記事書いてなかったですね。
書けてない案件ばかりではありますが…。
また近日中になんとか。
ということで、今回はこの辺で。
ではまた。
この辺りはリクエストがあればまた詳しい記事書きますが、動画系は既に多くの両記事がありますよね。